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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

景気動向指数の『悪化』判断をどう読むか

2019/05/14

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政府は景気回復の判断を維持か

13日に内閣府が発表した3月の景気動向指数で、一致指数(CI)の基調判断は、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」へと引き下げられた。この「悪化」という判断が示されたのは、2013年1月以来6年2か月ぶりのことであり、国内景気が昨年末に景気後退局面に入ったとの観測を強めることになるだろう。

ただしこの判断は、政府の公式の景気判断とは異なり、機械的に算出されるものだ。一致指数(CI)が「原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下落」、「当月の前月差の符号がマイナス」の2つの条件を満たした場合に、「悪化」という判断が示されるルールとなっている。

2月の景気動向指数では、景気後退入りの可能性を示す「下方への局面変化」との判断だった。しかし、そのもとでも政府は「景気は緩やかに回復している」との判断を、4月の月例経済報告で示している。5月の月例経済報告でもこの基調判断を維持することが予想される。

世界的な景気後退かどうかがより重要

最終的な景気局面の判断、「景気基準日付」の設定は、内閣府経済社会総合研究所長が、景気動向指数の一致指数に採用された各系列から作られるヒストリカルDIに基づき、景気動向指数研究会での議論を踏まえて決める。それが決まるまでには相当の時間を要する。

例えば、前回の景気の山である2012年3月が暫定的に設定されたのは、2013年8月とほぼ1年半後のことであった。確定は2015年7月だった。このように、景気局面の判断には相当の時間を要するため、それがなされた時点では、景気の状況は既に大きく変化しているのが通例だ。

重要なのは、このように、忘れた頃になって景気が後退局面に陥っていたと遡って判定されるか否かということではなく、実際に経済がどの程悪化するか、だろう。2012年3月の景気の山から始まった前回の日本の景気後退局面では、世界経済全体では後退局面と認識されるほどの悪化ではなく、国内でも不況感が強まらなかった。こうした景気後退は、経済的にはあまり重要ではないだろう。世界規模での景気後退局面か否かが、決定的に重要である。

現状では、世界経済が明確な後退局面に向かっていることを示す証拠はない。その場合、仮に日本で景気後退局面と後に判定されても、それは軽微で短期的なものとなりやすい。景気一致指数(CI)、景気先行指数(CI)の前月差を見ると、1月が悪化のピークであり、2月、3月と悪化のペースは緩やかになっている。既に最悪期を過ぎた可能性も示唆されているのである。

景気情勢が悪化すれば景気対策の上積み

世界経済は後退局面に陥らず、日本においてのみ判定される軽微で短期的な景気後退は、経済的にはあまり重要ではないとしても、政治的には無視できないことは確かだろう。それは、現政権の責任との批判を野党から受けやすくなるためだ。この点から、少なくとも夏の選挙までは、政府は「景気後退」という判断を示さないのではないか。

他方、仮に、足元で激化している米中貿易摩擦などの影響で、景気情勢がさらに悪化していけば、政府は景気情勢の悪化を認め、景気対策の上積みを検討するだろう。実施までに既に5か月を切った消費増税を先送りすることはかなり難しいと見られる。そのため、今後、景気情勢が明確に悪化する場合には、消費増税を予定通りに実施する一方、消費税対策を現状の2兆円からかなり上積みする可能性が考えられる。それは、選挙や野党対策の観点から必要だろう。3月の景気動向指数を受けて、昨日、菅官房長官は、追加景気対策の検討にも含みを持たせる発言をしている。

先行きの景気情勢が仮に明確に悪化すれば、その実施の可能性が高まる。その際には、協調策として、日本銀行も追加緩和の実施を強いられるのではないか。

ただし、国内景気が軽微で短期的な後退局面に陥った可能性が浮上しただけの現段階で、巨額の景気対策や追加緩和策が具体的に検討される訳ではない。追加緩和を温存したいと考える日本銀行が、この段階で真剣に追加緩和措置の検討を始めることはないだろう。こうした点から、3月の景気動向指数から、消費増税先送り、巨額の景気対策、金融緩和策などの早期実施を想起する市場の過剰な反応には留意しておきたい。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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