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緊急事態宣言再延長か、まん延防止措置に移行か

2021/03/15

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緊急事態宣言解除でも飲食業への時短要請は続く

首都圏の1都3県に発令されている緊急事態宣言は、3月21日に期限を迎える。同地域での新規感染者数は、下げ止まりからやや増加の兆しを見せている。しかし、病床ひっ迫の緩和を理由に、緊急事態宣言が解除される可能性もあるだろう。

ただしその場合でも、規制措置は残される可能性が高い。その規制措置の中核となるのが、飲食店への時短要請だろう。その場合、緊急事態宣言が解除されれば時短要請は法的根拠を失う。しかし、先月の特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正で創設された「まん延防止等重点措置(略称まんぼう)」を発令すれば、政府による飲食店への時短要請は法的根拠を持つ。さらに、飲食店が正当な理由なく時短要請に応じない場合には、知事が時短を命令することができる。また、命令に違反した場合には、過料を科すことができるのである。

このように、まん延防止等重点措置は、緊急事態宣言と比べてその実効性にほとんど差がない。政府は、緊急事態宣言を延長することの社会的影響を踏まえて再延長を実施しない場合でも、同様の効果が期待できるまん延防止等重点措置に変更する、あるいは緊急事態宣言終了後に多少の時間を置いたうえで、まん延防止等重点措置を発令する可能性は、十分に考えられるところだ。これは、まん延防止等重点措置に名を変えた緊急事態宣言といって良いかもしれない。

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置との違いは過料の金額

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置との違いを、簡単に確認してみよう。緊急事態宣言は、政府が都道府県単位で発令する。一方、重点措置は、政府が都道府県単位で発令した後、対象となった都道府県の知事が、市区町村など特定の地域を限定することができる。飲食店など事業者が時短の命令に応じない場合、緊急事態宣言のもとでは30万円以下の過料(行政上の軽い禁令を犯した者に科される金銭罰)が科され、重点措置のもとでは20万円以下の過料が科される。

また、政府の運用方針については、緊急事態宣言は感染状況が最も深刻な「ステージ4」を脱する目的で発令されるのに対して、重点措置は、「ステージ3」での発令が想定されている。ただし、感染が局地的に急速に広がっている場合は、「ステージ2」での適用もありえる、と政府は説明している。

規制の程度に注目する場合、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置との違いは、主に過料の金額の違いでしかない。緊急事態宣言を延長する場合でも、あるいは、まん延防止等重点措置に移行する場合でも、感染抑制に有効な策が打ち出されていない、と政府は批判を浴びることになるだろう。

2週間のまん延防止措置導入で消費は4,900億円減少

以下では、緊急事態宣言が2週間延長される場合、まん延防止等重点措置が2週間発令される場合、まん延防止等重点措置が1か月発令される場合、の3つのケースについて、それぞれ追加の経済効果を試算した。まん延防止等重点措置の経済効果(個人消費削減効果)については、過料の金額が緊急事態宣言の3分の2であることを踏まえ、その規制効果が3分の2程度になると想定した(図表)。

1月8日から3月21日までの第2回緊急事態宣言が個人消費を減少させる効果は、合計で6.3兆円と推定される。3月22日から緊急事態宣言がさらに2週間延長される場合の追加の個人消費減少は7,400億円、緊急事態宣言に代わって2週間のまん延防止等重点措置が導入される場合には、個人消費減少は4,900億円、まん延防止等重点措置が1か月間の場合には9,900億円の減少となる。

このように規制措置が長期化する場合には、政府は企業と雇用の支援を一層強化することが求められる。飲食業の時短要請とそれに対する協力金の支援という現在の支援の枠組みでは十分ではないだろう。飲食業の時短は飲食業以外の事業にも幅広く悪影響を与えるためだ。また、売上規模に関わらず一時金の支給という制度も問題だ。

3月22日以降も政府は飲食業の時短要請など、規制措置を続けるのであれば、業種を問わずに売り上げの減少分を補填する持続化給付金制度を、再び企業支援策の中核に据えることを検討すべきではないか。

図表 第2回緊急事態宣言・まん延防止措置の経済効果推計

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