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ガバナンスの向上を狙い地銀との対話を強化する金融庁

2020/02/13

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地銀版コーポレート・ガバナンスコード

金融庁は2月7日に、「地域金融機関の経営とガバナンスの向上に資する主要論点(コア・イッシュー)~「形式」から「実質」への変革~」と題する文書を公表した。金融庁は、地域金融機関の経営とガバナンスの実効性の向上に資するため、参考となる主要な論点をここで整理した、と説明している。これは、地銀版コーポレート・ガバナンスコード(企業統治指針)とも呼ばれている。

文書は以下の8つの論点から成り立っている。①地域銀行の経営理念、②地域社会との関係、③経営者の役割、④取締役会の役割、⑤経営戦略の策定、⑥経営戦略の実践、⑦業務プロセスの合理化や他機関との連携、⑧人材育成、モチベーションの確保。

低金利や人口減少といった厳しい経営環境の下で、地域銀行が持続可能なビジネスモデルに基づいて地域経済を支える重要な役割を果たしていくには、経営とガバナンスの実効性を向上させることが重要、と金融庁は説明している。そのためには、経営トップや取締役会等が自行の経営理念やガバナンスの現状を改めて見つめ直すことが重要であり、その「気づき」のきっかけとすることが、この文書作成の目的であるという。そのうえで、文書の主要な論点について、地域銀行と深度ある対話(探求型対話)を行う、としている。

今春にも地銀頭取との直接対話を開始

実際、遠藤俊英長官ら金融庁幹部は、この文書に示された論点に基づいて、地銀各行の頭取との対話を今春にも始める模様だ。

この文書や地銀頭取との直接対話については、伏線がある。2019年1月の地銀トップとの会合で遠藤長官は、「この5年間を振り返ると、皆様の決断と実行のスピード感は全くもって十分ではないと言わざるを得ない。抜本的な経営改革は、自らの任期中に決断し、実現するとの強い認識を、年初にあたって持っていただきたい」と発言していた。

文書の中でも、頭取は、「課題を先送りすることなく、自らの任期中に取り組んでいく」との文言もある。頭取が問題を後継者に先送りすることなく、自らの任期中に問題解決に積極的に取り組むよう強く働きかける、遠藤長官の並々ならぬ強い決意がここには感じられる。

他方、「『形式』から『実質』への変革」という文書の副題からは、形式を整えるだけで実効性を伴わない状況は許さない、という金融庁の意思が感じられる。この形式と実質が主に意味しているのは、取締役会の役割、社外取締役の機能といったガバナンス体制だろう。

社外取締役の設置義務や取締役の報酬決定方法の透明化を定めた改正会社法が、昨年12月に成立した。外部からのチェック機能を強化し、企業統治を高めることがその狙いであり、一部を除き2021年中に施行される。

対話を通じて「形式」でなく「実質」を問う

社外取締役を選任する地銀は増えているものの、2018年6月時点で取締役のうち社外取締役が3分の1以上を占める地銀は3割弱にとどまるという(EY新日本監査法人による)。また、社外取締役がいても、彼らが経営に積極的に参画し、改革につなげているかどうかについて、金融庁は懐疑的なのだろう。さらに金融庁は、経営トップの選解任を指名委員会などで十分に議論し、適切な手続きを踏んでいるかについても強い関心を持っているようだ。加えて、社外取締役に経営のチェック機能を果たすだけでなく、地銀の成長に向けた助言役としても存在感を発揮して欲しい、と金融庁は考えている。

各地銀が社外取締役を何人選任しているかといった「形式」は容易にチェックできるが、それがどの程度経営の向上に役立っているかという「実質」は、外からでは分かりにくい。「仏作って魂入れず」とならないよう、社外取締役などの実質的な機能を、直接対話を通じて明らかにするとともに、経営者の意識改革を促すことで、経営とガバナンス向上の実効性をより強めることを金融庁は狙っているのだろう。

昨年8月の金融行政方針で金融庁は、頭取らにとどまらず、社外取締役ともフラットな関係で対話を実施するとしている。その際に、金融庁は心理的安全性(一人ひとりが不安を感じることなく、安心して発言・行動できる場の状態や雰囲気)を確保することに努めるとしている。

しかし、表面的な態度はともかくとしても、対話を通じて地銀の頭取あるいは社外取締役らに自ら改革推進を強く迫る金融庁の強固な姿勢は、もはや簡単には揺るぎそうもない。

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