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FRBは11月にもテーパリング開始へ。注目は利上げ時期に

2021/09/24

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テーパリングは来年中頃に終える見通し

9月22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金融政策の現状維持が決定されたが、次回11月2・3日のFOMCでテーパリング(資産買い入れの段階的縮小)を実施する可能性が強く示唆された。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、物価と雇用で「さらなる著しい進展(substantial further progress)」が見られることをテーパリング開始の条件としてきたが、物価については既に条件は満たされ、残りは雇用である。この点についてパウエルFRB議長は、「雇用は目標の50~60%程度まで到達したといえる」、「私自身は目標達成間近だと見ている」、「非常に力強い雇用統計を確認する必要はないと思うが、良い雇用統計を期待している」等と説明している。

10月初めに発表される9月分雇用統計が大幅に下振れない限り、11月の次回FOMCでテーパリングが開始される可能性は高い。

さらにパウエル議長は、「参加者は来年の中ごろに終える緩やかなテーパリングが適切であろうとの見方を示した」と説明している。2013年12月に始められた前回テーパリングでは、テーパリング終了までに10か月を要した。これと比べると、今回はより迅速にテーパリングを進めることが検討されているようだ。

政策金利引き上げ時期の見通しは2022年に前倒し

今回のFOMCで最も注目されたのが、先行きの政策金利引き上げの見通しである。テーパリングについての金融市場の不確実性はかなり低下し、金融市場を攪乱するリスクは低くなった。

FRBは、資産買い入れ策の政策効果については、リーマンショック後の導入時と比べると重要性がかなり下がったと考えているのではないか。それよりも、短期金利を直接コントロールする伝統的な政策金利政策の方が、政策効果についての不確実性は低い。そのため、金融市場に与える影響も、テーパリングよりも政策金利引き上げの方がより大きくなりやすいのである。

今回示されたFOMCメンバーによる経済、物価、政策金利見通しでは、政策金利引き上げの時期が前倒しされた点が注目される。メンバー18人のうち半数の9人が、2022年に1回以上の利上げ、2023年末までに4回以上の利上げを見込んでいる。前回6月の見通しでは、過半数が2023年末までに2回の利上げを見込んでいた。

パウエル議長はテーパリングと利上げは別物であることを再度強調

こうした修正は、足元での成長率見通しの大幅引き下げと整合性を欠くようにも見える。2021年10~12月期の実質GDP成長率の見通し(中央値)は前年同期比+5.9%と前回6月の同+7.0%から大幅に下方修正された。夏以降、感染再拡大で経済活動が鈍り、それに半導体など部品供給不足による自動車生産の削減が重なったことが成長ペースの鈍化をもたらしている。

他方で、FRBが重視する物価指標であるPCE(個人消費支出)物価指数は、2021年10~12月に前年同期比で+4.2%と前回6月予測の+3.4%から上方修正された。物価上昇率の上振れが予想以上に長引いているためだ。その後、2022年と2023年の予測値は同+2.2%、+2.1%と物価目標近辺が見込まれている。政策金利引き上げの前倒しは、この足元での物価上昇率の上振れを反映したものだ。

ハト派のパウエル議長は政策金利引き上げには慎重であり、この政策金利の見通しには違和感を持っているだろう。パウエル議長は8月のジャクソンホール会合で、年内にテーパリングを実施する可能性を強く示唆する一方、テーパリングと政策金利引き上げとは別物だということを強調した。今回のFOMCでも同様の考えを以下のように述べている。「この先のテーパリングの時期やペースは、政策金利の引き上げの時期に直接的な示唆を与えない。」「政策金利の変更については、それとは異なる、より厳格な一連の評価を経ることになる。」

政策金利引き上げが金融市場に強く意識されるのは2023年か

筆者は、米国の成長率、物価上昇率の見通しと共に、FOMCメンバーの見通しは楽観的過ぎると考えている。財政面でのコロナ対策の効果の剥落、感染問題の長期化、中国経済の減速などが、米国の成長率を下振れさせるのではないか。また、一時的な供給制約による物価上昇率の上振れ傾向は比較的早期に解消される一方で、コロナショックによる需給ギャップの悪化の影響が遅れて顕在化することなどから、物価上昇率は物価目標以下の水準へと下振れていく可能性は相応にあると考えている。そのため、政策金利の引き上げの時期は、FOMCメンバーの見通しよりも後ずれするとみている。

前回の2015年12月の政策金利引き上げは、テーパリング開始から24か月後、テーパリング終了から14か月後だった。これを今回に当てはめると、今年11月にテーパリングが開始されれば、政策金利引き上げは2年後の2023年11月となる計算だ。

コロナショックへのやや過剰な金融政策面での対応は、金融市場の歪みを拡大させたのではないか。それは、今後の金融政策の正常化の過程で金融市場に調整圧力をかけることになるだろう。政策金利引き上げ時には、テーパリングよりもそのリスクは格段に大きくなり、FRBの政策のかじ取りはかなり難しくなる。

ただし、金融市場が政策金利引き上げを強く意識し始め、それが金融市場を攪乱するリスクが高まるのは、来年2022年ではなく2023年に入ってからと考えておきたい。

(参考資料)
FEDERAL RESERVE press release, September 22, 2021
"Summary of Economic Projections", June 16, 2021
「FRB議長22年末には利上げに適した状況に 会見要旨」、2021年9月23日、日本経済新聞電子版

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