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米共和党が地方選挙で相次ぎ敗北

2019/11/11

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地方部の支持者を失う共和党

2020年11月3日に実施される米大統領選挙まで、残り1年を切った。このタイミングで実施された地方選挙で、与党共和党は相次いで野党民主党に敗れている。再選を目指すトランプ大統領にも暗雲が立ち込めてきた。

11月5日には、ケンタッキー州知事選挙をはじめ、バージニア州、ミシシッピ州、ニュージャージー州の4州で各種選挙が実施された。ケンタッキー州では、トランプ大統領の応援もむなしく、再選を目指した共和党の現職ベビン知事が、民主党候補のベシア州司法長官に敗れた。ケンタッキー州は、トランプ大統領が3年前の大統領選で、大差で制した州だ。

バージニア州議会選では、上下両院ともに民主党が共和党から過半数の議席を奪還した。民主党が両院を制したのは、実に約25年ぶりのことだ。ニュージャージー州でも、民主党が下院で過半数を維持する見通しとなっている。保守地盤のミシシッピ州の知事選でも、民主党は勝利まであと一歩と善戦した。

これらは地方選挙であり、その結果から単純に国政選挙の行方を占うことはできない。しかし、ケンタッキー州知事選での共和党の敗北は、トランプ大統領への批判を映したもの、との見方もある。敗れたベビン知事は、トランプ流の政治スタイルであるためだ。彼は不注意発言が多いタイプであり、また、選挙運動中は移民や人工妊娠中絶問題などを積極的に取り上げた。また、4.4%の失業率に代表される同州の良好な経済環境という強い追い風にも関わらず現職知事が敗北したという点は、トランプ大統領の再選の可能性を考える際にも示唆的である。

共和党は地方部での有権者の支持を失っていると言われている(注)。共和党は、2017~18年は郊外の選挙区で劣勢が続き、2018年の中間選挙で下院を失うことになった。バージニア州の場合、今回もリッチモンド郊外や州南東部で劣勢が広がった。トランプ大統領が率いる与党共和党は、郊外に住む大卒の有権者、特に女性の支持を失っているようだ。

ブルームバーグ氏が大統領選に出馬か

他方、大統領選挙では攻勢に回っているように見える民主党にも、なお課題は多い状況だ。ウォーレン候補の躍進など、民主党内では左派の影響力が高まっている。大統領選挙で最初に投票が行われる複数の州では、ウォーレン候補が勢いを増す一方、トップを走るバイデン候補が勢いを失っている。

しかし民主党内では、2020年の大統領選挙、議会選挙に向けてこのまま左派色を強める方向が良い戦略であるのか、コンセンサスはとれていない模様だ。それは、民主党を支持する富裕層の献金者の間で、富裕層に批判的な左派への不満が高まっているからだ。これが、民主党の政権奪取を最終的に阻む要因となってしまうかもしれない。ウォーレン候補は国民皆保険の実現のため、10年間で6兆ドルに及ぶ増税を大企業と富裕者に課す考えを示している。

そうした問題意識から、富豪で元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が、2020年大統領選に向けた民主党予備選への参戦を計画していることを明らかにしている。同氏は、今年になって出馬を一度検討したが取りやめ、民主党候補を支持する考えを明らかにしていた。

同氏のアドバイザーは、「わが国にとってドナルド・トランプは前例のない脅威になっているとブルームバーグ氏は考えている」、「ブルームバーグ氏は現在の候補者たちは望ましい位置につけていないとの懸念を強めている」と話している。

つまり、トランプ大統領の再選に強く反対するブルームバーグ氏は、左派に傾く今の民主党では、富裕層の資金的なサポートを失うことなどで、トランプ大統領の再選を阻むことができなくなることを怖れている。そこで、富裕層の支持を得ている中道派の自身が出馬することで、トランプ大統領の再選を阻むことを狙っているのだろう。

大統領選挙に向けては、共和党、民主党ともに戦略が固まらずに迷走している感がある。残り1年の間には、予想もつかないような新たな展開が起こりそうだ。

(注)"The Anti-Republican Trend", Wall Street journal, November 7, 2019

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