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韓国は2020年から人口減少社会へ

2019/11/29

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悪化を続ける韓国の成長率見通し

経済協力開発機構(OECD)は11月21日に、韓国の成長率見通しを一段と引き下げた。2019年の成長率見通しは1年前には+2.8%であったが、その後4回引き下げられ、今回は+2.0%となった。

OECDは米中貿易戦争による不確実性の高まりや半導体価格の下落などを受けて、韓国の輸出と設備投資が悪化している点、また雇用情勢の悪化が消費者心理を冷え込ませている点などを指摘している。経済情勢が一段と悪化する場合には金融緩和と財政出動が必要だ、との勧告も示している。

他方、与党系シンクタンクは、「韓国の景気は悪くなっていない」と主張している。民主研究院は、「経済指標は良好だが、メディアと専門家が景気に対して否定的な見解を示していることで、多くの人々が、景気が悪くなったと誤解しているのだ」と主張している。そして、その背景には野党の思惑がある、としている。つまり、韓国経済の悪化は、政争の結果作られた虚像、ということを言わんとしているのだ。実際には、そんなことはないだろう。景気情勢の悪化は、多くの経済指標によって裏付けられている。

高学歴社会が出生率の低下の一因か

ところで中長期の視点から、中国経済の見通しを厳しくさせている要因が、人口減少だ。2019年3月に韓国統計庁が発表した将来人口推計によると、2020年から人口は減少に転じる見通しだ(注)。

2019年2月に発表した2018年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は想定以上に低下し、0.98と初めて1を下回った。これは世界で最低水準である。予想以上の出生率の下振れなどを反映して、最新の見通しでは人口減少に転じる時期が、前回2016年時点での見通しと比べて4年前倒しとなったのである。

また今後、高齢化も急速に進んでいく。2017年時点の65歳以上の比率は人口全体の14%と日本のほぼ半分の水準にとどまるが、2065年には46%(中位シナリオ)と、ほぼ2人に1人が65歳以上となる見通しだ。その時点で、高齢化の比率は日本を抜いて主要国で最高水準にまで達する。

韓国で出生率が急速に低下している背景には様々な要因があるのだろうが、その一つは教育費の増大ではないか。当地(ソウル)で聞いた限りでは、韓国で良く知られてきた学歴社会は依然として続いており、良い学校に入るために、学習塾などに通わせるなど、親が子どもにかける教育費は相当額に達するという。

また、高等教育でも大学でPh.D.を取得する、あるいは海外の大学に留学する比率は高い。それらに必要な経費は、親が負担するのが一般的であるという。これでは、子ども一人当たりにかかる教育費はかなりの高額となり、複数の子供を育てる余裕はないのだろう。

高齢化対策でも日韓に共通点

しかし、そうした高学歴社会が、出生率の低下を通じて韓国経済の潜在力を低下させているのであれば、社会全体としては何のための高学歴なのか、と感じてしまう。

文政権は昨年12月に「低出産・高齢社会政策ロードマップ」を発表し、出産・養育費支援の増額や小学校入学までの医療費無料化、育児休暇時の給与引き上げなど、ややバラマキ的な政策を打ち出した。狙いは出生率の引き上げだ。また、人口問題への対応として、移民の受け入れなどを主張する意見も出てきている。

人口減少では、韓国が日本の状態に近づく「日本化」が見られている。出生率の低下では、既に韓国が日本を追い抜いてしまった。それへの対策や関連する議論についても、日本の後を追っている感が強い。

しかし、日本の経験に照らせば、財政政策を通じて出生率を引き上げるのはかなり難しい。韓国では、高学歴社会、競争社会、格差社会といった社会の規範を変えていくことが重要なのかもしれない。

(注)「韓国、来年から人口減に 2065年に高齢化で日本逆転」、2019年3月28日、日本経済新聞電子版

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