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経済対策で重要なのは経済効果よりも企業、家計の支援

2020/04/08

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2020年度補正予算の規模に注目

7日夜に閣議決定された経済対策は、事業総額108兆円と非常に大規模となった。これは、GDP比率で20%にも達するものだ。

しかし、これによって未曽有の景気浮揚効果が生じる、と考えるべきではないだろう。108兆円には、既に昨年年末に決定された総額26兆円の経済対策が含まれており、また、資金繰り支援策、総額26兆円の税・社会保険料の猶予なども盛り込まれている。それらがなければ、企業の破綻や家計の生活の困窮化から経済はもっと悪くなっている、という意味では、こうした対策からもプラスの経済効果は生じる。

しかし、追加的な財政措置によって、経済がどの程度刺激を受けるのか、を推し量る場合には、2020年度補正予算の規模に注目する必要がある(前回の景気対策を含めて財政支出は39.5兆円、今回の新規分は29.2兆円だが、これに含まれる財政投融資の12.5兆円は、直接、景気浮揚効果を生むものではない)。

2020年度補正予算の規模は、16兆8,057億円である。さらに、財源としては建設国債2兆3,290億円、赤字国債14兆4,767億円の新規発行があてられる。

補正予算の大まかな内訳は、以下の通りである。
① 感染拡大防止策と医療提供体制の整備・治療薬の開発に1兆8,097億円
② 雇用の維持と事業の継続に10兆6,308億円
③ 次の段階として官民をあげた経済活動の回復に1兆8,482億円
④ 強靭な経済構造の構築に9,172億円
⑤ 新型コロナウイルス感染症対策予備費に1兆5,000億円
⑥ 国債整理基金特別会計への繰り入れに999億円

景気浮揚効果はGDP0.9%程度

以下では、経済対策の景気浮揚効果を概算してみよう。上記6項目のうち、新型コロナウイルス問題の収束後に支出される③は、当面の景気浮揚効果を発揮しないため控除して考えよう。また、支出されるかどうか不明な⑤と、景気浮揚効果を生じさせない⑥も控除する。その場合、残りの財政支出は13兆3,576億円となる。

他方、建設国債発行の2兆3,290億円が建設投資関連の支出とみなすと、それ以外の財政支出が11兆286億円となる。建設投資関連については、土地収用分などを除いて、その7割がGDP押し上げに寄与すると仮定すれば、その額は1兆6,303億円となる。 

企業や家計への給付金を中核とする11兆286億円については、消費や投資に回る比率は必ずしも高くない。ここでは、その比率を3割と仮定してみよう。その場合、GDP押し上げ効果は3兆3,085億円となる。

この2つを合計すれば、4兆9,388億円だ。これはGDPを0.90%押しあげる効果となる。

重要なのはセーフティネットの拡充

このように、事業総額108兆円という規模と比較すると、実際の経済対策の景気浮揚効果は決して大きくない。緊急事態宣言の発令で強まる外出自粛要請などによって拡大する経済の悪化を、経済対策で打ち消すことは到底できないのである。

しかし、今回の経済対策では、新型コロナウイルス問題で大きな打撃を受けた企業や家計を救済し、問題収束後には元の経済活動に復するようにするための、いわばセーフティネットの拡充が最も重要なのである。そうした役割は果たしていると言えるのではないか。

ただし、新型コロナウイルス問題がいつ収束するか分からない中では、セーフティネットの拡充策は、今後も追加措置が必要になってくる可能性は十分に考えられるところだ。

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