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お盆時期の旅行・帰省の自粛要請で消費はどの程度減少するか

2020/08/04

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お盆時期は観光関連業のかき入れ時

来週にはお盆の時期を迎える。風習あるいは儀礼上のお盆期間は、例年8月13日(迎え火=盆の入り)から8月16日(送り火=盆明け)までの4日間である。しかし多くの人が休暇をとり、また帰省する傾向が強いのは、このお盆時期に近い土曜日と日曜日を中心とする数日間となりやすい。観光庁は、お盆時期の観光・旅行の支出を、この2日間をピークとする「富士山型」、と表現している。

今年であれば、15日(土)、16日(日)の2日間を含み、その前後に長めの休暇をとる人が多いだろう。

平成22年に観光庁が示した参考資料によると、お盆時期に年間旅行量全体の11.6%が集中している。年末年始の20.4%ほどではないものの、その数字は、ゴールデンウイークの8.9%を上回っている。お盆時期は、国内の観光関連業にとっては重要なかき入れ時なのである。

お盆期間中の帰省について注目される政府の対応

ところが、そのかき入れ時のお盆時期を前にして、国内での新型コロナウイルスの新規感染者が急増している。今年のゴールデンウイークは新規感染者の拡大時期と重なってしまったが、同様のことがお盆時期にも生じつつある。

お盆期間中の帰省について、西村康稔経済再生担当相は2日の会見で、都道府県境をまたぐ移動、高齢者のいる実家などへの帰省については「慎重に考えないといけない」と述べた。週内に有識者からなるコロナ対策分科会で、移動の際の注意事項や対策について意見を聴くという。他方、菅官房長官は3日の記者会見で、「県をまたぐ移動について国として一律に控えてほしいと言っているわけではない。帰省に関する注意事項について専門家の意見を聞く」と語っている。両者の説明には温度差があり、政府としての対応がまだ定まっていない印象を受ける。

お盆時期に政府の強い自粛要請があるケースとないケース

観光庁が7月31日に発表した「宿泊旅行統計調査」によると、日本人の延べ宿泊者数は6月に前年同月比-62.0%、つまり1年前の6月の水準の4割程度にとどまった。しかしこの数字は、4月の同-75.9%、5月の同-81.6%からは改善している。5月の宿泊者数は、前年の実に2割以下の水準にまで落ち込んでいたのである。

6月の宿泊者数の戻りは、4月と5月に出されていた緊急事態宣言の解除、政府によるゴールデンウイーク中の県をまたぐ移動の自粛要請の影響が剥落したこと、が大きかったと見られる。

そこで以下では、政府がお盆時期の旅行や帰省に対して、強い自粛要請を出すケースと出さないケースとで、お盆時期の国内旅行消費額にどの程度の差が出るのかについて試算してみた。

観光庁が発表している「旅行・観光消費動向調査」によると、2019年7-9月期の日本人の国内消費旅行額は、6兆6,932億円となった。1年間の国内消費旅行額の30.5%が、この7-9月期に支出されている。さらに、月次の宿泊者数から月次に案分して推計すると、2019年8月の国内消費旅行額は2兆6,585億円となる。

お盆時期に強い自粛要請があれば8月の旅行消費額は約4,450億円減少

6月の宿泊者数の前年同月比-62.0%を、国内消費旅行額の前年比と一致すると見なし、それが7月そして8月も続くと仮定しよう。これは、政府が、お盆時期の旅行や帰省に強い自粛要請を出さないケースに相当する。その際、お盆時期を含む8月の日本人国内消費額は、1兆102億円となる。

他方で、政府がお盆時期の旅行や帰省に強い自粛要請を出すケースでは、8月の国内消費旅行額の前年同月比が、緊急事態宣言下の4月と5月の平均値-78.8%に等しくなると考える。その際には、8月の国内消費旅行額は、5,649億円となる。1兆102億円との差を計算すると、政府がお盆の時期の旅行や帰省に強い自粛要請を出すケースでは、出さないケースと比較して、お盆時期を含む8月の旅行消費額は4,453億円減少する計算となる。

しかし、試算結果のように個人消費が減少するとしても、感染拡大の抑制に必要と判断されるならば、政府はお盆時期の旅行や帰省に強い自粛要請を出すべきだろう。政府は感染拡大抑制と経済活動の再開の両立を図る、としているが、その軸足は感染拡大抑制に置くべきではないか。そもそも、感染拡大の強い懸念がある中では、経済活動の正常化は望めない。

観光関連産業の支援では、「GoToトラベル」事業のような個人の支出を無理に促す施策を打ち出すのではなく、事業者に対して政府が追加の給付金等を支給するのが妥当な段階に未だあるのではないか。

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