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3月FOMCのMinutes-expeditiously

2022/04/07

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はじめに

3月のFOMCでは、ロシアによるウクライナ侵攻がインフレ圧力の強化に繋がるとの懸念が共有された。金融政策については、 50bpを含む利上げを継続する方針が確認されたほか、5月FOMC後から保有資産の削減を開始し、最終的に950億ドル/月のペースまで加速する考えが共有された。

経済情勢の評価

FOMCメンバーは景気と雇用の拡大の継続を確認するとともに、労働需給が多くの部門で逼迫し、離職者や未充足求人が高水準であるとの認識を共有した。

もっとも、既に公表されているSEPが示するように、2022年の実質GDP成長率の見通しは下方修正した。理由としては、年末商戦に向けた在庫投資の反動、財政や金融面からの支援の縮小、ロシアのウクライナ侵攻に伴うインフレ圧力の上昇(実質購買力の低下)や金融環境、消費者マインドへの影響等を挙げた。

先行きに関しても、ウクライナ情勢が企業や家計の支出行動を慎重化する可能性に加えて、海外における金融政策の転換によるも世界的な金融環境のタイト化やエネルギー価格の持続的な上昇などを挙げて、不透明性が高いとの見方を示した。

物価情勢の評価

FOMCメンバーは、需給の不均衡とエネルギー価格の上昇、広範な価格上昇圧力による高水準のインフレの継続を確認した。また、ウクライナ情勢の影響は不透明としつつ、少なくとも短期的にはインフレ圧力の強化につながるとの懸念を示した。

なかでも、数名(some)のメンバーは、インフレの高騰が財から賃借料に代表されるサービスに波及しているほか、教育、衣服、ヘルスケアのように大きな価格上昇を経験しなかった分野にも影響しているとの見方を示した。また、数名(a few)のメンバーは、価格上昇率が4%を超える領域が拡大していると指摘した。

賃金上昇も、低所得層や生産・監督の部門で顕著ながら、より広い所得ないしスキルへの拡大傾向を認識し、多く(many)のメンバーが賃金上昇の継続を予想した。さらに、多く(many)のメンバーは、企業が賃金や投入価格の上昇を、需要の顕著な減少を伴うことなく消費者に転嫁していると指摘した。

ウクライナ情勢については、ロシアとウクライナがエネルギーや食品、工業材料の主要な供給国であることを確認し、世界市場からの遮断が、それらの価格上昇を通じてサプライチェーンの一層の毀損を伴いつつ、川下産業に影を及ぼすとの懸念を示した。その上で、数名(several)のメンバーは、米国とロシアとの金融経済関係は相対的に小さいだけに、ウクライナ情勢の影響は景気の下押しよりインフレの加速が重要との見方を示した。

既に公表されたSEPが示すように、FOMCメンバーはPCEインフレ率の見通しを引き上げたが、先行きのリスクも上方に傾いているとの認識を示し、供給制約、エネルギーや商品の価格高騰、ウクライナ情勢によるこれらの深刻化、中国のコロナ対策としてのロックダウンに伴うサプライチェーンへの影響などを要素として指摘した。

金融政策の運営

FOMCのメンバー全員が、労働市場は極めて強く、インフレ率も目標を大きく超えているとして、金融緩和の解除を開始すべき点に合意したほか、物価安定に向けたコミットメントを示すことが重要として、今後も「正常化」を進めるべきとの判断で一致した。

興味深いことに、多く(many)のメンバーは、インフレの加速リスクと政策金利の低さを踏まえて、3月FOMCでも50bpの利上げを支持しうるとの考えを示した。もっとも、これらのメンバーの多く(a number of)も、ウクライナ情勢による短期的な不透明性の高まりを勘案し、25bpの利上げが適当との判断を示した。

その上で多く(many)のメンバーは、インフレ圧力が高止まりないし強化した場合は、今後は50bpの利上げを1回ないし数回実施することが合理的との考えを示した。同時に、多く(a number of)のメンバーは、これまでのFRBの発信によって長期金利の上昇を含む金融環境が既にタイト化したとの見方を示した。

さらに、政策金利を迅速に中立水準に引き上げることの重要性だけでなく、金融経済情勢によっては、政策金利をよりタイトな水準に引き上げることの合理性も確認した。同時に、政策運営は金融市場や経済の状況を配慮すべき点も併せて確認し、すべて(all)のメンバーが、新たな指標や見通しの推移に対してリスクマネジメントの観点から俊敏(nimble)に対応する方針を確認した。

保有資産の削減

FOMCメンバーは早ければ5月FOMCでの決定後に実践に移すことで合意した。

このうち削減ペースは、すべて(all)のメンバーが前回(2017~19年)より速いペースを支持し、数名(several)は毎月の減少額に上限を設けなくても良いとの考えを示唆した一方、他の数名(some)は市場機能への影響に懸念を示した。結局、毎月の減少額は徐々に増加させ、最終的に950億ドル/月(国債が600億ドル、MBSが350億ドル)とすることで概ね(generally)合意した。

また、ほとんど(most)のメンバーは、米国債の月中の償還が削減目標に不足する場合の対応として、執行部が提案したTBの償還を活用する案に合意した。この点に関しては、数名(several)のメンバーが、TBは市場参加者にとって安全で流動性の高い資産として重視されており、FRBの保有を減少させていくことが適当との考えを示した。

MBSに関しては、金利シナリオを踏まえると期前償還額が削減目標を下回る見込みが強いとした一方、上限額の設定は保有の急減への歯止めとなりうるとの理解を示した。もっとも、数名(some)は、再投資の調整を通じた保有資産の削減では、FRBが大量のMBSを長期に亘り保有し続けるとの懸念を示した。このため、FOMCメンバーも、保有資産の削減が円滑に進捗した後、MBSの市場売却を検討すべきとの考えに概ね(generally)合意した。

最後に、数名(several)のメンバーがreserve需要の不透明性を取り上げ、reserveの最適水準に近付いた時点で、保有資産の削減を減速する方針にFOMCメンバーは概ね(generally)合意した。また、SRFが予期せぬ市場ストレスに対応しうるとの意見と、 SRFはreserveの代替という目的ではないとの意見が示され、結局、保有資産の削減は柔軟に運営する方針で概ね合意した。

執筆者情報

  • 井上 哲也

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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