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日本でも懸念が広がる中国の新型コロナウイルス

2020/01/21

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人から人への感染を確認

中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎に対する警戒感が、世界規模で一気に高まってきた。中国国営中央テレビなどによると、中国政府の専門家チームを率いる鍾南山氏は20日、「人から人に感染していることは間違いない」と言明した。鍾氏は、広東省の患者が武漢市に行ったことはないが、家族が武漢に行ったあとに感染したことを、人から人への感染の根拠の一例として挙げている。また、感染源に関してはアナグマなど野生動物の可能性が大きいと指摘している。中国政府は20日付で、伝染病防治法に基づく公告を出し、全国の管理・対応レベルを引き上げた。

新型肺炎の広がりを受けて、世界保健機関(WHO)は、専門家による緊急委員会を本部のあるスイスのジュネーブで22日に開くと発表した。この新型肺炎が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に相当するかどうかを検討するほか、感染拡大を防ぐ方策などを協議する予定だ。

2002年に中国で発生したコロナウイルスの一種であるSARS(重症急性呼吸器症候群)では、中国政府の情報開示が遅れたことにより感染が拡大し、海外から強く批判されたという経緯がある。この経験を踏まえて、今回中国政府は、迅速な対応を目指しているように見える。

春節と重なったことで感染拡大のリスクが高まる

これに加えて、中国政府が対応を急いでいる理由は他にもある。それは、春節(旧正月)が近づいていることだ。中国では1月25日から春節が始まるが、この時期は、帰省や旅行などで延べ約30億人の中国人が、国内あるいは国外に移動する。それは、新型コロナウイルスの感染を急速に拡大させてしまう可能性を高める。

休暇は春節を挟む前後40日程度であることから、内外への人の大移動は既に始まってしまっている。この点を踏まえて鍾氏は、感染者はさらに増えるとの見通しを示し、感染拡大に拍車をかける人物、いわゆるスーパースプレッダーの出現を防がなければならないと強調している。

日本で警戒されているのは、春節に合わせて日本を訪問する中国人観光客から、新型コロナウイルスの感染が日本でも広がらないかという点だ。中国人観光客が近年急増したことから、これは、SARSの時と比べてより顕著なリスクとして認識されている。

21日には首相官邸で関係閣僚会議が開かれ。安倍晋三首相は、入国時の検疫における水際対策の徹底に加え、国内で感染が疑われる患者の把握などの情報収集に万全を期すよう指示している。それでも、水際対策で感染者の入国が完全に阻止できないとの不安は、国民の間に根強く残るのではないか。

国内では消費活動に影響も

その場合、国内では、中国人観光客からの感染を防ぐ自衛策がとられることになるだろう。具体的には、外国人観光客が集まる小売店での買い物を控えるということだ。あるいはより慎重な対応としては、外出をできるだけ控えるといった行動も国民の間で出てくる可能性がある。この場合、国民が買い物を控える、あるいは外出を伴う遊興などのサービス消費を控えることから、一種の自粛ムードが、国内個人消費に悪影響が生じる可能性があるだろう。21日の日本の株式市場では、こうした連想から映画関連会社の株価が下落している。

他方、現時点では可能性は依然低いものと考えられるが、仮に日本国内で感染者が増える事態となれば、経済的な影響はより拡大する。その場合、不要不急の外出の自粛、催し物の中止、学校閉鎖、会社・工場の一時休業などが政府から求められるだろう。そうなれば、経済への影響は個人消費需要の減退にとどまらず、生産活動全体の停滞につながりかねない。

SARSの際、初期対応が遅れたと批判された中国政府は、その後2003年の前半に、SARS封じ込めにかなりの積極策を講じた。そのため、中国は事実上封鎖に近い状態となったのである。北京には1989年の天安門事件以来で最も強い厳戒態勢が敷かれ、映画館やディスコなどの娯楽施設はすべて閉鎖された。市内の5つ星ホテルは空室率が80%に上ったという。

感染拡大時の経済損失推計

厚生労働省は、新型インフルエンザが国内で本格的に拡大した場合の経済状況についてレポートをまとめ、公表している(「新型インフルエンザ発生時の社会経済状況の想定(一つの例)」)。その中で紹介されている各種機関の推計によれば、新型インフルエンザの経済的損失は、日本ではGDPの3.3%程度から6.1%程度に及ぶ結果となっている。極端に深刻な事態を想定すれば、GDP比15.7%というものもある。それらは、日本経済を深刻な後退局面に陥れるのに十分な規模である。

現時点で、いたずらに不安を煽るべきではないが、新型コロナウイルスの感染リスクが日本人の身近なところにまで迫ってきた可能性は否定できない。さらに、事態が悪化した場合には、経済活動に大きな打撃となりうる点についても予め理解しておき、それに備えておくことも重要だろう。

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