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近づく全国市場での温室効果ガス排出権取引

2021/05/26

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中国では、全国統一の温室効果ガス排出権(排出量)取引市場での取引開始に向けた準備が着々と進んでおり、予定通り今年6月末頃に正式に取引が始まると見られる。

中国における温室効果ガス排出権取引所の経緯を見ると、2011年に北京、天津、上海、重慶、深圳、湖北、広東の5市2省の計7ヵ所における地方取引所の試行が承認された。その後、13年から14年に各地で取引が開始され、現在に至っている。21年3月までに20産業あまり、3000社近い重点排出企業がカバーされ、累計取引量は4.4億トン(CO2換算)、同取引額は104.7億元に上っている(注1)。

全国統一の排出権取引市場については、14年に国家発展改革委員会(発改委)が「温室効果ガス排出権取引管理暫定弁法」を発表し、排出権の割当管理、取引、検査等の枠組みを定めた。また、16年に発改委は、全国排出権取引市場は第一段階として、石油化学、化学、建材、鉄鋼、非鉄金属、製紙、電力、航空等を重点産業とすることを含む通知を発表した。さらに、発改委は17年に「全国温室効果ガス排出権取引市場の構築案(発電産業)」を発表した。同案は、まず、上記8産業のうち電力産業(発電)に関して全国統一の温室効果ガス排出権取引の体系を立ち上げ、割当の現物取引を行い、その後、対象となる業界、取引方法・商品を増やす方向を示した。

そして、20年12月に生態環境省が「温室効果ガス排出権取引管理弁法(試行)」を発表した(21年2月1日実施)。全国温室効果ガス排出権取引にかかわる排出権の割当、登記、取引、決算、報告、検査、監督管理について定めている。温室効果ガスの重点排出企業のリストには、(全国温室効果ガス排出権市場がカバーする産業で)年間の温室効果ガスの排出量が2.6万トン(CO2換算)に達する企業が入る。また、排出権の割当は、当初は、無償を主として、その後、適時に有償割当を導入することになっている。

また、生態環境省は同じく12月に、排出権の割当の総量設定・分配の実施案と2019-20年の排出権取引の割当管理に含まれる重点排出企業のリストも発表した。リストは具体的には2225社の電力企業である。さらに、21年3月30日、生態環境省は、「温室効果ガス排出権取引管理暫定条例(草案修正稿)」についてパブリックコメントを募集した(募集は4月30日まで)(注2)。

こうした中で5月中旬、生態環境省は、全国温室効果ガス排出権の登記管理規則(試行)、取引管理規則(試行)、決算管理規則(試行)を発表した(14日付)。これは上記弁法(試行)を受けた具体的な規則である。取引の価格が、CO2換算排出量の1トンあたりの価格になることや、売買の最小変動量が1トンで、最小の価格変動が0.01元であることなどの内容が示された(取引管理規則)。また、全国温室効果ガス排出権登記機関と全国温室効果ガス排出権取引機関が設立されるまでの間は、上海環境エネルギー取引所が取引システム、湖北温室効果ガス排出権取引センターが登録登記システムで口座開設や運営等の具体的な作業を行う(発表の際の公告)。

このように関連規則等が整いつつあり、21年6月末前後に正式に全国温室効果ガス排出権取引市場での取引が開始すると思われる。また、報道によれば、これらの動きと並行して、電力以外の産業、具体的には建材産業を市場の範囲に含める方向で生態環境省が動いており、今後、市場が拡大していくことが予想される。

(注1)生態環境省気候変化対応司李高司長。各種報道による。
(注2)なお、同条例によれば、条例施行後、新たな地方の排出権取引市場は作られず、既存の市場は、徐々に全国温室効果ガス排出権取引市場に含まれることになっている。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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