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13都県まん延防止措置延長で経済損失は合計2.7兆円規模に

2022/02/08

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まん延防止措置が延長されれば経済損失は2兆6,820億円に

新規感染者数が過去最高水準を更新し続ける中、政府は2月13日に期限を迎える13都県を対象とする「まん延防止等重点措置」の期間を延長する方針だ。2月10日にも正式決定することが見込まれる。現時点では、3月6日まで3週間の期限延長が有力視されている。また政府は、高知県について新たに重点措置を適用する方向で調整している。1月7日に3県(沖縄、山口、広島)で始められた同措置は、これで2か月に及ぶことになる。年初から発令されているまん延防止措置は、昨年までの同措置とは異なり、昨年発令された緊急事態宣言に匹敵する影響力を持つものと考えられる。

現行のまん延防止措置のもとでは、合計で1兆7,420億円規模の経済損失が生じると試算される(図表1)。他方、13都県で同措置が3週間延長され、また、高知県が新たに加わる場合には、9,410億円の経済損失が追加で生じ、また、3.7万人の失業者が追加で生じる計算となる。

図表1 現行のまん延防止措置の経済損失試算

両者を合計すると、経済損失は2兆6,820億円に達する計算となる。これは、1年間の名目GDPの0.49%に相当し、また、失業者を10.6万人増加させる(図表2)。

図表2 まん延防止措置延長分の経済損失試算

2021年10-12月期の消費回復は短命に終わる

2月15日には、内閣府が2021年10-12月期のGDP・一次速報値を公表する。1月時点でのESPフォーキャスト調査(日本経済研究センター)によれば、実質GDPについての予測機関の平均値は前期比年率+6.5%と、2020年7-9月期以来の高い成長となることが予想されている。その最大の牽引役となるのは、個人消費である。昨年9月末の緊急事態宣言の解除をきっかけに、年末にかけて個人消費は他国に遅れてようやく持ち直した。昨年1年間は、感染拡大と緊急事態宣言の長期化によって、日本の実質GDPは均してみるとほぼ横ばいで成長しなかったが、年末近くになってようやく回復への糸口を掴んだのである。

しかし、今年年初からの感染再拡大とまん延防止措置によって、個人消費の回復はいったん頓挫した可能性が高い。それらがなければ、2021年10-12月期に続いて2022年1-3月期も高めの成長となったはずだが、実際には低成長に終わる可能性が高まっている。

まん延防止措置の再延長で1-3月期はマイナス成長の可能性

上記の計算のように、まん延防止措置の延長によって経済損失が2兆6,820億円に達する場合、それは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率で7.7%ポイント押し下げる計算となる。

延長されたまん延防止措置が3月上旬で終了する場合、それ以降、あるいは感染の縮小と措置の終了を見越してそれより多少前から、個人消費が持ち直し、年初からの落ち込みを一部挽回することが見込まれる。その結果、実際の1-3月期の実質GDP成長率の押し下げ効果は、前期比年率で7.7%ポイントよりも小さくなるだろう。

この点を考慮して、現時点では、1-3月期の実質GDPは前期比年率で1%台の成長率を見込んでおきたい。しかし、感染拡大が長期化し、まん延防止措置が再延長される場合には、1-3月期の実質GDPがマイナスに陥る可能性が高まるだろう。

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