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米オンライン証券のビジネスモデルPFOFが改めて注目を集める

2021/02/09

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議会でもPFOFが取り上げられる

イエレン財務長官の呼びかけで米国規制当局トップらが2月4日に会合を開き、最近のゲームストップ株などをはじめとする市場ボラティリティ(変動性)について協議した。ボラティリティが高く取引量が多かった間も、米国の金融インフラは持ち堪えた、との結論が得られたという。その上で、米証券取引委員会(SEC)の今後の調査に期待することで合意したという。

今回の騒動では、個人株式投資家が結託して株価操作的な行動を起こしたことだけでなく、ロビンフッドなどオンライン証券のビジネスモデルの妥当性にも改めて注目が集まっている(コラム「米国金融市場の構造問題を次々に浮き彫りにする個人投資家騒動」、2021年2月3日)。その一つが、PFOF(ペイメント・フォー・オーダー・フロー:payment for order flow)という仕組みだ。下院金融サービス委員会が2月18日に開くゲームストップ騒動に関する公聴会でも、このPFOFが取り上げられる可能性が高いようだ。

PFOFは、証券会社が顧客からの注文を機関投資家であるHFT(高速・高頻度取引)業者などのマーケットメーカー(値付け業者)に回し、それと交換にリベート(報酬)を受取る仕組みである。HFT業者がリベートを払ってでも個人投資家の注文という情報を欲しがるのは、そのビッグデータをAIで解析することを通じて、個人投資家の売買動向を予測するなど、自らのアルゴリズム取引の精度を高めることができることが一つの理由、と見られる。

JMPセキュリティーズが各社の提出資料を分析したところでは、昨年、チャールズ・シュワブやTDアメリトレード、ロビンフッド・マーケッツ、Eトレードなどの証券会社が株式・オプションの売買注文を第三者に回すことで得た収入は26億ドルに達したという。そして、最も支払額が大きかったのはシタデル・セキュリティーズやサスケハナ・インターナショナル・グループ、バーチュ・ファイナンシャルなどHFT業者だ(注1)。

しかし、この仕組みのもとで、機関投資家のHFT業者が個人投資家の注文情報を使って利益を上げ、個人投資家が不利になっているのではないかとの見方は、従来からなされてきた。

SECは1990年代以降、PFOFを何度か見直してきた。証券会社が売買注文をどのように執行するか、またその収入源について、情報開示を義務づけてきた。他方で、この慣行自体は容認してきたのである(注2)。PFOFは適法である。

ロビンフッド自らもビジネスモデルの見直しを迫られる

昨年、SECはロビンフッド証券の調査を行った。投資の素人にリスクの高い投資を認めていることを投資家保護の観点から問題であるとの考えに加えて、このPFOFに関する情報を過去に開示せずに顧客を欺き、取引執行の質を過大に宣伝した疑いがあるとした。昨年12月に、ロビンフッドは6,500万ドルの制裁金を支払うことでSECと和解した。ただし、ロビンフッドは不正行為を認めていない。

コロナショックを受けて、在宅を強いられた多くの投資初心者の若者が、空いた時間を株式投資に傾け、ゲーム感覚で株式取引を行うようになった。その中で、ロビンフッドは顧客を急増させていったのである。株式取引手数料は無料であったが、顧客の注文が増える分、PFOFという仕組みを通じて利益を上げることができた。

しかし、顧客の急増と彼らを含めた個人投資家による株式市場のボラティリティ上昇は、ロビンフッドにとっても大きな問題を生んでしまったのである。株式市場のボラティリティ上昇を受けて、清算機関は今回、ロビンフッドに求める保証金を一気に10倍に引き上げたという。資金不足に直面したロビンフッドは、ヘッジファンドから増資の形で支援を受けざるを得なくなったのである。このように、個人顧客の急増により、ロビンフッドはより多くの資本と現金を確保することを強いられた。その結果、ロビンフッドの収益は圧迫されている。

議会では、ロビンフッドとそのビジネスモデルを問題視する機運が高まっているが、顧客の急増を受けて、ロビンフッド自らがそのビジネスモデルを見直す必要に迫れているのである。

(注1)"GameStop Mania Drives Scrutiny of Payments to Online Brokers", Wall Street Journal, February 5, 2021
(注2)"Free Trading’s Costs Come Into Focus", Wall Street Journal, February 4, 2021

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