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12月FOMCのMinutes-sooner or faster

2022/01/06

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はじめに

12月FOMCは資産買入れのテーパリングを加速することを決定したが、利上げ開始の早期化を議論したほか、その後の資産規模縮小に関する検討も開始していたことが明らかになった。

経済情勢の評価

FOMCメンバーは、第4四半期に加速した景気拡大が2022年も続くとの見方を示し、家計資産の健全さ、企業の在庫積増し需要、個人向けサービスの需要回復等を要因に挙げた。今後も、労働参加率と供給制約に要する時間に不透明性が高いほか、コロナ感染の展開が下方リスクを持つ点を確認した。

このうち消費は、所得と純資産の増加や高水準の貯蓄に支えられて力強く拡大していると評価した一方、企業の供給制約は想定以上に拡大し、2022年中も残るとの見方を示した。同時に、広範な労働力不足が生じ、賃金やボーナスの引上げ、労働条件の柔軟化等がみられるとの指摘もあった。

雇用拡大も継続を確認した一方、人手不足による在宅介護ニーズやコロナ感染の不安、貯蓄の増加等を背景に、労働参加率の改善に時間を要するとの見方が大勢を占め、財政支援や貯蓄の減少、労働供給の時間的ラグ等の要因による回復を見込む向きは少数(a couple of)に止まった。

物価情勢の評価

FOMCメンバーは高インフレが予想以上に長期化し拡大したと評価し、刈込み平均等のインフレ基調の指標も高騰した点を指摘した。背景としては、住居費の上昇、労働力不足による広範な賃金上昇、グローバルな供給制約の長期化を挙げたほか、企業における価格転嫁への自信も示唆された。

また、数名(some)のメンバーが、高インフレを映じて家計の中長期インフレ期待が目標を超えて上昇するリスクを指摘したほか、2名(a couple of)が賃金交渉での生活費上昇の考慮がインフレ期待に影響する可能性に言及した。これに対し、他の数名(a few)のメンバーは市場ベースのインフレ期待の安定を指摘した。

今後もほとんど(most)のメンバーが上方リスクを挙げた。その上で、数名(several)のメンバーは、コロナ感染の収束後には、イノベーションや人口動態、自然利子率の低下等、構造的な低インフレ要因が再現するとした一方、別の2名(a couple of)のメンバーは、生産性上昇を上回る賃金上昇が賃金と物価のスパイラルを招くリスクを提示した。

政策判断

12月FOMCは、インフレ圧力の高まりと労働市場の力強い改善を背景に、資産買入れのテーパリングを加速することを決定したが、利上げ開始についても本格的な議論を行った。

利上げのフォワードガイダンスのうち物価は、すべて(all)のメンバーが「平均インフレ目標」が達成済との判断した。雇用も、雇用者数の増加や失業率の顕著な低下、労働参加率の若干の回復といっ指標からみて急速に改善していると評価し、多く(many)のメンバーが、今後は最大雇用に迅速に近づくとの見方を示した。

このため数名(some)のメンバーは、インフレ圧力とインフレ期待が顕著に上昇し、目標と整合的でなくなる可能性が生じている点を考慮し、例えば、物価安定と最大雇用の達成にトレードオフが生じた場合は、最大雇用が完全に達成される以前にも利上げ開始が必要となる可能性を示唆した。

その上でFOMCメンバーは、不透明性の高い環境ではリスクマネジメントに基づく政策変更を原則とすべき点を確認しつつ、景気や雇用、物価に関する各々の見方に基づき、以前の想定に比べて利上げの開始を早期化したり、利上げペースを迅速化したりする必要が生ずる可能性を指摘した。

さらに数名(some)のメンバーは、利上げ開始後に速やかに資産規模の縮小に着手する必要が生ずる可能性を指摘したほか、他の数名(some)もインフレへの対応を示すため、将来の政策が緩和的でない点を示唆すべきと主張した。もっとも、これらのメンバーも金融引締めに慎重な姿勢を維持することは、今後の経済の多様な展開への対応力を備えることに資する点を確認した。

金融政策の正常化戦略

12月FOMCは正常化の戦略に関する検討を開始した。執行部は、利上げと資産規模の運営、双方の手段による効果の波及経路、コミュニケーション等を、海外の事例を含めて説明した。

FOMCメンバーは、十分事前の通告が有用である点を確認しつつ、前回の例は、金融経済の推移に即した柔軟性の重要さも示していると指摘した。また、政策スタンスは主として政策金利の変更で主として調整すべき点も確認し、理由として、経済への影響の不透明性が相対的に少なく、一般市民にとって親和性が高くコミュニケーションが容易である点を挙げた。

一部のメンバーは、資産規模の調整に依存した方がイールドカーブのフラット化を防止しうるとし、弊害が金融仲介に与える影響に懸念を示したが、2名(a couple of)のメンバーは長期ゾーンの利回りは多様な要因に左右されるとの反論を示した。

環境面では、ほとんど(most)のメンバーが経済見通しが前回の正常化開始時に比べて相当強い点を確認した。また、FRBの資産規模が、絶対額でも対GDP比でも前回対比ではるかに大きい点も確認した。一方、保有国債の平均残存年限が相対的に短く、再投資を抑制すれば資産規模が迅速に縮小することも確認した。

数名(several)のメンバーが国債市場の機能の脆弱性が資産規模の縮小に与える影響に懸念を示したが、2名(a couple of)のメンバーはSRFの活用で懸念は抑制しうると反論した。一般的にもFOMCメンバーは、当座預金への付利やO/Nレポを含め、超過準備の下での金利調節は十分機能していると評価した。

その上で、ほとんど全員(all)のメンバーは、利上げ開始から幾分経過した後に資産規模の縮小を開始すべきとの考えを示したが、前回の間隔(約2年)より早期化すべきとしたほか、経済指標如何ではあるが、より迅速化が必要となる可能性も示した。

長期的な資産規模に関しては、銀行の資金需要が変動するだけに不透明である点が確認され、FRBの意図を伝える上で短期金融市場の監視が重要である点やSRFの有用性が示唆された。また、数名(several)のメンバーは、最終的には国債保有に専念すべきとして、MBSの再投資を国債で行うことなどを提言した。

執筆者情報

  • 井上 哲也

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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