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FOMCで0.75%の利上げはあるか

2022/06/14

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0.75%の利上げとの予測が増える

先週金曜日に発表された5月の米国消費者物価指数が、前年同月比+8.6%と予想外に上振れたことで、6月14・15日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.75%と大幅な利上げ(政策金利引き上げ)が行われるとの見方がにわかに浮上してきた。5月の消費者物価指数は、物価上昇率が3月にピークを付けたとの見方を覆すことになったため、先行きの金融引き締めがより加速するとの観測を強めたのである。それは米国長期金利の一段の上昇を通じて、13日の東京市場でドル円レートが135円19銭と24年ぶりの水準まで円安が進んだきっかけとなった。

米国の主要な証券会社の中にも、0.75%幅の利上げを予想するところが出てきている。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、6月、7月のFOMCで0.5%ずつの利上げが実施される可能性を示唆し、それを金融市場に織り込ませてきた。FRBは金融市場にサプライズを与え混乱させることを避けようと、慎重に市場の期待をコントロールしているのである。現状では、FRBが6月14・15日に開かれるFOMCで0.75%の利上げを行うとの意図を市場に伝えていないことから、利上げ幅は0.5%になると考えるのが自然のように思われる。

ただし問題は、FRBはFOMC直前に金融政策に関わる情報を対外的に発しない、いわゆる「ブラックアウト」期間に入っており、今週のFOMCに関して、金融市場の期待をコントロールすることはもはやできない。

FRBは株価下落や消費者心理の悪化にも配慮するか

一方、米国の主要な証券会社が0.75%幅の利上げ見通しを打ち出し、それが金融市場に織り込まれれば、FRBが0.75%の利上げを実施しても、金融市場が大きく混乱するリスクは限られることから、それはFRBが事前に市場に0.75%の利上げの意図を伝えて織り込ませたことと同じ効果を持つことになる。従って、FRBが実際に6月14・15日のFOMCで0.75%の利上げを行うかどうかは、その可能性を金融市場がどの程度織り込むかに左右されるだろう。

そこで、FF金先市場を見ると、6月物は現時点では0.75%の利上げを十分には織り込んでいないように見える。この点から、FRBが0.75%の利上げを実施する可能性は、現状では5割には達していない、と考えられるのではないか。

5月の消費者物価という経済統計一つだけでFRBが政策を決めると考えられれば、それは政策の信頼感を多少なりとも低下させる恐れがある。また、消費者物価指数は上振れたが、他方で、ミシガン大学が発表した消費者信頼感指数は6月初旬に過去最低水準まで織り込んだことや、米国株価が先週末に続いて13日にも大幅に下落するなど、大幅な利上げが経済、金融市場の環境を損ねる懸念もある。

FRBは7月以降の0.75%利上げの可能性を伝えるか

こうした点を踏まえると、現状では、FRBは今回のFOMCでは0.5%の利上げにとどめる可能性の方がやや大きいとみておきたい。しかし、15日のFOMC当日までに金融市場が0.75%の利上げを完全に織り込むことになれば、市場の期待に引きずられる形でFRBは0.75%の利上げを決める可能性が高まるだろう。市場の期待が自己実現的に、FRBを0.75%の利上げへと導くのである。

今回のFOMCでは0.5%の利上げが決まるにしても、投票権を持つFOMC参加者の中では0.75%の利上げを主張して、0.5%の利上げに反対する者が出てくる可能性があるだろう。それは、7月以降に0.75%幅の利上げが実施されるとの期待を金融市場に織り込ませることになるだろう。また、声明文や議長記者会見の中で、7月あるいはそれ以降のFOMCで0.75%の利上げが実施される可能性が金融市場に伝えられる可能性も考えられるところだ。

FF金先市場では来年1-3月期に政策金利が4%に達するとの予想が織り込まれている。他方、国債市場では3年債から10年債までが逆イールドとなり、市場が注目する2年債と10年債の利回りが再び逆転している。これらは、FRBの急速な利上げによって、歴史的な物価上昇は抑えられるとの期待を反映しているとともに、景気が悪化するとの懸念も織り込まれているのではないか。

こうした点から、政策金利の水準で見れば、現状は利上げ局面の序盤戦であるが、予想ベースで考えれば、つまり、金融市場がFRBのさらなる先行きの利上げ加速を予想し、それが米国長期金利の上昇と対ドルでの急速な円安を促す局面は、既に後半戦には入ってきたのではないか。

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