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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

広がりを欠くポイント還元制度の導入店舗

2019/09/11

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ポイント還元制度導入店舗は対象の3割程度

10月の消費税率引き上げを直前に控え、ファストフード、外食などでは軽減税率の扱いを巡って対応が分かれる、あるいは対応が定まらないなどの混乱が続いている。同様に、中小小売店がその対応に頭を悩ませているのが、キャッシュレス決済のポイント還元制度だ。

ポイント還元制度は今年10月から来年6月までの9か月間、中小事業者の店舗で、クレジットカードやQRコードなどを使ったキャッシュレス決済で支払った顧客に対して、最大5%分がポイントで戻る仕組みだ。ポイントの付与は決済業者によるが、それに対して政府が財政資金で補填する。

同制度を利用する店舗は、決済業者を通じて事前に経済産業省に申請をし、認可を受ける必要がある。経産省は10月1日の制度開始時の導入に間に合う申請の期限を9月6日に設定した。5日時点では約58万店の申請があり、内訳は小売業が約58%、飲食業が約16%、その他のサービス業などが約26%となっている。期限の6日には、60万店前後に達したと見られる。

ただし、決済事業者が提出した情報に不備があれば登録に必要な日数は延びることから、10月1日に制度が適用される事業者数は60万店に達しないだろう。これは、制度の対象となる中小事業者約200万店の3割程度にあたる。

経済産業省は、申請は順調で想定を超えるペースとしている。その想定とは、今年度予算での見積もりのことだろう。政府は今年度予算で、このキャッシュレス決済のポイント還元制度に約2,800億円を計上し、投じられる税金は9か月間で約4千億円になりそうだ。これは、対象となる店舗が全体の2割ほどと想定した金額である。世耕弘成経産相は、「予算を作る時に想定していた参加数ははるかに超えている」と述べ、申請は順調との認識を示している。

キャッシュレス化には利用者に直接働きかける施策を

このポイント還元制度は、消費増税実施による景気への悪影響を緩和する措置とともに、キャッシュレス化推進という2つの狙いを併せ持った、いわば「一石二鳥」の施策だ。しかし、対象店舗の3割程度の導入にとどまるのであれば、どちらの目的も十分に果たせない可能性があるのではないか。

ポイント還元制度の登録申請に慎重な中小事業者が、その理由として主にあげるのが、コスト負担である。決済端末の購入費は国からの補助が得られるが、クレジットカード、スマートフォン決済などのキャッシュレス決済手段を導入すれば、中小事業者は決済事業者に対して手数料を支払わなければならなくなる。その手数料も決済金額の3.25%以下に抑えるなど負担を軽くする措置が講じられているが、それでも、食材、人件費が高騰し、薄利で営業している中小事業者にとっては大きな負担だ。しかも、そこまでしてキャッシュレス決済を受け入れる仕組みを導入しても、この制度は来年6月には終わってしまうのである。

消費増税の経済への悪影響を緩和する、あるいは駆け込みとその反動を押さえ、需要を平準化する目的であれば、住宅・自動車減税で十分である。他方、キャッシュレス化推進策としては、この制度は力不足なのではないか。

ポイント還元によるインセンティブ付与も確かに一つの策であるが、キャッシュレス決済でその便利さを強く実感するという体験を中高齢者に与えるような取り組み、現金利用にかかる様々なコストを広く知らしめること、スマートフォンス決済を利用できるような技術的なサポートを行うこと、といった利用者側に直接働きかける政策の方が、キャッシュレス化推進策としてはより有効なのではないか。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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