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東京に4回目の緊急事態宣言発令:1兆円の経済損失で東京五輪の経済効果の6割を相殺

2021/07/08

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東京五輪は緊急事態宣言下での開催

政府は、東京都に4回目の緊急事態宣言を発令する方針を固めた。8日に基本的対処方針分科会に諮問し、了承の後に政府の対策本部で決定する。東京都は6月20日で3回目の緊急事態宣言を解除し、7月11日を期限とするまん延防止等重点措置に移行していた。

東京都の4回目の緊急事態宣言は、7月12日から8月22日までの42日間となる見通しだ。7月12日に緊急事態宣言の期限を迎える沖縄県でも、宣言が同日まで延長される。

他方、11日にまん延防止等重点措置が期限を迎える他の都道府県について、埼玉、千葉、神奈川、大阪では同じく8月22日まで延長される。北海道、愛知、京都、兵庫、福岡については解除される方向だ。

東京五輪開催中に東京都に対して緊急事態宣言が発令されることで、大会は無観客で行われる可能性が高まっている(コラム「まん延防止措置延長の追加経済損失と東京五輪観客制限見直し・無観客開催による経済効果減少の試算」、2021年7月7日)。

4回目の緊急事態宣言による経済損失は1兆円

東京都に発令される4回目の緊急事態宣言による経済損失は、9,820億円と推定される。これは年間GDPの0.18%に相当し、失業者を3.9万人増加させる計算だ(図表1)。

他方、沖縄県での緊急事態宣言による経済損失は450億円となる。両者を合計した経済損失は1兆260億円と1兆円を超える。これは、年間GDPの0.19%に相当し、失業者を4.1万人増加させる計算だ。

(図表1)第4回緊急事態宣言の経済損失

第4回緊急事態宣言で東京五輪開催の経済効果の6割が失われる

第4回の緊急事態宣言を受けて、東京五輪は無観客での開催となる可能性が高まっている。大会開催による経済(GDP)へのプラス効果は、観客をすべて受け入れる場合で1兆8,108億円と試算される(コラム「まん延防止措置延長の追加経済損失と東京五輪観客制限見直し・無観客開催による経済効果減少の試算」、2021年7月7日)。無観客開催となると、チケット購入がなくなり、また関連する消費支出が減少することで経済効果は1,468億円分減少し、1兆6,640億円となる計算だ。

時期が重なる第4回の緊急事態宣言によって、東京五輪無観客開催の経済効果の約62%と、半分以上が失われる計算となる。今後宣言がさらに延長される、あるいは対象区域が拡大されれば、経済損失が東京五輪無観客開催の経済効果を上回る可能性もあるだろう。

それでも、第4回の緊急事態宣言は感染リスクの抑制には必要な措置であり、無観客開催とともに、東京五輪開催時の感染拡大のリスクを軽減する効果が一定程度期待される。

間隔が加速的に縮小する緊急事態宣言

過去の緊急事態宣言を振り返ると、解除から再発令までの期間が加速的に短くなっていることが分かる(図表2)。2回目の緊急事態宣言発令は、1回目が解除されてから7か月半後のことであったが、3回目では1か月強、4回目ではわずか3週間である。

このことは、緊急事態宣言の新規感染抑制効果が薄れていることを意味する。足もとでは、変異ウイルスの影響もあるだろうが、それ以上に宣言が個人の自粛行動に与える影響力が低下している可能性が高い。

ワクチン接種で先行した英国やイスラエルでも、足元で新規感染の拡大が再び顕著になっていることを踏まえても、ワクチン接種の拡大だけで感染抑制ができると考えるのは、少なくとも当面のところは楽観的過ぎるだろう。

4回目の緊急事態宣言発令に際しては、個人の行動を制限するより強い措置の導入も検討されるべきではないか。

(図表2)緊急事態宣言の経済損失比較

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