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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

新たなデジタル国際法人課税ルールで合意近づく

2019/05/30

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プラットフォーマーへの適切な課税方法を議論

日本経済新聞(5月30日付)が報じるところによれば(注)、6月8~9日に福岡で開かれるG20(20か国・地域)財務相会議において、新たな国際法人課税の基本方針で合意が得られる見通しになったという。2020年末までの合意が目指されている。

ここでは、企業の本社機能がある国から、デジタルサービスなどの利用者がいる国に、より多くの税収を配分する仕組みが検討されている。これは、従来の法人課税のルールを大幅に修正する画期的なものだ。

プラットフォーマーという新しいビジネスモデルを持つ企業は、伝統的な税体系のもとでは適切に課税されない、それが企業間あるいは国の間で不公正感を生じさせている、といった認識が広がったことが議論の発端となった。

法人税は、企業のオフィスや工場など恒久的な施設(PE)がある国で課税されるというのが、国際的なルールだ。しかし、グーグル、フェイスブックのようなデジタル・プラットフォーマーの場合には、恒久的な施設を置かなくても、書籍や音楽のネット配信、オンライン広告など、オンライン上で国境を越えたサービスを行い、巨額の利益を上げることができる。これでは、従来型の法人税制の網には掛かってこない。

経済協力開発機構(OECD)は2019年1月末に、こうした企業を念頭に置いた新たな企業課税、いわゆるデジタル課税の考え方について、論点整理を公表した。そこでは4つの案が示されたが、中でも米国案が最も有力であり、それを支持する意見が高まっているとした。

他分野の課税にも適用か

ここで示された米国案は、こうしたプラットフォーマーが売上げた国で、その売上高に応じて課税される制度だったと見られる。フェイスブック、グーグルなどのプラットフォーマーは、ユーザーが投稿する文章、動画などのコンテンツ、ネットの閲覧、検索履歴等の情報をターゲット広告に利用して、企業から広告収入を得るビジネスモデルだ。多くのサービスが無料あるいは安価で提供されるため、利用者が多くいるからといってその国に多くの売上高があるわけではなく、課税も多くなされないという問題が残る。また、プラットフォーマーが税率の低いタックスヘイブンに本社機能を置けば、巨額の広告収入に対する課税も節約されてしまう。このように、この案では、ビジネス活動の場所とその国の税収との間での乖離は解消されないのである。

おそらく、今回の基本方針は、こうした問題点も踏まえて再検討され、まとめ上げられたのではないか。広告収入の源泉となる価値を生み出すのが、ユーザーが投稿する文章、動画などのコンテンツ、ネットの閲覧、検索履歴等の個人情報であることから、それが生み出された国に税収がもたらされるのは妥当なことだろう。

新たな枠組みでは、個人データが生み出す収益やブランド力への貢献度を一定の計算式ではじき出され、それに応じた世界全体での利益が計算される。さらに、国ごとの売上高や利用者数のような指標に基づいて、各国が税収を分け合う仕組みが検討されているという。

こうした新たな国際法人課税のルールが確立されれば、プラットフォーマー以外の分野へも適用されていくだろう。それは、課税の公正性の観点から、望ましい動きだ。

残された課題は、タックスヘイブンの国々が、こうした基本方針に同意するかどうかという点と、多くの国が公正と考えるような税収を分け合う合理的な基準を見出すことができるかどうかという点だろう。

(注)「デジタル法人課税新方式」、日本経済新聞、2019年5月30日

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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