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中国の製造業景況感の上振れと世界経済の展望

2019/12/02

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中国の製造業PMI改善には海外のクリスマス商戦需要も影響

11月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は、政府版、民間版ともに事前予想を上回り、景況拡大と悪化の判断の分かれ目である50を上回った。これらの数値は、中国経済が減速局面を脱しつつある可能性を示唆するものであり、世界経済の安定にとっても良いニュースだ。

中国国家統計局が11月30日に発表した11月製造業購買担当者景気指数(PMI)は、市場の事前予想に反して、判断の分かれ目となる50を7カ月ぶりに上回った。指数は50.2で10月の49.3から上昇し、今年3月以来の高水準となった。指数の構成項目を見ると、生産と新規受注の指数の上昇が特に大きく、先行きの生産活動の回復を示唆するものとなっている。

指数が改善した背景には、中国政府によるインフラ投資促進策、不動産市場抑制策の緩和、地方政府による景気刺激策などの影響があったものと考えられる。 国家統計局の担当者は、輸出の新規受注は海外のクリスマス商戦向けの受注が増えたことの影響を受けた、と説明している。米国での個人消費の堅調さや、トランプ政権が8月に、クリスマス商戦に影響を与えないようにするため、9月1日から発動を予定していた中国への「第4弾」制裁関税の一部品目の発動を12月15日に先送りしたこと、その後、米中両国が部分合意に向けた前向きな議論を続けていること等が、輸出環境の見通しを改善させている。

他方、中国メディアの財新と英調査会社IHSマークイットが12月2日に発表した11月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月比0.1ポイント上昇の51.8だった。2016年12月以来実に2年11カ月ぶりの高水準となり、判断の分かれ目となる50を4カ月連続で上回った。マークイット社は、足元の製造業の投資は「底打ち」状態だと分析している。

欧米でクリスマス商戦の見通しに明るさも

先週末に米国でクリスマス商戦の始めである大型セールの「ブラックフライデー」がスタートした。クリスマス商戦の総売上高は、前年比4%程度の増加と堅調が見込まれている。オンライン販売は、ブラックフライデーでの売り上げが過去最高を記録した。ドイツでも、足もとで小売業の景況感が大幅に改善しており、好調なクリスマス商戦が予想されている。

昨年12月には、世界経済の後退入りのリスクが意識され、株価も大きく下落していた。しかし1年経って、先行きの経済は依然不透明ながらも、事態はやや改善方向にあるように見える。その要因として挙げられるのは、中国での政策対応に加えて、3回に渡る米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの効果だろう。

短期金利引下げの効果よりも、それを反映した長期金利の大幅下落が、米国の住宅、自動車といった金利敏感セクターを支え、その効果はなおしばらく続くことが見込まれる。さらに、米国の長期金利低下は世界に波及し、世界経済を下支えしている面があるだろう。

FRBの利下げは、金融市場の不均衡、いわゆるバブルを助長している面があり、長い目で見て世界経済の安定に寄与するかどうかは疑問ではあるが、短期的には景気後退のリスクを低下させたことは確かだ。

日本では先週発表された10月の鉱工業生産が大幅に低下したことを受けて、景気後退懸念が再燃している。しかし、海外経済、特に日本経済の依存度が最も高い中国経済が減速を脱していくのであれば、日本経済が本格的な景気後退に陥る可能性は限られ、年明け以降は緩やかな持ち直し傾向に転じる姿が展望できる。

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