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新型肺炎で実効性が問われる金融機関のBCP

2020/02/27

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金融機関でも感染者

新型肺炎が国内で拡大を続ける中、職員が罹患するリスクは金融機関にも及んできた。実際、2月27日に三菱UFJ銀行は、愛知県北部にある江南支店の行員1人が、新型コロナウイルスに感染していたことを公表した。濃厚接触者として同僚ら約10人を2週間の自宅待機とし、支店内の消毒作業を済ませたうえで、業務は平常通り続けるという。

公的な機能を持つ金融機関が、こうした環境の下でどのように事業を継続していくのか、いわゆる業務継続計画(BCP)の実効性が問われる局面になってきた。

25日に金融庁は、金融機関に対して、「『新型コロナウイルス感染症対策の基本方針』を踏まえた対応について」という要請を行っている。ただしこれは、政府の「基本方針」を、金融庁が所管事業者である金融機関に伝える、という性格のものであり、金融機関の業種の特性などを踏まえて、何らかの具体的な指針が示された訳ではない。情報収集、手洗い、咳エチケット、時差出勤、テレワークなど、ごく一般的な内容の要請ばかりである。

金融機関は、それぞれ独自に作成した業務継続計画(BCP)に沿って適宜対応を進めている、という前提なのだろう。

海外金融機関で進む新型肺炎の拡大への対応

日本の金融機関がどのような事業継続の対応を現在具体的に行っているかは明らかではないが、海外金融機関の動向については報道を通じて知ることができる。

ブルームバーグ社(注1) によれば、世界の主要金融機関は、新型肺炎の拡大を受けて、トレーディングやその他業務を継続するための緊急計画を、アジア全域に広げている。

クレディ・スイス・グループは韓国で、従業員を複数のオフィスに分散させ始めた。日本でも同様の措置を検討しているという。ドイツ銀行やゴールドマン・サックスは、イタリアへの出張を制限した。UBSグループは、中国を最もリスクが高い「レベル3」としているが、香港とシンガポールをそれに次ぐ「レベル2」とした。HSBCは、韓国への出張を制限し、モルガン・スタンレーは、韓国に滞在していた人と濃厚接触した社員を14日間在宅勤務としている。

大手米金融機関は日本で厳格なBCPを策定

また、フィナンシャル・タイムズ紙(注2)によれば、日本においても大手米金融機関は、事業継続の対応を計画している。

JPモルガンは、部門を越えて従業員をチームAとチームBに分けるという。感染が広がった場合には、例えばチームAを在宅勤務、チームBを会社勤務とする。2週間後にはチームAとチームBが入れ替わるが、両者の接触は厳格に禁じられる。

バンカメ、モルガン・スタンレーでは、各部門の従業員を3つのグループに分け、グループ間での接触を数週間禁じる。感染が部門内で広がり、一部門が機能停止に陥ることを避けることを狙っているのだ。

その際、グループ1は本社勤務、グループ2は在宅勤務、グループ3はBCP対応オフィスでの勤務とする。このBCP対応オフィスは東京直下型地震を想定して準備されたもので、その多くは郊外にあるが、大阪に設けている金融機関もあるという。

ラディカルなBCPの策定を

政府は2月25日に出した基本方針の中で、企業に時差出勤やテレワークを呼び掛けている。そして企業の間では、時差出勤やテレワークが徐々に広がってきている。しかし、企業がそうした取り組みを進める強い誘因となっているのは、非常時にも自社の事業を継続させるという強い意志というよりも、政府への協力、社会への貢献という意識なのではないか。フィナンシャル・タイムズ紙は、日本の企業文化にはテレワーク(リモートワーク)は馴染まず、また多くの日本企業はそれを実施できる制度とはなっていない、と批判的に論じている。

米国の金融機関が、既に見たような新型肺炎に対してラディカルなBCPを策定している背景には、クルーズ船での感染拡大のケースなどを受けた、日本政府の新型肺炎対策に対する強い不信感もあるのではないか。

日本の金融機関が、新型肺炎に対して具体的にどのようなBCPを策定しているかは明らかではないが、その多くは、米国の金融機関ほど具体的かつラディカルなものではないだろう。 政府の方針を受け入れるばかりでなく、また、社内で感染者が出た際の対応マニュアルといったような受動的なものにとどまらず、仮に社会に新型肺炎が蔓延しても自社は事業が継続できるという体制を予め整えておく、そうしたBCPこそが重要だ。

(注1) 「UBSやBofA、新型ウイルスへの警戒強めるー業務継続の緊急計画」、ブルームバーグ、2020年2月26日
(注2) “US banks to isolate teams in Tokyo“‚ Financial Times, February 27, 2020

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