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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

人民元の国際化と中国民間銀行のドル調達問題

2019/04/25

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中国の海外投資は伸び悩み

中国人民元の海外でのプレゼンス向上は、なお緩やかなペースにとどまっている。そうした中、中国の海外投融資は依然ドル建てが大勢であり、それが中国の民間銀行のドル手当てへの懸念を生じさせている。

国際通貨基金(IMF)の統計によると、日本の海外資産保有額は2018年第3四半期で1兆6,670億ドルであるのに対して、中国は同年第2四半期時点で1兆5,420億ドルだ。中国が海外投資を急速に拡大させたことで、両国の差は近年縮小傾向を辿り、2016年時点では両国の海外資産保有額はほぼ並んでいた。

しかし、その後は、日本が海外投資を順調に拡大させる中で、中国の勢いは大きく低下した。その背景には、中国政府が国内企業の過剰な債務増加、国内銀行の過剰な貸出増加に歯止めを掛ける狙いで、海外投資を抑制したこと、米中間の対立で対米投資の抑制を強いられたこと、などがある。さらに、「一帯一路」関連の投資も勢いが落ちているのだろう。これは、中国からの過剰な借入れを通じて、中国に経済的に支配されてしまうという懸念が、対象国の間で高まっているせいもあろう。

「一帯一路」構想にも関わる、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の融資残高は、発足した2016年から2018年9月までの累計でわずか64億ドルにとどまる。これに対して、競合する、日米主導のアジア開発銀行(ADB)の融資額は、2018年の新規増加分だけで358億ドルに達している(注1)。

「一帯一路」でも中国の融資はドル建て中心

国際取引において、円はドル、ユーロに次ぐ世界第3位の通貨であり、2019年2月の時点でその比率は4.35%だ。これに対して人民元は1.15%にとどまっており、過去数年の間、その比率はほとんど上昇していない。しかも、人民元を使用した国際取引の大半は海外ではなく香港で行われている。

また、世界の外貨準備高のうち人民元が占める比率は、2016年末の約1.1%から足もとで約1.9%へと高まった。しかし、同じ期間に円の比率は約4.0%から5.2%へと上昇している。

他通貨との交換性が高くないという人民元の流動性の問題を背景に、借り手側で人民元建て融資への関心は依然として低いのが現状だ。中国が主導する「一帯一路」構想には、人民元の国際化の推進という目的も含まれていると見られるが、そのインフラ投資でも、中国からの関連融資は圧倒的にドル建てだ。

中国の銀行のドル手当てに不安

このように、中国企業の対外資産で人民元建ての比率が高まらず、ドル建てに偏るなか、中国の民間銀行のドル調達の問題が次第に浮上してきている。

中国大手商業銀4行の年次報告書によると、2018年末時点のドル建て債務は、ドル建て資産を上回った。2016年までは、ドル建て資産がドル建て債務を大きく上回っていた。こうした変化は、主に最大手の中国銀行によってもたらされているようだ。2018年に中国銀行のドル建て債務は、ドル建て資産を700億ドル程度上回った(注2)。

中国銀行はその年次報告書で、こうしたドル建て資産と債務の不均衡は、簿外のドル資金で十分に対処されている、と説明している。それは、通貨スワップなどのデリバティブ取引だ。しかし、それらは安定したドル調達手段であるとは言えないだろう。通貨デリバティブの大部分は、期限が1年未満と短期であることから、金融市場が不安定となり、カウンターパートがドルを出し渋れば、ドル資金の調達が一気に行き詰ってしまう可能性がある。

また、中国人民銀行(中央銀行)は、日本銀行などの主要中央銀行とは異なり、米連邦準備制度理事会(FRB)と相互に通貨のスワップ協定を結んでいない。非常時に、FRBからドルを調達し、民間銀行のドル調達を助けることはできない。

最終的には、外貨準備を活用して民間銀行のドル調達を助けることは可能だが、それは為替介入に等しい。世界経済・金融市場が不安定な際に、中国人民銀行がドル売り人民元買いを実施すれば、人民元高が進んで国内景気に打撃を与えることも考えられる。

このように、人民元の国際化が順調に進んでいないことが一因となって、中国の民間銀行に、ドル調達不安という新たな問題が生じているのである。

(注1)"Japan Tops China in Credit Race", Wall Street Journal, April 23, 2019

(注2)"China’s Banks Are Running Out of Dollars", Wall Street Journal, April 24, 2019

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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