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3月FOMCのMinutes-Broad-based and inclusive

2021/04/08

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はじめに

FRBの3月FOMCは、景気拡大の加速を歓迎する一方、物価上昇は一時的要因による面が大きいとの見方を確認した。また、金融市場については米国債を含めて目立ったストレスはなく、緩和的な金融環境が幅広く維持されていると評価した。

経済情勢の評価

FOMCメンバーは、Covid-19感染数の抑制やワクチン接種の進展、追加経済対策によって、経済活動が一時の停滞を脱して拡大を加速している点を歓迎した。

このうち消費支出が顕著に拡大している点を確認し、サービス支出の回復や高水準の貯蓄によるpent-up demandへの期待を示したほか、低金利下で住宅販売も堅調であると指摘した。

設備投資も拡大し、資本財受注等の先行指標も堅調と評価した。一部の地区では商業不動産や娯楽、旅行、宿泊等の部門の弱さも指摘されたが、他の地区では回復の兆しも指摘された。さらに、追加経済対策による中小企業の状況改善への期待も示された。

この間、労働市場の改善も評価した一方、Covid-19前に比べて950万人の雇用が喪失しており、人種や業種の面で特定の領域にストレスが残存している点も確認した。今後も、ワクチン接種の進捗や金融・財政政策によって労働市場の改善が続くとした一方で、FOMCの「幅広く包括的な」最大雇用の目標からは距離がある点も確認した。

この点に関して、数名(some)のメンバーは、健康上の懸念や子弟の養育のために労働参加率が低下している点を指摘したほか、別の数名(several)のメンバーは、景気回復や技術革新の下での労働力の移動如何が雇用回復に影響すると指摘した。

その上で、今後の景気動向が変異種を含めてCovid-19の展開に引続き大きく依存し、不確実性が高い点を確認した。また、数名(a few)のメンバーは商業不動産の動向や住宅貸付の返済猶予の終了に伴う下方リスクを指摘した一方、数名(some)のメンバーは追加経済政策やpent-up demand、ワクチン接種等の効果が予想以上に大きくなる可能性を指摘した。

物価情勢の評価

FOMCメンバーは、昨年春の物価下落の影響が剥落することで、今後はインフレ率が加速するとの見方を示したほか、ほとんどの(most)のメンバーは、経済活動の再開に伴う一部の財の供給制約に伴う物価上昇圧力を指摘した。

もっとも、こうした一時的要因が減衰するに伴い、来年にはインフレ率が減速し、その後は総需要の回復や金融・財政政策の効果によって、目標達成に即した動きになるとの見方を示した。この間、インフレ期待については市場ベースでは改善し、サーベイベースでは安定していると評価し、前者は以前の低下の修正であると評価した。

なお、賃金に関しては、執行部説明の中で、平均時給や労働報酬の伸びが顕著に加速しているのは、低賃金労働が喪失したことによる面が大きいとの指摘がみられ、雇用コスト指数やADPデータによる推計(各々前年比で2.6%と3.2%の伸び)の方が実態に即していると評価した。

その上で、FOMCメンバーは、今後の物価のリスクは上下に概ねバランスしていると評価し、景気回復に伴う供給制約と、以前のような低インフレ構造の復活の双方の要因が指摘された。

金融環境の評価

FOMCメンバーは、金融環境が引続き緩和的である点を確認するとともに、米国債金利の上昇は、景気見通しの好転、インフレ期待の若干の上昇、米国債発行の増加見通しといった要因によると整理した。執行部も、中長期金利の上昇の大半は実質金利の上昇によると説明した。

その上で、FOMCメンバーは、米国債市場の不安定化や金利の継続的な上昇は、FOMCの政策目標の達成を阻害すると指摘したほか、中小企業の金融環境は厳しい点も確認した。また、2名(a couple of)のメンバーは、緩和的な金融環境が過度なリスクテイクや金融不均衡の蓄積に繋がるとの懸念を示した。

この間、執行部は、低金利と株価上昇によって事業法人の金融環境は緩和的に維持され、借換えを中心に社債発行が高水準を維持しているほか、IPOとSPACによる新株発行も極めて高い水準にあると説明した。一方、返済の進捗によって銀行貸出残高が減少したほか、中小企業の資金需要も低調であるとした。また、 CMBSのスプレッドはタイトながら、その発行や銀行の商業不動産貸出は低調であると説明した。

このほか、住宅ローンは幾分タイト化したが金利は依然として低く、消費者ローンも含めて、信用スコアの良好な借り手には緩和的だが、そうでない借り手には厳しい状況が続いているとした。

金融政策の判断

FOMCメンバーは、米国経済は顕著に回復しているが、政策目標の達成にはなお距離があるとして、現在の金融緩和の維持が適当との判断を全会一致で支持した。

また、政策金利と資産買入れに関するフォワードガイダンスの有効性を確認し、「outcome-base」のフォワードガイダンスは経済指標の更新や経済見通しの見直しに左右される面が少ないとのメリットを評価した。併せて、こうしたスタンスを対外的に伝えることの重要性も確認した。

さらに、昨年春以降の資産買入れが金融環境の緩和に大きく寄与している点を確認した一方で、政策目標の達成に向けて「さらに顕著に前進(substantial further progress)」するには幾分の時間(some time)を要することや、それまでは少なくとも現状のペースでの資産買入れを続ける点を確認した。

加えて、多くの(a number of)のメンバーは、資産買入れペースの見直しを行いうるほど政策目標に向けて前進する十分以前に、そうした前進に関する評価を対外的に明確に伝えることの重要性を確認した。

なお、3月FOMCはリバースレポの取引先当りの落札上限額を大きく引き上げる(300億ドル→800億ドル)ことを決定した。財政支出の進捗によって政府預金(TGA)が減少する一方、金融機関当座預金へ資金シフトが生じつつあるほか、連邦債務上限への対応によりTB発行が減少しているため、短期金利に下方圧力が生じ、目標範囲に調節することが困難化したためである。

執筆者情報

  • 井上 哲也

    金融イノベーション研究部

    主席研究員

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