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トランプが再び壁建設で政府閉鎖の脅し

2018/07/31

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トランプが再び壁建設で政府閉鎖も辞さずの構え

トランプ大統領が、メキシコ国境での壁建設を巡って政府閉鎖も辞さないとする脅しを再びかけている。トランプ大統領は29日にツイッターで、メキシコ国境で壁を建設する費用を2019年度予算に計上することに野党・民主党が反対する場合には、予算案に拒否権を発動し、その結果、政府機能が一部停止する政府閉鎖(government shutdown)に陥ることも辞さない、との考えを明らかにした。

さらにトランプ大統領は、移民に抽選で米国永住権(グリーンカード)を与える制度や拘束した不法移民を釈放する制度を撤廃することを通じて、国益にかなう移民制度を構築すべきだとも主張している。11月の中間選挙を睨んで、選挙公約であった不法移民政策を再び強く国民にアピールし始めたのである。

今年1月にも3日間の政府閉鎖

今年1月にも移民制度を巡る与野党間の対立が原因となり、つなぎ予算が期限までに成立しなかった。その結果、政府機関の一部は3日間閉鎖された。その際には、与野党は移民制度の審議を先送りして、なんとかつなぎ予算を成立させた。また議会は3月に、9月末までの政府の歳出を賄う歳出法案を可決した。トランプ大統領は、拒否権を発動せずにこれに署名したが、壁の建設費が16億ドル(約1,800億円)にとどまったことに不満を述べていた。トランプ政権は、国境の壁の建設には、200億ドル規模の予算が必要だとしている。

現在の2018年度連邦予算は9月末に失効する。2019年度予算が議会で成立しない場合には、10月1日から再び政府機関は閉鎖されることになる。それはまさに、11月6日の中間選挙の直前である。

移民政策が貿易政策と並んで中間選挙の大きな争点に

移民政策を巡っては、メキシコ国境で不法移民の親子が別々の施設に入れられていることが人道面から問題視され、トランプ政権に批判が集まった。トランプ大統領は移民政策で再び巻き返しを図り、これを貿易政策と並んで中間選挙での2大争点にする構えである。今後は、移民政策を巡るトランプ大統領の発言もかなり増えるだろう。

しかしこうした戦略は、必ずしも共和党議員の賛同を得ていないようだ。共和党議員の間では、昨年末に実施した大型減税策とその影響を受けた良好な経済を有権者にアピールする方が得策である、と考える向きが少なくない。

試される第2四半期4.1%成長の持続性

こうした共和党議員の考えをサポートするように、先週末に米商務省は、第2四半期の米国の成長率が年率+4.1%の高水準となったことを発表した。ただしこの高成長については、減税の効果だけでなく、米中貿易戦争に関わる一時的な影響も指摘されている。中国で大豆などに制裁関税が課せられる前の駆け込み輸出である。その場合、11月6日の中間選挙直前に公表される第3四半期のGDP統計(速報)では、その反動から成長率が下振れ、与党共和党に逆風となってしまう可能性もあるだろう。実際、米中貿易戦争、あるいはそれ以外の自動車追加関税など、トランプ政権の保護主義的な政策は、好調な米国経済に下振れリスクをもたらしている。

さらに今回、トランプ大統領自らが、政府閉鎖を経済リスクに再度浮上させてしまったのである。果たしてこうした政策が有権者の支持を得るのか?実際に政府閉鎖となれば、その経済への悪影響を懸念する有権者から批判されるのはトランプ政権と共和党なのではないか?共和党議員の間では、このような観測が強まっているのではないだろうか。中間選挙があと100日に迫っているが、その戦略を巡ってトランプ大統領と共和党との間には、大きな溝が残ったままである。

執筆者情報

  • 木内登英

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部
    エグゼクティブ・エコノミスト

    金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト

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