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足もとの中国経済指標の改善をどう読むか

2019/04/19

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広がる中国景気底入れ観測

1-3月期の中国実質GDP成長率は前年同期比+6.4%と、昨年10-12月期と同水準だった。季節調整済み前期比は+1.4%と、これも前期の同+1.5%とほぼ同水準だ。

他方で、1-3月期の工業生産は前年同期比+8.5%と、前期の同+5.3%、並びに事前予想の平均値である同+5.9%を大幅に上回るものとなった。こうした数字を受けて、昨年から減速傾向を辿り、年末から年明けにかけてはかなり減速感を強めた中国経済に、底入れの兆しが出てきたとの見方が広がっている。

GDP統計以外にも、3月分の中国の主要経済指標には明確な改善が見られた。例えば3月中国製造業PMI(国家統計局)は50.5と、前月の49.2から大幅に改善し、昨年9月以来の水準にまで一気に戻した。内訳を見ると、生産、新規受注の改善が目立っている。また、3月の輸出(ドル建て)は、前年同月比+14.2%と、1~2月平均の同-4.6%からやはり大幅に改善した。さらに金融面では、3月のマネーサプライ(M2)、銀行貸出、社会融資総量は、いずれも伸びが加速している。

こうした指標は、中国の成長率が、1-3月期を底に、4-6月期から幾分持ち直す可能性を示唆するものだろう。「政策効果で中国の成長率は年後半に持ち直す」との見方が広くなされてきたが、そのタイミングが少し前倒しとなる可能性が生じている。

本格回復には至らず「景気二番底」のリスクが残る

いずれにせよ、年末から年初にかけて見られた中国経済の急速な減速は、とりあえず克服されつつあるのだろう。しかし、それが、中国経済の本格的な回復の始まりであるという保証はないのではないか。2018年年初以来の成長鈍化傾向は、なお続いていることも十分に考えられる。その結果、経済指標では今後「景気二番底」が見られる可能性が残されているだろう。

中国のIT関連分野、資本財分野を起点に生じた、世界貿易の急速な縮小の影響が、今後他国に及ぼす影響が注目される。先般、日本で発表された日銀短観(3月調査)では、足もとでの輸出減速の悪影響が、国内の設備投資活動に明確には及んでいないことが確認された。しかし、日本あるいは他のアジア諸国などで、時間差で設備投資など内需に悪影響が及べば、その影響は輸出の減速という形で中国に返ってくる。

また、中国、欧州、日本などの主要国・地域で景気に減速感が見られる中、米国経済は一人勝ちの様相を続けている。しかし、財政政策効果の剥落に伴い、この先は米国経済の勢いも落ちてくる可能性はあるだろう。

こうした点を踏まえると、足もとでの中国経済指標の好転を受けて、中国経済が本格的に持ち直し、その結果、世界経済が再び勢いを取り戻し始めたと見込むのは早計であり、楽観的過ぎるだろう。

執筆者情報

  • 木内登英

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部
    エグゼクティブ・エコノミスト

    金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト

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