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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

各国で対応が分かれるデジタル課税導入

2018/12/27

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デジタル・プラットフォーマーに対する法人課税

欧州を中心として世界各国では、グーグル、フェイスブックのような巨大IT企業、いわゆるデジタル・プラットフォーマーに対する規制強化の動きが広まっている。こうした企業の独占・寡占状態が消費者や取引先企業などの利用者にもたらす不利益、そしてプライバシー保護に配慮した動きだ。

一方で、デジタル・プラットフォーマーに対する課税を導入する動きも広まってきた。これは、税負担を巡る企業間、そして各国間での不公平性への対応だ。

デジタル・プラットフォーマーという新しいビジネスモデルを持つ企業は、伝統的な税体系のもとでは適切に課税されない、という認識が広がったことが、こうした議論の発端となった。

法人税は、企業のオフィスや工場など恒久的な施設(PE)がある国で課税されるというのが、国際的なルールだ。しかし、デジタル・プラットフォーマーの場合には、恒久的な施設を置かなくても、書籍や音楽のネット配信、オンライン広告など、オンライン上で国境を越えたサービスを行い、巨額の利益を上げることができる。これでは、従来型の法人税制の網には掛かってこない。

「デジタル・プラットフォーマーについては、サーバーが恒久的な施設だ」との解釈が広がっていくと、各社はサーバーをアイルランドなど、法人税率が低い国に置き、税負担を軽減するようになっていった。また、著作権や特許権などの無形資産を低税率国やタックスヘイブン(租税回避地)に移すことで、利益を圧縮し、節税対策を図る動きが広がっていった。

デジタル・プラットフォーマーに対する新たな課税の枠組みの議論に関しては、2013年に経済協力開発機構(OECD)が、租税委員会に多国籍企業の課税逃れを防ぐための「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」を設立したことに始まる。日本がその議長国となり、中国やインドなどの新興国を含めて110以上の国・地域が議論を進めていった。しかし、各国の利害の調整は難航し、未だ合意には遠い状況のようだ。

難航するEUの「デジタル課税」の合意

デジタル・プラットフォーマーに対する新たな課税の具体的な枠組みを、いち早く示したのが、規制強化でも先行する欧州連合(EU)だった。EUの執行機関である欧州委員会は2018年3月、デジタル・プラットフォーマーの税逃れ対策となる「デジタル課税」について、指令案を公表した。これは、包括案と暫定案の2段階からなっており、包括案は、重要なデジタルプレゼンスの恒久的施設の認定についての指令案、暫定案は、デジタルサービス売上税についての指令案だ。

前者については、EU内に施設を保有していなくても、EU内でのサービスで得た利益、ユーザー数、事業契約の締結数を新たな課税基準とし、それらが一定水準を超えると、それを重要なデジタルプレゼンスの恒久的施設とみなして法人税を課税するというものだ。

後者については、全世界での売上高が7億5千万ユーロを超え、またEU内の売上高が5千万ユーロを超えるデジタル・プラットフォーマーについて、その売上高の3%に課税するというものだ。この暫定案は、包括案が実施されるまでの暫定的措置との位置づけとなっている。

この指令案を公表した欧州委員会によると、従来型企業の法人税支払いは、収益の23.2%であるのに対し、デジタル・プラットフォーマーのそれは9%程度(2017年)とかなり低い水準にとどまっているという。

ところが、これら指令案については、EU内での合意が難航している。今まで低税率でデジタル・プラットフォーマーを誘致してきたアイルランドなどが、猛反発したのである。また、米国の報復措置を懸念して、スウェーデンやデンマークなど一部の北欧国も反対している。主要なデジタル・プラットフォーマーを抱える米国は、「経済成長を妨げる」として、EUのデジタル課税導入の動きに強く反対しているのだ。

こうした状況を受けて、独仏両国は、課税率を売上高の3%とする一方、課税対象を広告の売り上げに絞り、データの売り上げなどを除外する、という妥協案を示した。そして、OECDなどによる国際的な課税ルールの見直しが不調に終わった場合に限り、2021年に発効するものとした。それでも、一部のEU加盟国の反対を抑えることができなかったのである。

2018年の財務相理事会は、デジタル・プラットフォーマーの売上高に課税するデジタルサービス税について、当初目指していた2018年中の合意を断念し、2019年以降も協議を続けることを決めた。しかし、決定に必要な全会一致の承認が得られるめどは、未だ立っていない。

英国、フランスで先行課税の動き

EUレベルでのデジタル課税の枠組みでなかなか合意できないことに業を煮やすかのように、英国は独自の課税制度を導入することを決めた。

英国は、全世界の年間売上高が5億ポンド(約720億円)以上のIT企業から、英国内で利用された売上高の2%を税金として徴収する制度を、2020年4月に導入する計画だ。

また、フランスも、2019年1月1日から、独自にデジタル課税を実施することを決めた。フランスのデジタル課税は、デジタル・プラットフォーマーの売上高に課税するもので、広告収入や個人データの販売にも適用される。

デジタル課税の動きは、アジア地域でも広がっている。韓国では2019年7月から、海外デジタル・プラットフォーマーの韓国内での収益に対して、付加価値税が課せられる。具体的には海外企業のインターネット広告、クラウドコンピューティング・サービス、共有経済サービス、O2O(オン・オフライン取引)サービスなどが付加価値税の対象となる。これは企業・消費者間(B2C)取引を対象にした課税だが、将来的には、企業間(B2B)取引にも導入することも議論されている。さらにインドでも、デジタル課税が導入されている。

一方、日本では、2018年10月の政府税制調査会において有識者から、「日本も何らかの独自措置が必要だ」との声が上がった。しかし、日本では、デジタルの売上に対する課税には慎重な意見が目立つ。売上高課税の場合には、流通の各段階で二重、三重に課税され、過大な課税負担となることから、企業がそれを価格に転嫁し、消費者の不利益に繋がることが懸念されているためだ。

また日本は、国際統一的なデジタル課税の導入に対する強いこだわりがある。それは、OECDでの多国籍企業の課税逃れを防ぐためのプロジェクトで、議長国を務めてきたこと、2019年の主要20ヶ国首脳会合(G20)の議長国であることなどが関係していよう。2018年にアルゼンチンで開かれたG20では、国際的なデジタル課税制度について、日本が議長国を務める2019年中に議論を進め、2020年までに最終報告をまとめる方向が確認された。

一般データ保護規則(GDPR)では、デジタル・プラットフォーマーへの規制強化で足並みを揃えることができたEUも、すでに見たように、課税強化策では簡単には合意できない状況だ。デジタル課税の導入では、各国の利害の調整は、規制強化よりも格段に難しくなるためである。

日本が、国際統一的なデジタル課税制度の導入にこだわり続ければ、課税の動きから日本だけが取り残されてしまう事態も考えられるだろう。その場合、日本企業の間で、不公平感が強まることにもなる。デジタル課税については、独自案を議論するなど、日本ももう少し柔軟な対応が必要とされるのかもしれない。

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