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FRBの9月FOMCのMinutes-Compelling evidence

2022/10/13

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はじめに

FRBの9月FOMCでは、インフレ圧力の広がりや持続性を確認するとともに、国内景気の底堅さや労働市場の堅調さの下で、物価目標の達成に向けてより強力な引締めの必要性を確認した。

経済情勢の判断

FOMCメンバーは、消費が、労働市場の強さや高水準の貯蓄、資産の健全さ等によって緩やかに拡大しているほか、設備投資も同様に緩やかに拡大している点を確認した。

また、多くのメンバーは、輸送費や調達時間、在庫からみて、供給制約の改善の兆しを指摘したが、数名(several)のメンバーはそうした見方を否定した。また、資金コストの上昇や供給制約、雇用の困難さ等により新規投資が制約されているの指摘もみられた。

雇用は、失業率や未充足求人、離職率、解雇者、雇用者数の増加、名目賃金の上昇といった多様な指標からみて、引き続き非常に強いことを確認した。その上で、数名(some)のメンバーは転職率や雇用増加の減速、労働参加率の上昇を挙げて需給改善の兆しを示唆したが、他の数名(several)のメンバーは、退職者の増加の下で労働参加率の上昇余地は小さいと反論した。

FOMCメンバーも労働需給の不均衡は徐々に改善に向かうとしつつ、雇用の軟化が賃金や物価の上昇圧力の緩和に必要との見方を共有した。そうした軟化は失業率の上昇として顕在化するとの見方が多かった一方、数名(several)のメンバーは主として未充足求人や雇用機会の減少に現れるとしたほか、一部には人手不足の下で企業は雇用の削減を控えるとの見方もあった。

9月FOMCでの実質GDP成長率見通しは下方修正されたが、米国経済はGDP指標が示唆する以上に堅調との見方があった。また、先行きのリスクは下方に傾いているとしたが、理由としては欧州の景気後退、中国経済の減速、ウクライナ戦争の影響など主として海外要因が挙げられた。

物価情勢の判断

FOMCメンバーは、足元のインフレ指標が想定以上に強く、インフレ圧力が広範である点を確認した。軟化したエネルギー価格にも再上昇のリスクを指摘したほか、コアの財価格の上昇を踏まえ、消費パターンの変化の影響が想定より小さい可能性や、供給制約と労働力不足が持続的である可能性も挙げられた。

その上で、当面は、労働市場の強さと賃金上昇圧力、サプライチェーンの障害、サービス価格(特に家賃)上昇の持続性などのために、物価上昇圧力が継続するとの見方を共有した。一方で、中期的には、金融引締め、労働市場や財市場での需給緩和、消費の減速に伴う企業の収益マージンの縮小等によって、今後数年をかけてインフレが減速するとの判断を示した。

この間、長期のインフレ期待は、家計や企業、エコノミストの各々のサーベイや市場指標からみて、十分安定しているとの見方を示し、FRBによる物価目標達成へのコミットメントと強力な政策の効果であると評価した。ただし、数名(several)のメンバーは高インフレの継続によるインフレ期待上昇のリスクを指摘したほか、数名(a few)のメンバーは多くのサーベイ結果が、期待のばらつきの拡大を示唆している点を指摘した。

9月FOMCでのPCEインフレ率見通しは上昇修正されたが、FOM労働需給の逼迫やエネルギー価格の再上昇、サプライチェーンの支障の深刻化、賃金から物価への上昇の波及といった要因を挙げて、リスクは引続き上方に傾いていることが確認された。

政策判断

FOMCメンバーは、75bpの利上げと既往の方針による保有資産削減ペースの加速を全会一致で決定した。今後についても、政策目標の達成には、利上げの継続とその後の引締め的なスタンスの維持が必要との判断を示した。実際、多く(many)のメンバーは、景気減速や需給改善の兆しが見られないことを理由に政策金利の予想パスを上方修正したと説明した。

また、利上げのペースや程度は、経済指標による景気や物価の見通しへの意味合いや見通しのリスクに依存するとの原則を確認した。もっとも、数名(several)のメンバーは、金融経済環境が不透明な下で、景気見通しへの深刻な影響を抑制するため、利上げペースの評価(calibration)が必要と主張した。

その上で、FOMCメンバーは、金融引締めが進む中で、いずれかの時点では景気や物価に対する累積的な効果の評価が必要との考えを確認した一方、多く(many)のメンバーは。政策金利が十分に引締め水準に達した後も、インフレ率が2%目標に収斂する説得的な証拠(compelling evidence)が得られるまでは、その水準での政策金利の維持が必要との考えを示した。

保有資産の削減についても、金融引締めへの移行に寄与している点を評価するとともに、2名(a couple of)のメンバーは、このプロセスが十分に進行した後には、SOMAの保有資産を主として国債とする目標を円滑に達成するため、MBSの市場売却を検討することが適当と指摘した。

FOMCメンバーは、迅速な政策金利の引上げが、2%のインフレ目標を達成し、インフレ期待を物価目標と整合的な水準に維持することへの決意を示す効果を有した点に合意した。具体的には、物価安定へのコミットメントと強力な政策対応が金融環境の明確なタイト化を実現し、イールドカーブ全体での実質金利の大きな上昇等を通じて、総需要の抑制によるインフレ圧力の緩和に寄与したと評価した。

その上で、大多数(most)のメンバーは、金利感応度の高い住宅投資や設備投資は反応しているが、経済活動の大部分は金融環境のタイト化にまだ大きな反応を示していないと評価した。同様にインフレも金融引締めに反応していないと評価するとともに、総需要の減速からはさらに時間的ラグを伴うとの見方を示した。

また、インフレの減速には、労働市場の幾分かの軟化を伴うような潜在成長率以下での経済成長の時期が必要であり、高インフレがインフレ期待の不安定化につながらないよう、適切に引締め的なスタンスに向けて政策を運営する方針を確認した。

多く(many)のFOMCメンバーは、政策の過小対応のリスクが過大対応のリスクを上回るとして、こうした方針がリスクマネジメント上も有用との考えを強調した。その上で、数名(several)のメンバーは引締め的な状況を可能な限り維持すべきと主張した一方、他の数名(several)のメンバーは、政策金利が一旦引締め水準に達すれば、経済活動を必要以上に抑制する下方リスクが生ずるため、リスクは上下双方向に転じると主張した。

執筆者情報

  • 井上 哲也

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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