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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

EU離脱合意案の大差での否決に活路も

2019/01/16

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EU離脱合意案は歴史的大差で否決

英国下院は1月15日、メイ首相が2年間かけてEU側とまとめあげた英国のEU離脱合意案を、承認するか否かの採決を行った。事前の予想通りであるが、同案は賛成202、反対432の大差で否決された。これは英国の議会採決では、1世紀ぶりの大差での否決である。これを受けて、メイ首相は英議会の3開会日以内に代替案を示すことになる。政権も議会の多数派も、そしてEU側も、大きな混乱を招く「合意なし離脱」は避けたい意向であることは明らかだが、具体的な打開策はなお見いだせていない。

他方、離脱合意案の大差での否決を受けて、ポンドは一時動揺したものの、結局大幅なポンド安とはならず、また、米国ではダウ平均株価は上昇するなど、世界の金融市場に与える悪影響も比較的小さかった。これは、離脱合意案の否決が金融市場にとっては事前の予想通りであったことに加えて、「合意なし離脱」は最終的には回避されるという金融市場の見方を反映していよう。

離脱日延期に現実味

離脱合意案が大差で否決されたことにより、EU側は、3月29日の離脱予定日の前に離脱合意案が成立するとの期待を捨て、とりあえず離脱日を延期させる方向に動く可能性が高まってきたように思われる。離脱合意案が大差で否決された後に、それを2回目の採決で可決するにはEU側が離脱合意案の大幅修正に応じる必要があるが、EU側としては、それは受け入れられない。他方、微修正の後に離脱合意案が再び採決にかけられても、それは再び否決される可能性が高く、そうしたプロセスを繰り返しているうちに、3月29日の離脱予定日になってしまうだろう。そこで、EUとしてより現実的な譲歩となるのは、離脱日を延期することで、「合意なし離脱」のリスクをとりあえず回避させる試みではないか。ちなみに、リスボン条約50条で定められた離脱日を延期させるには、EU加盟国すべての賛成が必要となる。

離脱日を延期した後にも、様々なシナリオが考えられるが、それは、英国で第2回目のEU離脱を問う国民投票に道を開くものとなる可能性が相応にあるのではないか。最近の世論調査の結果を踏まえれば、第2回目のEU離脱を問う国民投票が実施されれば、英国のEU離脱が撤回される可能性も十分にある。また、昨年12月にEU司法裁判所は、英国がEU離脱の決定を覆す際に、他の27加盟国の許可は必要ないとの判断を下している。

このように考えれば、離脱合意案が今回大差で否決されたことによって、逆に事態打開の活路が開かれてきた側面もあるように思われる。

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