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緊急事態宣言解除で個人消費の戻りは半分か

2020/05/25

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緊急事態宣言は全面解除に

政府は緊急事態宣言がまだ解除されていない首都圏1都3県と北海道について、解除の可否を25日に判断する。宣言の期限である5月末を若干前倒しする形で残る5都道県についても解除され、4月7日に発令された改正新型インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言は、2か月弱で全面的に解除される可能性が高い。

5都道県での緊急事態宣言が5月末まで継続するという前提で計算すると、5月の個人消費抑制の影響は11.7兆円に及び、それはGDPを2.1%押し下げる(コラム「解除に向かう政府の緊急事態宣言と地方主導の重要性」、2020年5月20日)。

仮に25日に5都道県での解除が決まれば、5月の個人消費抑制の影響は11.2兆円となり、それはGDPを2.0%押し下げることになる。両者の差はわずかだ。4月の個人消費抑制の影響は10.7兆円と試算されることから、個人消費抑制の影響だけでみても、5月は前月比でなおマイナス成長を続けるとみられる。

緊急事態宣言の有無で影響を受ける外出行動

ところで、緊急事態宣言が全面的に解除されることで、全国の個人消費はどの程度回復するだろうか。厳密に予測することは難しいが、それを考える手がかりとなるのが、既に緊急事態宣言が解除された地域での人出の戻りである。

4月7日の緊急事態宣言以前の状況と比べた場合、5月23日午後3時時点での人出は、①5月14日に緊急事態宣言が解除された地域では-21.2%、②5月21日に緊急事態宣言が解除された地域では-31.4%、③緊急事態宣言がまだ解除されていない5都道県で-42.9%となっている(図表1)。

こうした数字は、緊急事態宣言の有無によって、個人の外出行動は相応の影響を受けていることを示していよう。ただし、緊急事態宣言が解除されても、人々は感染のリスクを意識した行動をとり続け、いわゆる「新しい生活様式」への適用を進めることになる。その結果、個人消費が、新型コロナウイルス問題が生じる前の水準に戻ることは、当分の間はないだろう。

(図表1)主要都市での人出の変化

人出の戻りは半分程度か

それでは、緊急事態宣言が解除された後に、個人消費の抑制が一定程度緩和され、安定していく水準はどの程度だろうか。5月14日に緊急事態宣言が解除され、既に10日間が経過した地域での人出の戻りから、それを大まかに類推してみたい。

同地域の人出は、緊急事態宣言解除日を含む3日間の平均で、感染拡大以前の-51.8%であった。その後緩やかにマイナス幅は縮小し、23日までの最新3日間で-38.4%だ(図表2)。 仮にこの間の人出の戻りがちょうど道半ばであり、残り10日程度で安定水準、一種の均衡値に達すると仮定した場合、10日後の人出は感染拡大以前のちょうど-25.0%となる。人手は下落分のうち半分程度(48.3%)戻すことになる。

(図表2)緊急事態宣言解除後の人手(感染拡大依然との水準比較)

6月の個人消費抑制の効果は7.2兆円、GDPを1.3%低下

緊急事態宣言解除前の人出が感染拡大前の50%強落ちた段階で、個人消費の56%程度を占める、外出を伴う不要不急の消費がすべて控えられたと考えてみる。そして、人手の下落分のうち半分程度(48.3%)が戻ることは、不要不急の消費も、消失した分の半分程度(48.3%)を戻すものと考えよう。

これを前提に、6月の不要不急の消費は元の水準の50%程度(48.3%)とすれば、個人消費抑制の効果は7.2兆円、GDPを1.3%低下させると試算できる。4月の個人消費自粛の影響10.7兆円、5月の同11.2兆円と比べて小さくはなるものの、消費自粛の傾向はなお強く残ることになる。

人々の生活様式、行動パターンが従来と変わることによって、緊急事態宣言が全面的に解除された後にも、個人消費の抑制効果は相応の規模で残る可能性が高い。

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