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7月中央政治局会議と今年後半の経済政策について

2019/08/05

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7月末の共産党中央政治局会議は、今年後半の経済運営において供給側構造改革の推進を強調した。過去に見られた短期的な景気刺激策は今のところ視野に入っていないとみられる。(供給側構造改革については、「供給側(サプライサイド)構造改革について」2016年2月29日参照)。

同会議は今年前半の経済状況について、全体として安定しており、主要なマクロ経済指標は合理的な範囲にあり、雇用は充分であり、生活の水準と質も引き続き向上しているなど、質の高い発展を推進する要因が多くなった、との認識を示した。

そして、足元で中国の経済発展は新たなリスクと挑戦に直面しており、国内経済の下押し圧力は大きくなっている、と指摘した上で、今後の政策については、供給側構造改革を主とし、改革開放を推進し、マクロ政策は安定的、ミクロ政策は柔軟であるとの考えを示した。

マクロ調整については、積極的財政政策と穏健な金融政策を実施する。ここで、財政政策は効果・効率の引上げに力点を置き、減税・費用引き下げ政策を実施する。金融政策は、適度に緩和し適度に引き締め、合理的で十分な流動性を保持する。

このように、今年の会議からは、貿易摩擦等の要因から中国経済への下押し圧力は大きいものの、足元では、従来のような一時的な拡張政策を採らないことが示唆される。

特に、今回注目されたのは不動産政策である。住宅は住むものであり投機の対象ではないとの従来のスタンスを堅持した上で、「不動産を短期的に経済を刺激する手段としない」とした。過去においては、景気の先行きに不安がある場合、景気に即効性のあるインフラ投資を増加させたり、不動産投資を促す政策を打ったりすることがあったが、今回はこうした従来の方法は採らないということである。

この背景には、経済成長率が2018年の6.6%から今年前半6.3%へ減速したものの、一方で、中国の潜在成長率が低下していることがある。これは、雇用情勢が悪化していないという上述の認識にも表れている。このため、無理に経済成長率を押し上げる局面ではないとの判断であろう。

また、最近、住宅ローンを背景にした個人負債の増加のリスクが指摘されていることもある。7月に中国人民銀行が発表した「中国区域金融運行報告(2019)」は、家計部門のレバレッジ率(借入残高/GDP)が1ポイント上昇すると、小売品消費総額の増加率が0.3ポイント前後低下するとの分析を示し、レバレッジ率の水準が消費の増加率に与えるマイナス影響に注意すべきであるとしている。こうしたことも、後述する個人消費拡大の方針と合わせ、当局が不動産市場を落ち着かせておきたい背景にあろう(実際、最近、大連では不動産価格制限政策が打ち出されている)。

財政政策の重点も、財政支出の拡張というよりも、支出の内容の改善(効率の引き上げ)や減税・企業の費用負担引き下げ等の昨年来打たれている政策の実施にある。また、金融政策についての表現はこれまで通りである。

これは、昨年7月の会議で「安定の中で変化が生じ、新たな問題・挑戦に直面しており、外部環境に明白な変化がある」との経済情勢の認識に立ち、財政・金融政策を18年下期の経済政策の筆頭に置き、「積極的な財政政策と穏健な金融政策」という従来のスタンスは堅持するが、より弾力的に運営する、として経済安定重視を打ち出した時とトーンが異なっている。

今年の重点は、上述したように供給側構造改革の深化や産業の基礎的能力と産業チェーンの水準の引き上げである。需要面では消費の拡大である。国内需要の潜在力を掘り起こすとしており、農村部の市場等が含まれる。製造業投資についても、都市農村のコールドチェーン物流施設建設や情報インターネット等の新型インフラ施設建設等が挙げられており、産業チェーンや生産性の引き上げと関連するものとなっている。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融イノベーション研究部

    上席研究員

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