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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

トランプ政権が日本に米農産物の大量購入を要求

2019/08/14

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対中農産物輸出減の穴埋めを日本に要求

8月13、14日の日程で、日米両政府による事務レベルでの貿易協議がワシントンで開かれている。これを受けて8月下旬には、閣僚レベルの協議も予定されている。日米政府は、ニューヨークで日米首脳会談が開かれる9月末までに、大枠合意に達することを目指している。

ところで、この事務レベル協議開催の直前のタイミグで、今後の日米貿易協議の不確実を大きく高めかねない報道があった。トランプ大統領が安倍首相に対して、米農産品の巨額の購入を直接要求していたことが13日に報じられたのである。

これは、米中貿易戦争の影響で、米国の農産物輸出が減少している分の穴埋めを求めるものだ。これまでの会談でトランプ大統領は、大豆や小麦などの具体的な品目を挙げたとされている。またこの要求は、現在進められている日米貿易協議の枠組みとは別のものとしている。

農産品の対中輸出は、米中貿易戦争によって激減している。米農務省によると、2018年年7月~2019年6月の大豆輸出は、前年同期比7割減、小麦は9割減と大幅に落ち込んでいる。また、昨年の中国への農産物全体の輸出額は前年比5割以上減少した。

大統領選挙を睨み米農家に配慮

これに加えて、市況の下落も米国の農家にとって大きな打撃である。世界の大豆価格は2018年7月に米中の貿易面での対立が起こった後、9%下落している。大豆農家がとうもろこし栽培に切り替えた結果、とうもろこし価格も下がるという「連鎖効果」も生じているという。

このように米国の農家は、中国の報復関税と価格下落を通じた所得減に苦しんでいる。CNBCによると、米国の農家所得は2013年から2018年までの間に49%も減少したという。トランプ政権は2018年と2019年に合計で280億ドル規模の農家支援策を打ち出し、2020年にも実施する方針だ。しかし、この支援策では、農家の生活を支えるには十分ではない。また、一時的な支援では、農家の将来不安を緩和することにはならないだろう。

このように、トランプ政権が農家への配慮を見せるのは、周知の通り、来年の大統領選挙への影響を考えてのことだ。トランプ大統領の大票田は、農業が主産業である米中西部だ。また、大規模農家は、共和党の支持基盤でもある。

関税率引下げと輸入拡大の2つの手段で日本に揺さぶり

日本は、米国の農産物の輸出先としては、メキシコ、カナダに次ぐ第3番目の規模である。中国が第4番目だ。トランプ政権が自ら引き起こした米中貿易戦争による米農家への被害を、日本が穴埋めするというのは全く理屈に合わないことである。トランプ大統領が安倍首相に対して、農家のために日本に丁重に支援を求めたのか、それとも当然のように輸入拡大を要求したのかは明らかではないが、恐らく後者なのだろう。日本への武器購入拡大の要求と同様に、米軍基地負担問題など、日米間の安全保障の問題も暗に絡めた要求なのではないか。

トランプ大統領の農産物輸入拡大の要求に対して、日本政府内では、アフリカ食料支援の枠組みを活用し、輸送費を含め数億ドル(数百億円)規模で購入する案が浮上しているという。

しかし、2018年の米国の対中農産物輸出額は、前年と比べて100億ドル以上減少していることを考えれば、この規模では到底穴埋めにはならない。これでは、トランプ大統領が満足せず、日本政府に対して大幅な輸入拡大を改めて求めてくる可能性は相応に高いのではないか。

そして、日本が農産物の大規模輸入を渋れば、日米貿易協議で農産物の関税引き下げ要求を一段と高め、日本政府に揺さぶりをかけてくる可能性があるだろう。

日米貿易協議での関税率の引き下げ、それとは別の枠組みで輸入量の拡大と、米国は2つの手段を使って、並行して日本政府に要求を強めてくる可能性があるだろう。9月末までに大枠合意を目指す日米貿易協議も、俄かに見通しが難くなってきた。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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