緊急事態宣言延長の経済効果と懸念される企業破綻・失業の増加
宣言延長で2か月間の個人消費は5.8兆円減少
政府は、2月7日が期限となっている緊急事態宣言を更に1か月延長する方針を固めた。2月2日中に正式に決定される見込みだ。
現在の緊急事態宣言は1月8日に首都圏4都県を対象に始められ、13日には7府県が追加されて合計11都府県が対象となった。11都府県で1か月続けられた緊急事態宣言で失われた個人消費は、2.3兆円(1年間のGDPの0.40%)と試算される。
緊急事態宣言は、感染拡大に歯止めが掛かってきた栃木県を除いた、10都府県で1か月間延長される。その結果、個人消費の減少分は、2か月間の合計で5.8兆円に達する計算だ。これは、1年間の名目GDPの1.0%に相当する規模だ。それによって1-3月期の実質GDP成長率は年率で15.7%程度押し下げられる結果、1-3月期の実質GDP成長率は再びマイナスとなる可能性が高まる。
また、5.8兆円の個人消費が失われることで、失業者は22.9万人増加し、失業率は0.3%上昇する計算となる。
「まん延防止等重点措置」で事実上の緊急事態宣言はさらに延長も
まもなく成立するインフルエンザ特措法改正には、「まん延防止等重点措置」が盛り込まれる。これは、緊急事態宣言が発令されていない状況においても、それに比較的近い、私権制限を含む規制措置をとることができるようにする規定だ。緊急事態宣言を出す前の段階でも、緊急事態宣言時と同様に知事が事業者に対して時短営業や休業を命令できるようにし、違反した場合には罰則として過料を科す。
これは、緊急事態宣言を出すことを避けるためのいわば予防的措置、と説明されている。しかし実際には、緊急事態宣言解除後にさらに感染抑制を進めるためにも利用されそうだ。
現在の緊急事態宣言は感染拡大のリスクが最も高いステージ4を脱し、ステージ3に移行させる目的で発令されたものだが、西村担当大臣は、「基本的にはステージ3相当での適用を想定している。他方ステージ2のレベルでも、ある地域が急速に拡大し、都道府県内に広がるおそれがある場合にはありえる」と説明している。ステージ2まで低下しても、「まん延防止等重点措置」が適用される可能性があるのだ。
3月7日までの合計2か月の緊急事態宣言後も、事実上、緊急事態宣言に近い「まん延防止等重点措置」がさらに続く可能性がある。その場合、個人消費に与える打撃は、昨年春の緊急事態宣言を上回る可能性が高まるだろう。
懸念される企業の破綻増加と失業増加
コロナショックで売り上げが落ちる中でも、今のところ企業の倒産件数は低位で推移し、また失業者の急増も避けられている。多くの企業がその事業と雇用を維持してきたのは、政府による積極的な企業支援の効果によるものだけではない。「感染拡大が比較的短期間のうちに終息すれば、売り上げも元も戻る」と期待し、耐えてきたからでもある。
ところが、今回緊急事態宣言が再発令され、さらに「まん延防止等重点措置」のもとで緊急事態宣言に近い状況が昨年春以上に長期化すれば、そうした期待は失望へと変わり、いよいよ廃業を決断する企業が顕著に増えてくるだろう。
この点を踏まえると、政府には、企業・雇用を支援するセーフティーネットを現状以上に強化することが求められる。政府は時短を要請する飲食業に協力金を支払うことに加えて、その影響が及ぶ飲食業の取引先にも給付金を支給するが、その金額は小さい。飲・食料品製造業や農業など飲食業の取引先で破綻が増加し、それが雇用情勢の悪化につながってくることも懸念される。
政府の支援は、飲食業とその取引先だけでなく、もっと幅広く、全業種を対象としたより手厚いものとすべきではないか。
他方で、経済への悪影響を警戒して、拙速に緊急事態宣言、あるいはそれに類する規制措置を解除することにも大きなリスクがある。それが感染の顕著な再拡大につながる場合、4-6月期には3回目の緊急事態宣言の発令など、厳しい規制措置を再度打ち出さざるを得なくなるだろう。その際には、1-3月期に続いて4-6月期も小幅マイナス成長となるシナリオも、現実味を帯びてくる。そのもとでは、企業の破綻はより増加してしまうだろう。