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最近の中国の金利自由化について

2022/10/12

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中国では、最近、市場メカニズムに基づく預金金利の決定に向けて前進が見られた。

金利自由化経緯

中国の金利自由化を振り返ると、1990年代に市場金利の自由化が進み、今世紀に入ると銀行の預貸金利の自由化が残された課題となった。自由化の方法として、人民銀行が決定する預貸基準金利を基に上下の変動幅を設け、その変動幅を拡大する方法が採られた。そして、2004年10月に、貸出金利の上限撤廃、預金金利の下限撤廃という中間的目標が達成された。

その後、貸出金利については2013年に変動の下限が撤廃され(個人住宅ローンは除く)、預金金利は2015年10 月に上限が撤廃された。(なお、預金金利に対しては窓口指導があった。また、2015年5月に、預金保険条例が施行されて預金保険制度が開始し、セーフティネットも構築された)。この時点で、預金・貸出基準金利は不要になったが、人民銀行は銀行の金利決定の参考として同基準金利を発表し続けた。

2019年8月に人民銀行は、貸出基準金利の公布を中止した。そして、銀行の貸出金利は、貸出基準金利ではなく、LPR(Loan Prime Rate、最優遇貸出金利)を参考に決められることになった。LPRは、主要商業銀行が市場の資金需給等に基づいて優良顧客向けに提示する貸出金利の平均である。LPRは人民銀行の公開市場操作におけるMLF(中期貸出ファシリティー)金利にプレミアムを上乗せする形を取る。つまり、MLF金利の変化が、LPRに影響を与えることになる。

預金金利と「市場金利決定自律メカニズム」

一方、預金金利は、預金基準金利を参考にして、「市場金利決定自律メカニズム」のメンバーが預金金利自律上限内で自主的に預金金利水準を決定することになった。市場金利決定自律メカニズムとは、金融機関が組織する市場金利決定の自律・協調メカニズムで、成立は2013年9月である。市場の競争秩序の維持と市場の規範的で健全な発展の促進のため、金融機関が決定する金融市場・貸出市場の市場金利に対して自律的な管理を行うことが設立の趣旨である。

最近の動向を見ると、2021年6月に預金基準金利の自律上限の確定方式を改善し、預金基準金利に一定の倍率をかけるのではなく、「基準金利+ベーシスポイント」とした。また、人民銀行は2022年4月、市場金利決定自律メカニズムに対して、預金金利市場化調整メカニズムを作るように指導した。具体的には、市場金利決定自律メカニズムのメンバー金融機関は10年物国債イールドに代表される債券市場金利、1年物LPRに代表される貸出市場金利を参考にして、合理的に預金金利の水準を調整する。この方法に従えば、LPR金利が低下すれば、預金金利も低下することになる。

そうした中で、2022年9月15日に一部の国有大手銀行が、3ヵ月物、6ヵ月物、1年物、2年物、5年物の定期預金金利をそれぞれ0.1ポイント引き下げた。ちなみに、1年物定期預金金利は、1.65%である。これは、8月15日のMLF金利の引き下げ(0.1ポイント)、それを受けた8月22日のLPRの引き下げ(1年物0.05ポイント、5年物0.15ポイント)をさらに受けたものである。

また、報道によれば、国有大手銀行に次いで、上海銀行、北京銀行等の都市商業銀行と一部の農村商業銀行も個人向け預金金利の引き下げに動いている。

政策金利であるMLF金利の変化が、LPRに影響し、さらに預金金利にも影響を与えるようになってきた。金融政策のトランスミッションが預貸金利についてもできてきたことで、中国の金利自由化はさらに完成に近づいたと言える。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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