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国務院常務会議で示された金融政策ツールの利用について

2022/04/08

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国務院常務会議は22年4月6日に、▽困難に陥っている業界(小売、飲食、観光、航空等)の養老保険費納付の段階的な軽減、▽失業保険の保障範囲拡大や失業保険による雇用安定(雇用安定ならば失業保険料還付)に加えて、金融政策ツールを適時に運用することによる実体経済の支援を決定した。
金融政策については、「再貸出」など、多くの金融政策ツールを利用して、量的・構造的な側面から実体経済を支えるとしている。具体的には、「農業支援・小企業支援の再貸出」を増加し「金融包摂小零細貸出支援ツール」を用いて、中小零細企業向けの低コストの融資を推進する。



ここで「再貸出」とは、人民銀行から市中商業銀行への貸出であり(農業支援・小企業支援の再貸出金利は、3か月が1.7%、6か月1.9%、1年2.0%)、商業銀行はその資金をさらに貸し出すものである。なお、21年末の農業支援再貸出残高は4,967億元、小企業支援再貸出残高は1兆2,351億元である(人民銀行「金融政策執行報告」21年各四半期、以下同)。
次に、「農業支援・小企業支援の再貸出」、「金融包摂小零細貸出支援ツール」は、ともにコロナ禍の影響を考慮して20年6月に作られた特別な政策ツール「金融包摂小零細企業信用貸出支援計画」、「金融包摂小零細企業貸出延期の支援ツール」の流れをくむものである
「金融包摂小零細企業信用貸出支援計画」は、小零細企業が貸出を受ける際の担保難を緩和するために、人民銀行が地方銀行の貸出元本の40%にあたる優遇資金を提供する仕組みである(合計4,000億元を用意)。雇用維持を承諾した小零細企業が対象となる。21年末で累計優遇資金提供は3,740億元、小零細企業貸出は1.05兆元に上る。 同計画は21年末に期限を迎え、22年から「農業支援・小企業支援の再貸出」に含まれることになった(4,000億元はロールオーバーして使用可能)。
一方、「金融包摂小零細企業貸出延期の支援ツール」は、人民銀行からの地方銀行等に対する小零細企業向け貸出の延長要請であり、元利返済難を緩和する目的である。企業側が雇用維持を承諾すれば貸出の延長措置が受けられる。人民銀行は延期となった貸出元本の1%をインセンティブとして地方銀行等に与える。21年末時点で、インセンティブ資金は累計217億元に上り、延期元本累計2.17兆元となった。
こちらも21年末で延長期間は終了となり、22年からは「金融包摂小零細貸出支援ツール」となった。元利返済延長は、地方銀行等と企業間での自主協議によるものとなり、人民銀行は22年から23年6月末まで延長する残高増分の1%にあたる資金提供を続ける。



また、常務会議は、金融により消費と投資を後押しする措置を研究し採用するとしており、具体的には、住宅難を解消する保障性住宅向けの金融サービスの改善、重点プロジェクト建設の資金調達の充足、製造業の中長期貸出増加を挙げている。さらに、科学技術イノベーションと養老に対する専門再貸出を作り、人民銀行がそれぞれ貸出元本の60%、100%の再貸出により支援するとしている。
このように、今年も人民銀行は流動性供給において、資金が経済弱者、重点プロジェクトなどに的確に渡ることに注力している。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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