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スーパーチューズデーでバイデン氏が予想外の躍進

2020/03/04

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民主党大統領候補はバイデン氏とサンダース氏に絞られる

3月3日に米国は、民主党の大統領候補者指名争いで山場となる、「スーパーチューズデー」を迎えた。14州の予備選とアメリカ領サモア、海外の民主党員による予備選挙・党員集会が行われた。全米で最も人口の多い西部カリフォルニア州の予備選挙も行われ、この1日だけで、大統領候補を選ぶ代議員のうちおよそ3分の1が決まる。

開票作業は米東部時間3日午後7時(日本時間4日午前9時)以降、各州で順次行われた。4年前の「スーパーチューズデー」では、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏が、11の州のうちいずれも7つの州で勝利し、指名獲得に大きく近づいた、という経緯がある。日本時間の4日午後2時時点で、バイデン氏はそれを上回る8州で勝利した可能性が高く、「スーパーチューズデー」を制した感がある。サンダース氏は4州で勝利したとみられる。

この結果、現時点での代議員獲得数の推計値(日本時間の4日午後2時時点、ウォールストリート・ジャーナル紙による)は、バイデン氏が383、サンダース氏が300、ブルームバーグ氏が32、ウォーレン氏が24である。候補者はバイデン氏とサンダース氏の2人に絞られたが、バイデン氏がかなり有利な位置を得ているといえるだろう。

中道派がバイデン氏支持で結束

当初は若年層からの強い支持がある左派サンダース氏の優位を見込む向きが優勢であった。ところが実際には、予備選の緒戦で躓いたバイデン氏が、予想外の大勝となり復活を遂げたのである。

その最大の原動力となったのは、民主党大統領候補の中道派であるビート・ブティジェッジ氏とエイミー・クロブシャー氏が、「スーパーチューズデー」直前に撤退を決めるとともに、いずれもバイデン氏の支持に回ることを表明したことだ。これは、民主党内の中道派が、トランプ大統領打倒に向けて一致団結し始めたことを意味しよう。

「スーパーチューズデー」は、民主社会主義を掲げ社会変革を目指すサンダース派と、トランプ大統領打倒の勢力を結集したバイデン派との一騎打ちの様相となった。バイデン氏の今回の勝利は、米国が左と右に大きく分裂している状況を強く危惧する有権者のバランス感覚の反映、という側面もあるのではないか。

同じ中道派であるブルームバーグ氏は、今回の「スーパーチューズデー」から民主党候補者指名争いに参加したが、思ったように支持を集めることはできなかった。同氏の狙いはトランプ大統領の打倒に尽きることから、早晩、指名争いから撤退し、バイデン氏の支持を表明するのではないか。その場合、候補者指名に向けて勢いのあるバイデン氏の優位は、より強化されていくだろう。

トランプ政権も戦略の見直しを迫られるか

大統領候補が左派と中道派とに大きく分裂し、お互い拮抗していることから、民主党の候補者選びは夏の党大会での決戦投票にまでもつれ込むとの見方も、「スーパーチューズデー」前まではなされていた。その場合、民主党が内部で分裂しているイメージがより明確になり、さらに、大統領候補者選びが遅れることで、本選では現職のトランプ大統領に対して、民主党が不利になるとの見方もあった。

しかし、今後、早期にバイデン氏が候補者指名争いを制することになれば、本選でのトランプ大統領との闘いにも有利となる面があるだろう。

他方、トランプ大統領陣営は、左派色が強いサンダース氏が民主党大統領候補になれば、本選で中道の無党派層の票を集めることは難しく、自身には有利と考えていただろう。その場合は、従来通りの政策姿勢を維持し、自身の鉄板支持層である保守層をしっかりと捉えておけば選挙に勝てることができる。

ところが、「スーパーチューズデー」でバイデン氏が予想外の躍進を遂げたことで、トランプ大統領も無党派層の取り込みに向けた新たな政策を打ち出すなど、選挙戦の戦略の見直しを迫られるのではないか。

今回の「スーパーチューズデー」で反企業色がある左派のサンダース氏がやや劣勢となったことは、左派色の強い新政権が生まれることを警戒している米国並びに世界の株式市場にとっては、好材料である。他方、バイデン氏の予想以上の躍進は、同氏が民主党の大統領候補となった場合に、親企業的なトランプ大統領を選挙で破る可能性が出てきたとの観測から、株式市場には悪材料となる面もある。その双方が打ち消し合う形で、「スーパーチューズデー」の結果が金融市場に与える影響は比較的限られそうだ。

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