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景気ウォッチャー調査で確認されるコロナ禍

2020/04/08

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全国に広がる劇的な景況感の悪化

4月8日に内閣府が発表した3月の景気ウォッチャー調査は、新型コロナウイルスによる企業の経営環境の劇的な悪化を、改めて確認させるものとなった。

3月の現状判断DI(合計)は前月比-13.2と、2月の同-14.5に続き、2か月連続で大幅に下落した。下落のペースは、2008年のリーマン・ショック後と比べものにならないほど急速であり、またDIの水準は、既にリーマン・ショック後のボトムを下回っている。これらの点は、少なくとも短期的には、足もとの経済の悪化の程度は、リーマン・ショック時を上回っていることを裏付けている。

地域別に現状判断DIを見ると、2月には東京都、九州、近畿などで下落幅が大きい一方、北陸では下落幅が小さめになるなど、ばらつきが見られた。これは、渡航制限によるインバウンド需要の影響を大きく受ける地域で、より企業の景況感の悪化が生じたためと考えられる。

しかし、今回の3月調査では、地域ごとの格差は大きくなく、全地域であまねく景況感の悪化が確認されている。これは、イベント自粛、外出自粛の動きが、全国で同時に生じていることの反映だろう。

企業は打つ手のない状況に

企業の生の意見を伝える「景気判断理由の概要」からは、まさに企業の窮状を訴える声が溢れている。全地域で見て、「◎良」、「〇やや良」の判断が付いた地域はほとんどない。例外は四国の企業動向関連の現状判断と沖縄の企業動向関連の現状判断の2つだけであり、それぞれ代表的なコメントは、「公共事業も発注され、民間もいろいろ引き合いが来ている(建設業)」、「デイサービス、老人ホーム、グループホーム等の介護施設開設の具体的な相談が増えてきている(建設業)」とある。共に一部の建設業だ。

それ以外に、売り上げ増加の声が各地で出ているのがスーパー、コンビニ、ドラッグストアだ。新型コロナウイルスによる内食の増加、巣籠り消費の影響や、備蓄品の買い溜めなどが背景にある。しかし、特に消費者の備蓄品の買い溜め行動については一時的なものであり、企業側に楽観的なムードは感じられない。

多くの企業コメントの中で、企業全体の声を代弁しているように感じられるのは、北陸地区の百貨店の以下のコメントだ。

「通常なら売上が低迷すれば何らかの施策やばん回策を打つものだが、今回の状況では集客策を打つこと自体避けなくてはいけないし、自粛しなくてはいけない。現状の打つ手なしの状況がいつまで続くのか見通せない(百貨店)」。

新型コロナウイルスが収束しない限り、経済・経営環境の改善は見込めない。しかし、新型コロナウイルスがいつ収束するかは誰にもわからないことであり、まさに、将来展望が全く持てない状況である。

さらに逆境を撥ね返すような営業努力をすることも許されない。まさに「打つ手なし」の状況である。そうしたもと、企業あるいは労働者のモラルはかつてないほど、まさに極限まで落ちているのではないか。これが新型コロナウイルスによる全く新しいタイプの不況の怖さでもある。

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