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ビットコイン終わりの始まりか

2018/11/21

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ビットコインキャッシュの分裂でビットコイン急落

年初に急落した後は比較的安定を維持し、ボラティリティも低下していたビットコインの価格が、足もとでにわかに下落傾向を強めている。ドル建て価格は、19日に2017年10月以来初めて5,000ドル台を割り込んだ。ピーク比で4分の1以下の水準だ。つい先週、6,000ドル台を割り込んだばかりである。またコインデスクによると、日本時間の20日朝には、価格は4,700ドル台まで下落した。価格急落の主な背景には、16日に分裂したビットコインキャッシュ(BCH)を巡るマイナー(採掘者)たちの対立や、交換所での分裂通貨の取り扱いなどについて、先行き不透明感が強まっていることが挙げられる。

ビットコインキャッシュの開発者は、先週、仮想通貨のプロトコルを変更するハードフォークを実施した。ビットコインキャッシュ自体も、ビットコインの発行上限枚数を増やすためのハードフォークによって、昨年誕生したものだ。今回のハードフォークによって、ビットコインキャッシュは、ビットコインABCとビットコインSVに分裂した。2通貨間でビットコインキャッシュのアップデートを巡る開発者やマイナー(採掘者)たちの対立が激しくなるなか、今後も覇権争いが続くと見られる。

どちらのブロックチェーン(分散型台帳)が優勢になるのか、あるいは両者が共存していくのかどうかは未だ不明であり、この不透明感こそが、ビットコインの価格に悪影響を与えている。ビットコインはビットコインキャッシュ取引の証拠金にも使われることから、ビットコインキャッシュ取引の不透明性が、ビットコインの価格に悪影響を与えた面があったようだ。

昨年のビットコインの分裂の際には、新たに生まれる新通貨を無料で得られるという思惑などから、仮想通貨市場全体に資金が流入し、むしろ価格は押し上げられた。値上がりを狙って分裂が相次ぐ現象は、分裂バブルとも呼ばれていた。ところが今回の分裂劇では、市場はこれとは全く逆の反応を示しており、分裂が大きな売り材料となっている。これは、過去1年間での仮想通貨全体に対する信頼感の大きな低下を反映している面があるのではないか。

昨年12月にはシカゴ・オプション取引所(CBOE)、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で相次いで先物取引が始められた。このことが、一時は、取引の活性化や価格上昇のきっかけともなった。しかし1年経った現状を見ると、現物も含めた取引全体への好影響は比較的限られている。

今年12月には米インターコンチネンタル取引所(ICE)でも先物取引が始められるが、昨年12月ほどの注目度はもはやない。ビットコインの上場投資信託(EFT)承認などによって取引が活気を取り戻すとの期待も、だいぶ薄れてしまったようだ。

ICOの証券登録違反で初の制裁金

さらに、足もとでのビットコインの価格下落の背景には、新規コイン公開(ICO)に対する、当局の規制強化も影響している。米証券取引委員会(SEC)は16日、昨年、仮想通貨で資金調達をしたエアフォックスとパラゴン・コインの2社に対して、ICOを証券として登録していなかったとして、初の民事制裁金を課した。両者は制裁金として、それぞれ25万ドルの支払いを命じられるとともに、証券としての登録を命じられた。

SECは両社が売り出したコインを、投資の見返りが将来的な成功にかかっていることから、どちらも証券と判断したのだ。そのため、売り出しにはSECへの登録が必要だった。SECは両社に、監査済み財務諸表、及び事業に関連するその他資料の提出を求めた。また2社は、投資家が購入したトークンの払い戻しや損失補てんの告知もすることになる。

両社は、SECが登録違反で制裁金を課す初めてのケースとなった。仮想通貨市場の環境変化と並行して、ICOを巡る規制当局の動きも、新たな局面を迎えているようだ。

執筆者情報

  • 木内登英

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部
    エグゼクティブ・エコノミスト

    金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト

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