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インターネット金融促進に関する意見の発表について

2015/07/21

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「インターネット金融の健全な発展の促進に関する指導意見」(指導意見)が18日に発表された。インターネット金融は、中小零細企業金融や消費者金融の新たなチャネルとしてここ数年注目されていたものの、監督管理・参入基準・規則が無い、いわゆる三無状態の中で、破綻も数多く生じており、規則の導入が待たれていた。

また、今回の指導意見は、人民銀行、工業情報化部、公安部、財政部、国家工商総局、国務院法制弁公室、銀行業監督管理委員会(銀監会)、証券監督管理委員会(証監会)、保険監督管理委員会(保監会)、国家インターネット情報弁公室と10部門にわたっており、インターネット金融の影響が及ぶ範囲の広さもうかがえる。

基本姿勢は推進

指導意見の序文を見ると、「金融革新を奨励し、インターネット金融の健全な発展を促進し、監督責任を明確にし、市場秩序を規範化する」とあり、基本的にインターネット金融を推進する姿勢である。最近の株式相場急落の引き金になった信用取引の一部が、P2P等を利用したインターネット金融によるものであったことや、昨年来P2P金融(インターネット上の個人間貸借)において破綻・詐欺が多く見られること(極端な例では、昨年、P2Pプラットフォームを提供する会社が午前中に資金を集めて、午後に持ち逃げといった例もあった)から、インターネット金融に対する従来の比較的積極的な姿勢に変化があるかが注目されたが、やはり、中小零細企業金融や消費者金融の新たなチャネルとしての可能性を当局が重視していることがわかる。

内容は、インターネット金融の定義(伝統的金融機関とインターネット企業がインターネット技術と情報通信技術を利用して資金融通・支払・投資・情報仲介サービスを実現する新型の金融業務モデル)に始まり、既存金融機関(銀行・証券・保険・投資信託・信託・消費金融)がインターネットを利用して高度化することやネット金融機関を展開することを奨励・支持している。一方、インターネット企業が支払会社やP2P・クラウドファンディングのプラットフォーム・金融商品販売プラットフォームを設立することを支持し、eコマース企業がオンラインでの金融サービス体系を改善し、サプライチェーン金融を展開することを奨励している。伝統的金融機関とインターネット企業間の相互協力も促している。

また、優良なインターネット会社の国内上場による資金調達を奨励し、また、スタートアップのインターネット金融企業に対する優遇税制も考えている。こうしたことから、インターネット金融の発展を積極的に推進する姿勢が見て取れる。

さらに、信用インフラの構築も推進する。ビッグデータ・インターネットと情報セキュリティーに関するインフラ建設等や信用情報の共有プラットフォームの構築等である。加えて、条件の合うインターネット企業には金融信用情報データベースへのアクセスや信用調査業務への道も開かれる。中国の中小零細企業の大きな課題である信用情報・信用調査の不足や入手難の問題を、ビッグデータ・インターネット等を利用して解決を図ろうとするものである。

業態毎の規制当局

規制面では、インターネット金融も本質的には金融である、という認識の下で規制がかけられる。但し、イノベーションの余地を残すために比較的緩い規制政策が採られる。また、科学的合理的に、業務境界や参入基準を定める、とあり、基本的には金融の機能に基づき規制されるものと見られる。以下に要点を見ると、
①インターネット支払(決済)は、小額・快速敏捷を旨とし、人民銀行が規制当局となる。
②P2Pは法律上、個人間の民間貸借となり、P2P会社は情報仲介のプラットフォーム機能に徹する(預金集めや、保証業務は不可)。P2Pとインターネット上の小額貸付会社は、銀監会が規制当局となる。
③クラウドファンディングは、小零細企業向けの公開・小額エクイティファイナンスとされ、クラウドファンディング会社は投資家に情報提供する。証監会が規制当局となる。
④インターネット投信販売と⑤インターネット保険はそれぞれ証監会と保監会が規制当局となる。また、⑥信託会社と消費金融会社がインターネットを通して消費金融業務を展開する場合、銀監会が規制当局となる。

リスク抑制の面では、顧客資金に関して第三者(具体的には銀行)による資金保管管理を実施する点が重要である。また、当然のことながら情報開示やリスク提示が求められる一方、適格投資家制度の構築も研究されることになった。

指導意見の発表を受け、今後は各部門がより具体的な規則を制定する段階に入る。これまでインターネット金融の活力は野放しゆえのところもあった。これからはリスク防止の規制をかける中でどのように活力を維持していくかが注目される。

執筆者情報

  • 神宮健

    神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    金融デジタルビジネスリサーチ部

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