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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

政権交代後の政策を睨むアルゼンチン市場

2019/10/11

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金融市場の関心はフェルナンデス大統領候補の政策へ

デフォルト懸念に揺れるアルゼンチンの情勢について、金融市場の関心は、フェルナンデス大統領候補の政策姿勢に向けられている。

8月11日に投開票された大統領予備選で、左派のアルベルト・フェルナンデス元首相の支持率が50%を超え、中道右派で改革派とされてきたマウリシオ・マクリ現大統領を予想外の大差(約16%)で上回ったことが、今も続く市場の混乱のきっかけとなった。9月に実施された世論調査では、マクリ現大統領に対するフェルナンデス氏の支持率の優位はさらに強まり、支持率の差は20%を大きく超えている。

予備選での予想外の大敗を受けて、マクリ政権は、最低賃金の引き上げやガソリン価格の凍結などのバラマキ政策を実施したが、これが金融市場のデフォルト懸念をさらに煽ってしまった。しかも、同氏の支持率回復にはつながらなかったのである。

アルゼンチン大統領選挙は10月27日に実施される(得票数1、2位の候補者による決選投票は11月24日)。金融市場はフェルナンデス氏の勝利をほぼ確信しており、その関心は同氏の下での経済政策運営に向けられている。

市場の懸念の緩和に動くフェルナンデス氏

予備選挙前に、フェルナンデス氏は、国債の利子払いを停止して、年金支払いに充てるという考えを示していた。また、アルゼンチンを「事実上のデフォルト(債務不履行)」とする発言を行っており、フェルナンデス氏が政権を握れば、アルゼンチンはデフォルトに陥るとの市場の懸念を煽ってしまった。

またフェルナンデス氏は、国際通貨基金(IMF)からの支援についても見直しが必要との見方を示していた。国民の間ではIMFを敵視する傾向が強いことを意識したものだろう。

しかし、フェルナンデス氏はその後、「デフォルトは誰も望んでいない」と発言し、また、IMF支援については、厳しすぎる借り入れ条件を見直す再交渉が必要としながらも、支援の受け入れは継続する考えを示すなど、市場の懸念に配慮した発言に転じている。

さらに、フェルナンデス氏は、その経済顧問を通じて欧米の機関投資家と債務返済方法について非公式な協議を既に始めている。また隣国ウルグアイが行ったように、元本を削減せずに債務問題を解決することが可能、との見方も示している。2003年にデフォルト危機に見舞われたウルグアイは、債権者と交渉を重ね、債務元本削減を含まない債務再編(リストラ)で合意したという経緯がある(注)。

繰り返される市場の楽観と危機

こうしたフェルナンデス氏の姿勢を受けて、金融市場では、新政権の下でも当初心配されたような大胆な債務再編(リストラ)は実施されないのでは、との楽観論も浮上し始めている。また、アルゼンチンのドル債投資に再び前向きとなる海外投資家も出てきている。

ただし、足もとのアルゼンチン危機は、改革派とされたマクリ政権に対する過剰な市場の期待に端を発しているという側面が強い。世界的に金融緩和が進み、低金利環境がより強化されるなか、少しでも高い利回りの獲得を目指す投資家のリスクテイク行動が今後は強まりやすいだろう。その際に、楽観的なシナリオに頼ってそうした投資行動を正当化したいという心理が、アルゼンチンへの投資家の間でも強まりやすいのではないか。

しかし、そうした行動こそが再び深刻な危機を招く元凶となるのではないか。過去にデフォルトを8回引き起こしているアルゼンチンでは、そうした形で市場の危機が繰り返されてきたのだろう。

(注)「野党の大統領候補、債務返済について言及」、ジェトロ・ビジネス短信、2019年10月3日

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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