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7月の中央政治局会議と22年下半期の経済政策

2022/08/09

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共産党中央政治局会議が7月28日に開催された。7月の中央政治局会議は例年、下半期の経済政策の方向を定めることから注目される。ここでは主に財政金融政策面を中心にみる。

同会議は、景気(回復)を良いトレンドに戻し、雇用と物価の安定に注力し、経済を合理的区間で運行する、とした。今年の経済成長率目標(5.5%前後)の達成が難しい中で、成長率目標達成ではなく、景気回復傾向の維持と雇用と物価安定を重視していることがわかる。このため、大規模な景気刺激策は打たないと思われる。また、同会議は新型コロナ感染症が発生した場合、即座に防止・抑制するとしていることから、ゼロコロナ政策は継続するとみられる。

財政金融政策

こうした中で、同会議は、マクロ経済政策により積極的に需要を拡大することを強調した。財政金融政策によって社会全体の需要不足を補う。具体的に見ると、財政政策については、地方政府が専項債債務の限度額を用いることが打ち出された。これが残高管理への言及だとすれば、21年末の地方政府専項債務の残高限度額18.2兆元に対して実際の残高は16.7兆元であり、その差の1.5兆元が利用できる。加えて、来年度の専項債発行枠を今年に前倒しして利用することも考えられる。インフラ投資は今年上半期に予算前倒しで実行されてきたが、これらの措置によって下半期の息切れを避けるとみられる。

金融政策については、政策性銀行の新規貸出の増分とインフラ投資基金を利用する。既に、国務院常務会議は6月1日、インフラ建設支援のために、開発性・政策性銀行(注)に8,000億元の貸出限度額を与える仕組みを、6月29日には、開発銀行と農業発展銀行が3,000億元を新型インフラを含む重大プロジェクトの資本金の補充に利用する仕組み(ただし、資本金の50%まで)を発表している。財源は両者とも開発性・政策性銀行による債券発行とみられる。

後者の3,000億元については、地方政府が専項債発行によって資金調達するプロジェクトについてのブリッジファイナンス(専項債発行までのつなぎ融資)にも利用される。また、資本金への投資額に応じて、中央財政が債券の利息を補填する措置もあることから、政策性銀行関連の措置は財政政策と連動した措置と言える。

また、インフラ投資基金は、インフラ分野の公募REITsを指すとみられる。これは、インフラ施設からの収益を返済資金源として資産担保証券(ABS)を発行し、投資家から資金を集めた公募ファンドがそのABSに投資する仕組みであり、21年6月から試行されている比較的新しい手法である。

リスク解消

景気低迷の一因となっている不動産市場について、同会議は、不動産市場を安定させるとした一方で、住宅は住むもので投機するものではないとの位置づけを堅持した。各都市によって様々な施策を採ることで、住宅への実需を満たす方針である。また、地方政府の責任のもとで住宅の引き渡しを確保するとした。

不動産開発業者が経営難から建築工事を停止したため、引き渡されない物件の購入者が住宅ローン返済を拒否する動きが現れて社会問題化している。そうした中で、初めて住宅引き渡しに言及した点が注目される。実際、一部の地方政府では、金融機関等に働きかけて問題解決を図る動きが出ていると報じられている。

これらは、リスクの解消の動きであるが、プラス方向の動きとして、同会議は、プラットフォーム経済の規範的で健全な持続的発展を推進するとした。プラットフォーム経済についての整理を終え、通常の監督管理の下に置く一方で、「青信号」投資例を出す。

2020年頃から、独占禁止・資本の無秩序な拡張防止の点から、アリババ等に代表されるプラットフォーム経済を取り締まる方向であったが、最近では、プラットフォーム経済の整理・業務改善と並行して、プラットフォーム経済の活力を利用する方向も出ていた。今後は、具体的にどの分野での発展ならば青信号なのかが注目される。


(注)開発性銀行は国家発展開発銀行。政策性銀行は中国農業発展銀行、中国輸出入銀行。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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