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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

形骸化が進むG7とG20機能強化の必要性

2019/08/27

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G7サミットで首脳宣言が初の見送り

8月24日からフランスのビアリッツで開かれていたG7(先進7か国)サミット(首脳会談)は、3日間の日程を終え26日に閉会した。今回の会合では、G7サミットが始まって以来、初めて首脳声明の発表が見送られる異例の事態となり、G7各国でのコンセンサス形成が難しいという現実が露呈した。

「時間を費やす首脳声明の発表にこだわるよりも首脳間での議論に時間を使う」、というマクロン仏大統領の説明には一定程度の納得感もある。しかし、実態は、全首脳の意見統一が必要となる包括的な内容の首脳声明の文言を議論すれば、加盟国間の対立、とりわけ米国と他国との対立をいたずらに際立たせてしまい、首脳声明の発表ができなくなる事態に至る可能性があるだろう。その場合、G7サミットは失敗との評価となり、議長を務めるマクロン仏大統領にとって大きな政治的失点となる。

あらかじめ、首脳声明の発表をしないとの方針を示した背景には、こうした事態を避けるマクロン大統領の狙いがあるのだろう。前回のG7では、首脳声明を巡り、カナダのトルドー首相とトランプ米大統領との間で激しい対立が生じてしまった。マクロン大統領は、こうした事態が再び生じることを避けたかったのだろう。ただし、マクロン大統領は各首脳間で合意ができた内容を列挙した1枚の宣言文書をまとめた。

首脳声明の発表が見送られたことは、先進各国が国際協調の精神に基づいて意見を統一し、世界経済が直面する課題に対応するという、G7サミットの本来の機能が明らかに低下していることを示している。そして、その最大の原因は、国際協調の精神と相容れない「米国第一主義」を抱えるトランプ大統領の政策姿勢にあることは明らかだ。

トランプ大統領のG7サミット軽視の姿勢

トランプ大統領は、他国からの批判を強く受けるG7サミットへの参加を嫌がっている。実際、今回のG7サミットでも、米中貿易摩擦を巡ってトランプ大統領は他の首脳から批判を受けた。

しかし、トランプ政権は、G7サミット開催直前の23日に、向こう数カ月に対中追加関税の税率を最大30%にまで引き上げる方針を示した。G7サミットでの批判を覚悟の上で、敢えてその直前に米中対立をより激化させる行動を見せたことは、G7サミットを軽視していることの表れといえるだろう。

また、トランプ大統領は、日米貿易協議で大枠合意が成立したことに関して、G7サミットの場で記者会見を行うよう、日本政府に強く働きかけたという。こうした2国間交渉の成果を、国際協調の場であるG7サミットでアピールすること自体、明らかなG7サミット軽視の姿勢である。

しかし、米国以外の各国首脳が非常に恐れているのは、G7サミットの場でトランプ大統領を強く批判し、より孤立させた場合には、トランプ大統領がG7サミットに参加しないと言い始めることだろう。

G7サミットは、米国が掲げる自由と民主主義という価値を共有する主要先進国の集まりであることから、米国が参加しないサミットはあり得ない。また、そうした事態となれば、国際協調の行き詰まりが一段と露呈されることにもなってしまう。

それを避けるために、各国首脳は米国の保護主義的な政策を批判しつつも、修正するように強く迫ることもできなかったのではないか。こうした状況では、貿易問題でいくら議論を重ねてもあまり意味はないだろう。こうした点からも、G7サミットの形骸化がより強まっていることは明らかだ。

一時は期待されたG20の機能

G7サミットの限界が明らかになったのは、「米国第一主義」を掲げるトランプ政権が登場するずっと以前、2008年のリーマンショック(グローバル金融危機)発生後のことである。新興国の経済規模が拡大するなか、世界経済が抱える問題は、もはや先進国だけでは解決できないとの認識が一気に広まったのである。

その際、中国は、4兆元の巨額の景気対策を実施し、世界経済を救ったとまで評価された。こうした環境のもとで、世界経済が抱える問題解決のために機能すると期待されたのが、G20財務大臣・中央銀行総裁会議あるいはG20サミット(首脳会議)だった。

G20は、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7か国のG7に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合(EU)を加えた20か国・地域のことだ。そして、G20財務大臣・中央銀行総裁会議は、これらにIMFや世界銀行などを加えたメンバーからなる。

G20財務大臣・中央銀行総裁会議は、1999年から原則年1回開催されていたが、リーマンショックを契機にその重要性が高まり、開催頻度が増えた。さらに、リーマンショックを受け、2008年からはG20サミットも開催されるようになったのである。

経済面での国際協調の場はG20へ

他方で中国を中心とする新興国は、先進国が第2次世界大戦後に作り上げた自由貿易体制あるいはその他の国際秩序は、新興国にとって不利なルールになっており、それは新興国と先進国との間の格差を固定化してしまうものだ、との不満を長らく募らせてきた。

そこで、G20の会議は、先進国と新興国が協力して、世界経済が直面する課題を議論する場であると同時に、両者の利害調整の場という機能も期待されていたのである。お互いの利害を調整しつつ、必要に応じて自由貿易に関わるルール、あるいはその他の国際ルールを新興国の利害を反映して修正していくことが、真の国際協調体制の構築には必要ではなかったか。また、それこそが、米中の2大国が融和、共存できる道を探ることでもあっただろう。

しかし、世界経済がリーマンショックの影響を徐々に脱するにつれ、いわば、「のど元過ぎれば熱さ忘れる」のごとく、G20財務大臣・中央銀行総裁会議、あるいはG20サミットに対する関心は薄れてしまった。そして現状ではかなり形骸化してしまったのである。

このように、G7、G20共に形骸化してしまっているのが現状だ。今後は、G7は主に国際政治、安全保障問題を議論する場とし、世界経済に関わる国際協調を議論する機能は、G20へと移していくことが重要なのではないか。その際にも、米国第一主義が障害の一つとなることは想像に難くないが。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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