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解体を恐れるGAFAは"too big to fail"戦略か

2019/07/11

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GAFAが独占問題で議会証言

米国のIT大手4社、つまりGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の幹部らは、来週7月16日に米下院司法委員会の反トラスト小委員の公聴会で証言を行う。テーマは「オンラインのプラットフォームや市場の支配力」だ。

米国では、反トラスト法(日本の独占禁止法)による当局のGAFA取り締まりに向けた動きが、にわかに強まっている。6月3日には、反トラスト法の執行権限を共有している米司法省と米連邦取引委員会(FTC)が、GAFAに対する捜査の管轄で合意した。司法省はグーグルとアップル、FTCはフェイスブックとアマゾンを、それぞれ反トラスト法違反の疑いで捜査する権限を得た。

同日には米下院の司法委員会も、GAFAに対して、反トラスト法違反がないか調査を始めることを超党派で決めた。来週の公聴会は、こうした経緯で開かれるものだ。反トラスト小委員会のシシリン委員長は、「デジタル分野での(GAFAの)市場支配力が大きなリスク要因になっている」としており、既に、テクノロジー業界の競争環境について、幅広く調査を行っている。

米国議会はこれまでも、GAFAの個人データ管理、プライバシー保護、コンテンツの監視などについて、何度か議会公聴会を開いてきたが、その焦点が、今度は独占問題へと移ってきたのである。

反トラスト法での取り締まりへ

米国でも、GAFAを反トラスト法で取り締まることは以前から議論されてきたが、その議論はなかなか進まなかった。その背景には、反トラスト法は、独占状態下で不当に高い価格を消費者に押し付け、不利益を生じさせている企業を取り締まることを目的にしてきたからだ。GAFAの提供するサービスは、無料あるいは低価格のものが多いことから、従来の法解釈のもとでは、GAFAの独占を違法とすることは難しかったのである。

これに対して米司法省は、新たな解釈を用いて、現行の反トラスト法を適用してGAFAを取り締まる方向を示している。それは、「消費者の不利益」の概念を従来よりも幅広くとらえ、競合相手を買収することで革新的な製品やサービスが市場に出回らなくなり、また、企業が個人データを独占することで、プライバシー保護の取り組みがおろそかになるような事態も、ライバル不在の「低い質の競争」状態の結果生じる消費者の不利益とみなす、というものだ。

GAFAに対しては民主党の一部議員の間で独占を防ぐための解体論、分割論が浮上している。民主党の大統領候補、エリザベス・ウォーレン上院議員はGAFA分割論を提唱しており、かつてのマイクロソフトと同様の行動が必要だ、と訴えている。

GAFAは解体論、分割論を強く牽制

解体論、分割論については、当然のことではあるが、GAFAはそれに強く反発している。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は先月、解体、分割は問題の解決にはならないと訴えた。不正コンテンツの監視などには、一定の人員と予算を持つ企業規模が必要であるとし、同社の規模はこれに照らして適切だ、と暗に主張している。

さらに同氏は、フェイスブックは、ユーザーの安全やセキュリティ対策に、2012年の上場時の売り上げ以上のコストを割いている、と発言した。さらに、同社から「インスタグラム」などを切り離せば、安全対策に支障が出る、との見方を示している。グーグル傘下の動画サイト、ユーチューブのCEOも、コンテンツの監視でグーグルの経営資源を借りることができる、として規模のメリットを強調する発言をしている。

このように、GAFAは、自らが解体されれば、今まで米議会などが問題視してきたプライバシー保護、コンテンツの監視などが疎かになってしまう、としている。GAFAのビジネス規模が大きくなったがゆえに、一定程度の企業規模を維持しないと、様々なリスクをコントロールできない、という脅しを司法当局及び議会に投げかけているのである。これは一種の「大きくて潰せない(too big to fail)」の主張でもある。

7月16日では、こうした主張がいわば共通見解のように、GAFAの各幹部から出てくることが予想される。

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