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政府は新型肺炎で緊急対策を発表

2020/02/14

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景気対策よりも新型肺炎対策が優先

日本政府は、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」を2月13日に閣議決定した。奇しくもこの日は、新型肺炎によって初めて国内で死亡者が出た日でもあった。国内でも感染者が広がる次のステージに入ったのではないか、と人々が心配し始めるタイミングで、政府の緊急対策が打ち出されたのである。

2019年度予算の予備費103億円を含め、その総額は153億円となる。内訳を見ると、①帰国者への支援、30億円、②国内感染対策の強化、65億円、③水際対策の強化、34億円、④影響を受ける産業等への緊急対応、6億円、⑤国際連携の強化等、18億円となっている。

さらに細目で金額の大きいものを挙げると、国内での検査体制・医療体制の強化に30.6億円、水際での有症者発生時の感染の拡大防止に必要な措置に30.2億円、国際的なワクチン研究開発等支援事業に10.7億円、検査キット、抗ウイルス薬・ワクチン等の研究開発に10.0億円、となっている。こうした資源配分は、概ね妥当なものではないかと思われる。

例えばインバウンド需要の落ち込みによって関連する事業者が被る損失は、既に1ヶ月で1千億円を超えているのではないかと推測される。それと比べると、④影響を受ける産業等への緊急対応、6億円はかなり小さいことは否めない。

しかし、いま優先すべきなのは、景気対策ではなく、新型肺炎が国内で拡大することを防ぐ対策である。景気対策は、そうした新型肺炎対策が一巡した後に本格的に実施すれば良いのではないか。

感染者の洗い出しよりも症状のある患者への対応が重要に

対策の中では、感染拡大防止策の一環として、現在は1回、約6時間で200検体程度しかできない検査を、800検体程度にまで引き上げることをめざすという。国内での感染者拡大を防ぐために、検査体制を強化することは確かに重要ではあるが、医療関係者が費やすことができる時間には限りがあることから、検査体制強化ばかりに注力するのは適切ではないのではないか。

症状がない感染者を検査の強化によって洗い出すよりも、既に症状がある患者が重篤化し死亡することを防ぐことに、リソースを集中すべきではないか。既に国内では、明確な症状がない潜在的な感染者が相当数に上ると多くの人は考え始めているだろう。しかし、症状が明確となった際に、適切な医療を受けることで回復する事例を多く目にすることで、感染に対して日本の人々が過度に警戒しないようにすることは重要だろう。それによって、消費活動に極端な悪影響が及ぶことも避けられる。

中国の例では、検体採取によるDNA検査でも、判定の精度にかなり問題があることが指摘されている。陰性の判定が短期間で陽性の判定に転じることも多いようだ。また、検査をする人の経験の違いが、判定結果を大きく左右するという。

今後日本でも簡易検査キットが開発されれば、水際対策などでは一定の効果を発揮するだろうが、精度の問題は強く残るのではないか。

検査の精度を追求し、感染者の洗い出しに注力することよりも、症状に基づいた対応策へと重点を移していくことが重要なのではないか。中国でも2月12日から、当局がウイルス検査で陽性反応の出た患者だけでなく、医師による臨床診断も感染者の判定に加えられた。

医療従事者などのリソースが限られる中、最も有効な形にリソースを配分し、それを適宜見直していくという柔軟な対策が、政府に求められる局面となったのではないか。

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