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金融危機はいつも違った顔で現れる

2020/03/27

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金融危機への対応が次の危機を生むという連鎖

株式市場はひと頃と比べるとやや安定を取り戻したように見えるが、これで金融市場の危機が去ったと考えるのは、あまりにも楽観的過ぎよう。市場の安定回復を目指して、各中央銀行は異例の積極策を相次いで実施した。比較的迅速な対応が可能だったのは、2008年のリーマン・ショック(グローバル金融危機)時の経験を、各中央銀行が記憶していたからだ。今までの対応は、当時のものをなぞり、復元したかのようでもある。

しかし、今後の各中央銀行の対応は、再び未知の領域に入り、手探りとなっていくのではないか。それは、今回の金融不安は、リーマン・ショック時の金融危機とは異なる性格のものだからだ。

「金融危機はいつも違った顔で現れる」と言われる。それがゆえに、危機を防ぐことは難しい。同じ危機が再び起こらないように万全の体制を整えていると、危機は別の場所から噴き出す。また、危機防止策が、新たな危機の発生を助けてしまうことも良くあることだ。

リーマン・ショックの際の危機の源泉は、価格上昇が行き過ぎた米国の不動産市場にあった。それを支えた銀行融資は証券化され、そのリスクは銀行のバランスシートからは一度切り離されたものの、銀行はその証券化商品への投資を拡大させる形で大きなリスクを持ったのである。そのため、不動産市況の変調を映した証券化商品の価格下落が、大手銀行に深刻な不良債権問題を生じさせ、経営破綻の淵にまで追い詰めることとなった。

銀行規制強化がリスクをノンバンクにシフト

この時の経験から、国際的に銀行規制は一段と強化され、各国の大手銀行は、自己資本の拡充や流動資産の保有拡大、バランスシートの圧縮を強く求められた。その過程で、大手銀行はリスク性の高い金融商品への投資を大幅に減らしていったのである。

さらに、欧米の銀行は、証券市場で売値と買値を提示して、投資家がいつでも証券を売買できるように助ける、マーケットメイク機能も大幅に低下させていった。リスク資産への投資拡大と、そうしたリスク資産を含む証券市場あるいは為替市場でのマーケットメイク機能の2つを銀行から引き継いでいったのが、ヘッジファンド、ミューチュアルファンド、あるいは保険会社といったノンバンク(非銀行金融機関、あるいはシャドーバンク)であった。金融規制の強化が、銀行の財務の健全性を改善させる一方、リスクをノンバンクにシフトさせたのである。こうしたいわゆる規制アービトラージのリスクは、金融規制当局は以前から十分に理解していたものの、本格的な対策がとられないまま、今回、問題が噴出してしまった感がある。

マーケットメイク機能も脆弱に

折しも、長期化する超低金利環境の下で、証券化商品、社債などの金融商品の価格は大幅に上昇し、いわゆるバブル状態が時間を掛けて形成されていった。そして、今回、新型コロナウイルス問題がきっかけとなって、そうした商品の大幅な価格調整が始まった、いわゆるバブル崩壊のような事態が引き起こされたのである。それは、銀行と比べて体力がないノンバンクの経営を大きく揺るがしていることだろう。

さらに、ノンバンクはかつての銀行のように、市場が混乱しても市場に対して流動性をしっかりと供給し続けるようなマーケットメイク機能を十分に果たすことができない。その結果、ひとたび混乱が生じれば、金融市場のボラティリティ(変動幅)は増幅されやすいのである。

この点は、為替市場に付いても同様だ。スワップ市場で邦銀のカウンターパートとなる欧米のノンバンクが、ドルの安定的な供給を果たせないことが、邦銀のドル調達不安を高め、ドル調達コストの大幅上昇などを生んでいる面があるだろう。

中央銀行の長い闘いは始まったばかり

このように、今回の金融危機は、リーマン・ショック時とは大きく様相を異にしている。従って、これからは、中央銀行は手探りで新たな施策を講じ、深刻な金融危機の回避に取り組んでいくことになるだろう。

その際には、機能が大きく低下した証券市場、特にCP(コマーシャル・ペーパー)、社債、特にハイイールド債とBBB格社債、証券化商品、特にリスクの高い企業向け貸出を証券化したCLO(ローン担保証券)などを、次第に中央銀行が買入れていき、市場のリスクを吸収することで市場機能を維持する施策が段階的に進められていくのではないか。

また、今後表面化してくることが予想される経営不振に陥るノンバンクの救済策にも、欧米の中央銀行は奔走しなければならなくなる可能性もあるだろう。中央銀行の綱渡りの危機対応は、まだ始まったばかりである。

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