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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

日本でも始まるプラットフォーマーへの規制強化

2018/12/14

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既存の独占禁止法では対応が難しい面も

デジタル・プラットフォーマーと呼ばれる米グーグルや米アマゾンなど、米国巨大IT企業の日本での活動に、政府が規制やコントロールを導入、あるいは強化する動きがいよいよ始まった。背景には、海外でプラットフォーマーに対する規制が強化される一方、既存の法制度やその運用指針のもとでは、こうした新しい業態に対する十分かつ適切な規制が日本ではできない、との問題意識があったのだろう。

政府は2018年7月に、学識経験者からなる「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を設置した。そこでの調査、検討を踏まえて、2018年12月12日に中間論点整理をとりまとめた。

そこで示された基本原則案には、欧州連合(EU)の組織をモデルにして、ITやビジネスの専門家を集め、実態分析や政府への助言を担う監視組織をつくることが盛り込まれた。早ければ、2020年にも設置される。

この中間論点整理では、巨大デジタル・プラットフォーマーは、利用者である事業者(中小企業等)や消費者に様々なメリットをもたらす、と評価している。しかし、一方で、デジタル・プラットフォーマーは、ネットワーク効果(ある人がネットワークに加入することによって、その人の効用を増加させるだけでなく、他の加入者の効用も増加させること。電話やSNSが代表例)、低廉な限界費用、規模の経済性などの特性のもとで、独占化、寡占化が進みやすい点を挙げ、問題としている。

独占や寡占には、利用者に不利益を与えるリスクがあるが、独占禁止法は、独占や寡占が不当に割高な価格設定を通じて利用者の利益を損ねる、という観点に基づいて企業を規制する考え方だ。しかしながら、デジタル・プラットフォーマーは多くのサービスを無料で提供していることから、従来の考え方では規制が難しいのだ。

サービスの利用者は、ネットショッピング、ネット閲覧・検索、SNSの使用を通じて、大量の個人情報をデジタル・プラットフォーマーに提供している。デジタル・プラットフォーマーは、それらを商品開発やターゲット広告などに活用することで、巨額の利益を上げている。このように、個人が提供した個人情報は大きな付加価値を生む一方、それが外部に流出し、また個人が十分に把握しないなかで利用されることは、プライバシーの観点から大きな問題でもある。この点から、無料サービスの利用者は、実際には、プライバシー侵害のリスクなどを含む大きな対価をデジタル・プラットフォーマーに払わされていることになる。

情報銀行を通じてデータの独占を崩す

サービスを通じて個人が受け取る便益と比較して、このような形で不当に高い対価を支払わされる状況であっても、他に選択肢がなければ、個人はデジタル・プラットフォーマーが提供するサービスを使い続けねばならなくなる。こうした状況のもとで、独占や寡占が利用者に不利益を与えているとの判断に基づいて、既存の独占禁止法でプラットフォーマーに対する規制を強化できるよう、その運用方針を修正していくことが検討されるのだろう。

また、デジタル・プラットフォーマーは、競争相手を買収することで、独占や寡占の地位を維持する戦略をとる傾向がある。公正取引委員会は、デジタル・プラットフォーマーのこうした特性に配慮した新たな指針を用いて、独占禁止法に照らした企業買収の妥当性を判断していくことになるだろう。

デジタル・プラットフォーマーの独占・寡占への対応は、こうした法規制によるものに加えて、プラットフォーマーが取得、蓄積している個人データを簡単に他社に移し換えることができるような制度の確立によっても可能だ。個人データを他社に移せば、同様の質の高いサービスをその企業から利用者は享受し続けることができる。それが市場への新規参入を容易にし、市場の競争力を高めることになる。それは、利用者の便益を高めることにもなる。こうした観点に基づいて設計され、来年に日本で稼働を始めるのが「情報銀行」だ。

ただし、EUのように、企業に対して個人の情報を返すことを強制できる「データポータビリティ権」が日本では確立されていない。そのもとでは、個人がどの程度個人データを他社に移すことができるかはなお不透明な部分が大きい。

日本で、デジタル・プラットフォーマーの独占・寡占を切り崩していくためには、事業者側での独占禁止法の運用指針の見直しと、消費者側でのデータポータビリティ権の確立を、同時に進めていくことが求められるのだろう。

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