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政府の追加経済対策とその課題

2020/12/08

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事業規模は73.6兆円の追加経済対策

8日夜に政府は追加経済対策を固め、閣議決定する予定だ。その詳細はまだ明らかにされていないが、報道されているところによると、事業規模は73.6兆円で、そのうち国費として2020年度第3次補正予算案に20兆円、2021年度予算案に10兆円程度、合計30兆円程度が充てられる。このほか財政投融資や地方負担分などで10兆円を賄い、財政支出規模は計40兆円程度となる。

追加経済対策の構成は、コロナ対策、経済構造の転換、防災・減災など国土強靭化の大きく3つである。事業規模ベースでは、それぞれ約6.0兆円、約51.7兆円、約5.9兆円、財政支出ベースでは、それぞれ約5.9兆円、約18.4兆円、約5.6兆円となる。

政府が国会の議決を経ずに使途を決められる予備費は、計10兆円計上される。2020年度予算で7兆円強残っている予備費については、2兆円ほど削減し約5兆円を残す。さらに2021年度分に新たに5兆円を計上する。

それ以外には、地方自治体が営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金などに使える地方創生臨時交付金を1.5兆円追加する。官民のデジタル化を促進する関連費用として1兆円規模を充てる。また、脱炭素化に向け、研究開発に投資する企業を支援する2兆円の基金を創設する。

追加経済対策の3つの問題点

今回の経済対策には、雇用調整助成金の延長、企業の資金繰り支援など、緊急性があり、妥当なコロナ関連対策も盛り込まれている。他方で、幾つかの問題点も感じられる。

第1は、そもそも3次補正が必要だったのか、という点だ。緊急に対応する必要があるのは、コロナ関連であるが、それは7兆円超残っている予備費で十分賄うことができる範囲内だ。しかし、それでは新政権が打ち出す新たな政策としてアピールできない、という政治的な事情があるのではないか。そこで、2020年度支出分と2021年度支出分を一体化した「15か月予算」としたうえで、本来ならば2021年度予算案に計上すべき項目、例えば、デジタル化、地球温暖化対策、国土強靭化を前倒しで盛り込み、規模を大きくして追加経済対策に仕上げた感もある。そこそも、3次補正予算が成立するのは早くて来年2月と年度末近くまでずれ込むことから、「15か月予算」とする意味は薄いのではないか(コラム「規模ありきの3次補正予算は本当に必要なのか」、2020年12月2日)。

第2に、これと関連するが、追加経済対策に前倒しで計上することで、2021年度予算の予算規模や新規国債発行額を小さく抑えることが可能となる。当初予算と比較して、補正予算では国会や国民のチェックは甘くなりがちであり、補正予算で予算規模や国債発行額を膨らませることが、既に常態化している。これは、予算制度に対する信頼性を損ねるものだろう。

第3に、デジタル化、地球温暖化対策で相当規模の基金の創設が計上される。基金は使途や執行時期について機動性、柔軟性が確保できるという利点はある一方、国会や国民のチェック機能が十分に効きにくく、無駄に使われやすいという問題点がある。コロナ対策でこれに対応するのが、政府の裁量で支出できる巨額の予備費である。2次補正で10兆円計上した予備費の大部分が使われなかったことを踏まえると、2020年度分、2021年度分の合計で10兆円計上するのは過大なのではないか。

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