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繰り返されるフェイスブックの個人データ流出問題

2018/12/21

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プラットフォーマー規制元年

5月に欧州連合(EU)で個人データの保護強化を狙った一般データ保護規則(GDPR)が導入されるなど、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される巨大デジタル・プラットフォーマーを規制する動きが、2018年に世界で強まった。まさに、プラットフォーマー規制元年であった。

規制強化の動きを加速させたきかっけの一つは、2018年3月に発覚した、フェイスブックの個人データ漏洩事件だ。同社が管理する利用者データ最大8,700万人分が、英コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカに流れ、それが政治利用されていたことが明らかとなった。利用者の友人のデータまで利用されていたことも分かり、同社は強い批判にさらされた。

2018年の年末にかけて、フェイスブックの個人データ漏洩問題がまた増えている。同社は12月14日、プログラムの欠陥が原因で、外部のアプリ開発者が最大680万人の利用者の写真を共有できる状態が生じたと発表した。欠陥は修復されたが、9月13日から25日の間は、最大1,500のアプリが利用者の写真を入手できる状態にあり、写真が外部に流出した恐れがある。利用者がアプリ開発者に写真へのアクセスを許可した場合、本来は自身の投稿が時系列で表示される「タイムライン」で共有された写真のみが対象だが、プログラムの欠陥によって、まだ投稿していなかったサイト内の写真などがアクセスされた疑いがあるという。

フェイスブックが個人データ共有と報道

他方、12月19日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、フェイスブックが、米国内外の大手企業約150社に対して、フェイスブック利用者やその友人に関する広範な個人データへのアクセスを認めていた、と報じた。その企業には、マイクロソフトやアマゾン・コム、ソニーなどが含まれる。

ニューヨーク・タイムズ紙が確認した文書によれば、マイクロソフトの検索エンジン「Bing(ビング)」には、フェイスブックユーザーの友人の名前を本人の同意なしで知ることができるようにしていた。またネットフリックスとスポティファイには、プライベートなメッセージの閲覧を許していた、という。同紙は、ソニーやマイクロソフト、アマゾンなどが、2017年の段階で既にフェイスブック利用者のメールアドレスの入手が可能だったとしている。仮にこれが正しければ、利用者の同意を得ていないアクセスの承認によって、数年にわたって個人情報が流れていたことになり、大きな問題だ。

他方、フェイスブック側は、この報道は「連携パートナー」という仕組みについてのもの、と説明している。それは、フェイスブックの利用者が、友人からのおすすめを知るなど、他の人気アプリやウェブサイトでの社会的経験を可能にする仕組み、と説明している。その上で、こうしたパートナー関係や機能のどれも、利用者の許可なしに個人情報にアクセスできるようにするものではない、としている。また、相手企業との取り決めについては、フェイスブックが2012年に米連邦取引委員会(FTC)と和解した際の合意事項に違反していない、とも主張している。

こうした問題の浮上と重なるタイミングで、フェイスブックの本国である米国で、行政機関による訴訟問題が起こった。米国の首都ワシントンDCの司法当局は12月19日、フェイスブックは最大8,700万人の個人データ漏洩問題などで消費者保護の法律に違反したとして、フェイスブックに被害者への賠償金や罰金の支払いなどを求める訴えを、ワシントンDCの地裁に起こしたのである。今までも、市民団体や投資家によるフェイスブック訴訟は起きていたが、米国の行政機関がこの問題でフェイスブックを提訴したのは初めてのことだ。米ワシントン・ポストはワシントンDC以外の他の州でも、既に同様の訴訟が予定されているとしている。

フェイスブックなど巨大デジタル・プラットフォーマーの規制強化や訴訟は、欧州に続いて米国でも広がる気配を見せている。規制や訴訟への対応は、巨大デジタル・プラットフォーマーにとってさらなるコスト増加につながることから、2019年も株価のバリュエーション調整は続くのではないか。さらに、これらは、プラットフォーマーにビジネスモデルの軌道修正を迫るものとなるだろう。

執筆者情報

  • 木内登英

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部
    エグゼクティブ・エコノミスト

    金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト

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