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先が見えない中国恒大問題と高まる中国経済減速のリスク

2021/10/12

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デフォルトリスクは恒大以外にも広がる

経営危機に直面している不動産開発大手の中国恒大集団の問題は、不動産業界全体の問題に波及している。恒大は既に9月末からの2回のドル建て社債の利払いを期限内に実施できていない。30日の猶予期間中に支払できなければ、デフォルト(債務不履行)となる。10月11日が期限の利払いも実施されなかった模様だ。さらに、不動産開発大手の花様年控股集団(ファンタジア・ホールディングス・グループ)も、10月4日に満期を迎えた2億600万ドルのドル建て債券を償還できなかった。

ドル建て債を保有する海外投資家にとっては、恒大集団のみならず、中国の不動産会社全体にデフォルトのリスクを感じざるを得なくなっている。ICEバンク・オブ・アメリカ(ICE・BofA)のアジア企業ドル建て債指数に組み込まれている59の中国不動産開発会社のうち24社の社債利回りは、10月8日に20%超になったという。この水準は、デフォルトのリスクを相応に織り込んだ水準だ。

野村ホールディングスは、中国の不動産開発業界の債務残高は、5兆ドル(564兆円)に達していると推計している。2016年末以降ほぼ倍増している。この水準は、実に日本の名目GDPを上回る。

恒大集団は債務を急増させる無理な経営でビジネスを急拡大させてきたことが、足元での経営危機に繋がっており、全ての不動産開発会社が同様の事態に直面している訳ではないだろう。

厳しい経営環境は全ての不動産開発業者に共通

中国当局は昨年、不動産開発業者を対象に回避すべきレバレッジ比率を定めた新たな規制、「三道紅線(3本のレッドライン)」を導入した。この新規制には、住宅ローンと不動産業者向け融資を銀行の総融資残高の40%までに抑制することや、恒大集団のような開発業者に対して、新規借り入れの条件として既存債務の返済を義務付けることが含まれた。そこには、リスクの高い経営で高い収益を上げる不動産開発業者の活動を抑えるとともに、住宅価格の上昇を抑制する狙いがあった。ともに、「共同富裕」の理念と深く関わるものだ。

フィナンシャルタイムズ紙の調査によれば、30の不動産開発業者のうち、レッドラインの3つともに反しているのは1社、2つに反しているのは2社、1つに反しているのは11社である。他方、一つも反していないのは16社と約半数である。全ての不動産開発業者が過剰債務、流動性危機に陥っている訳ではないだろう。

しかし、厳しい経営環境は共通している。不動産サービス会社、易居中国企業集団の調査部門(CRIC)によれば、中国の不動産開発会社のうち上位100社の9月の売上高は、前年同月比で36%減少した。このうち恒大、碧桂園(カントリー・ガーデン)、万科企業(チャイナ・バンカ)などを含む上位10社の売上高については、前年同月比44%減とより大きな幅の下落となったという。

見直される「事前販売」などのビジネス慣行

恒大問題を受けて、個人は住宅購入を一気に控えるようになっている。代金を払っても、住宅が手に入らないリスクを感じているためだ。そこで不動産開発会社は販売価格を大きく引き下げるようになった。これが、不動産開発会社が保有する不動産物件の価格を自ら下げ、資産デフレ的な状況がバランスシートを毀損する状況に繋がっている。

集合住宅が完成する前に不動産開発会社が個人から代金を得る「事前販売」が、一般的な慣行となっていた。これによって、開発業者は事実上、何百万もの世帯から金利なしで資金を借り入れることが可能となる。この慣行を使って、不動産開発会社は債務を拡大させ、事業拡大に繋げたが、開発業者が倒産すれば、購入者は完成物件の引き渡しを受けられない可能性が出てくる。恒大集団の問題を受けた、この「事前販売」の慣行は大きく見直されることになるだろう。中国の不動産開発会社のビジネスモデルは、大きな変革を迫られそうだ。

中国経済の減速は避けられない

不動産部門が中国のGDPに占める割合は2020年には約7.3%である。ケネス・S・ロゴフ氏とYuanchen Yang氏は2020年に発表した論文で、関連業界を含めた広義の不動産業は中国の経済活動の約29%を占めており、他の多くの国での割合をはるかに上回っている、との推測を示している。

中国政府は、恒大集団の経営危機問題が、サプライヤーや個人に大きな打撃を与えないようにしていくだろうが、問題の発端となった不動産開発会社の債務規制を緩めることはないだろう。

習近平国家主席は、来年の共産党大会までに、社会を不安定化する隠れたリスクの排除を目指している。その一環で、不動産業界に典型的にみられる債務と投機を原動力とするモデルを改革することを強く望んでいるのである。そうした姿勢のもとで、不動産業界の不振は長期化し、それが中国経済減速を引き起こす可能性はかなり高いとみるべきだ。

(参考資料)
“Beyond Evergrande, China’s Property Market Faces a $5 Trillion Reckoning”, Wall Street Journal, October 11, 2021

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