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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

内閣改造が日米貿易交渉に与える影響に注目

2019/09/11

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初入閣組が多く誕生

9月11日に安倍首相は、内閣改造と自民党役員人事を発表する。しかしその正式な発表以前に、メディアでは既にその全容が既に報じられている。

安倍首相は一連の人事を「安定と挑戦の強力な布陣を整える」と銘打っていたが、まさにその通りであった。閣僚人事でいえば、麻生財務相、菅官房長官は留任させる一方、閣僚19人中13人を初入閣組としたのである。

なかでも最もサプライズであったのは、国民からの人気が非常に高い小泉進次郎氏を環境相として初入閣させたことだろう。安倍首相との距離を維持するためか、小泉氏は「育休」を取得する考えを表明し、事前には暗に入閣を断っていたとみられる。安倍首相としては国民に人気のある小泉氏を閣内に取り込むことで、政権浮揚を狙っているのだろう。その結果、内閣支持率が大きく高まれば、衆院解散の時期が早まる、との観測も出ている。

それ以外には、荻生田・党幹事長代行が文部科学相、西村官房副長官を経済財政担当相として、それぞれ初入閣する。両氏はともに首相の出身派閥である細田派に属する。また、共に首相を近くで支えてきた代表的な側近でもある。こうした人物を積極的に初入閣させたことも、今回の人事の特徴だ。

他方、女性では高市氏が総務相で再入閣、橋本氏が五輪相で初入閣した。女性閣僚は現在の片山地方創相一人から増えるものの、安倍政権初期のように、女性を積極活用するとの強い意図は感じられない。2014年9月の内閣改造では、5人の女性が入閣したが、その後は減少傾向が続いている。

日米貿易交渉は道半ば

さて、内閣改造後の政府の経済政策については、首相の影響力の強さ、主要ポストである財務相、官房長官の留任を踏まえれば、全体としては大きな変更は予想されない。ただし、その中で一応注目しておきたいのが、日米貿易交渉への影響ではないか。日米貿易交渉は8月の首脳会談で大枠合意に達し、9月中の署名が見込まれている。しかし、交渉を担ってきた茂木経済財政担当相が、今回外務相に横滑りするのである。

日米貿易交渉が既に山場を越えたことから、担当閣僚の交代はもはや交渉に影響ない、との考えは誤りだろう。9月中に署名されるのは、農産物の輸入関税引き下げと米国での工業製品の関税率引き下げである。他方で、日本が要求していた米国の自動車関税2.5%の撤廃、米国が検討する日本車への追加関税25%の発動回避については、この合意に盛り込まれない可能性が高まっている。

もともと、日米貿易交渉で主な対象となるのは農産物と自動車の2分野であったことから、9月中に署名されても、その日米貿易合意は事実上半分にとどまる。つまり、交渉はまだ道半ばなのである。

今後の日米貿易交渉に不確実性

そもそも、正式名称は内閣府特命担当大臣、と内閣府を担当する経済財政担当相が、貿易交渉を担うというのも異例と思われる。これは、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定で、当時経済財政担当相だった甘利氏が交渉を担ったことの流れだったのではないか。TPPを巡っては、産業界と農業界との利害が大きく対立していたことから、調整官庁である内閣府が交渉を主導した、という経緯があったのではないか。

しかし、日米貿易協議で農産物についての交渉は既に決着を見た、ということであれば、残りの自動車分野の交渉を担っていくのは、経産相が適任のように思われる。

しかし、日米貿易交渉を経済財政担当相が引き続き担うにしても、新たに経産相が担うにしても、いずれも内閣改造後は初入閣組である。強面のライトハイザー米通商代表部(USTR)代表らとの交渉には不安が残る。

新たに外務相となる茂木氏が引き続き日米貿易交渉を担うとの観測も出ているが、それは外務相の役目として不自然であり、米国側の交渉相手とのバランスを考えてもおかしいのではないか。

「安定」の布陣で麻生財務相、菅官房長官が留任する中、内閣改造後も経済政策には大きな変化は生じない見込みであるが、日米貿易交渉については少なからず不確実性が残されている、と言えるだろう。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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