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感染・濃厚接触者数1,000万人超の試算も:働き手不足で経済活動への打撃は避けられず

2022/07/27

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感染・濃厚接触者総数は8月上旬に1,000万人超の試算も

新型コロナウイルスの感染急増を受け、働き手不足によって企業活動に支障が広がっている。例えば、小田急バスでは、26日現在運転手や整備士など16人が感染したほか23人が濃厚接触者となっており、合計で39人が業務できなくなっている。そこで今月中旬から順次運行本数を減らし、全体の2%にあたる188便を運休する対応を取る予定だ。

新規感染者数の急速な拡大は依然勢いを落としておらず、この先、相当水準にまで達する可能性がある。8月上旬頃にピークを迎えるとの見方が少なくないが、前回の感染第6波での一日当たり新規感染者数のピークは、前々回の第5波でのピークの4倍程度に達した。第7波の一日当たり新規感染者数は現時点で20万人程度と 第6波の既に2倍程度であるが、さらに2倍、つまり第6波のピークの4倍である、一日40万人程度も視野に入ってくる。

先行きの新規感染者数を予測するものではないが、この先、各日の新規感染者数が前週比で1.4倍のペース(過去1週間の実績は約1.6倍)で増え続けると仮定しよう。この場合、8月10日には一日当たり新規感染者数は41.8万人まで増加する。

さらに、新規感染者は10日間程度入院あるいは自宅待機を余儀なくされる(療養期間)と考えられるが、感染者数の増加分ではなく水準(ストック)を計算すると、8月10日時点で294.4万人となる。

他方、感染者だけでなく濃厚接触者も自宅待機を迫られ、業務からの離脱を強いられる。(新規)濃厚接触者数は新規感染者数の5倍程度とされる。また、濃厚接触者の自宅待機期間は、従来から短縮され現在では原則5日間である。これらの数値から計算すると、濃厚接触者数の水準(ストック)は、8月10日時点で794.7万人となる。感染者数の水準と濃厚接触者数の水準を合計すると、8月10日時点で1,089.1万人と1,000万人を超える計算となる(図表)。実に十数人に一人程度が対象となってしまうのである。

図表 感染者数、濃厚接触者数(水準)の推計

働き手不足による7-9月期の経済損失は名目GDP7.9兆円と試算

これほど多くの人が入院や自宅待機を迫られるようになれば、多くの企業で働き手不足から業務に大きな支障が生じ、経済活動に打撃となる可能性が高い。ただし、就業者数は人口の54.9%であることから、半分近い感染者及び濃厚接触者は経済活動に直接打撃にはならない。さらに、感染者で症状が軽い人や自宅待機を迫られた濃厚接触者数の中には、リモートワークに切り替えることができる人も少なくないだろう。そこで、感染者の5分の1、濃厚接触者の3分の2は療養・待機期間中にリモートワークを行うことで業務に支障が生じないと仮定しよう。この場合、8月10日時点で失われる労働力(労働投入量)は、4.1%となる計算だ。

今後期間ごとに新規感染者の増加率に前提を置いて試算すると、1日当たり新規感染者数の月中平均は、7月に11.5万人、8月に19.5万人、9月に1.5万人となった。さらにそれぞれについて、上記の計算に基づいて失われる労働力(労働投入量)を求めると、7月1.2%、8月2.8%、9月0.3%となる。7-9月期の平均では1.5%である。

働き手不足による7-9月期の経済損失は名目GDPで7.9兆円にも上る計算だ。これは第6波の蔓延防止等重点措置のもとで失われた個人消費の規模の試算値4兆円程度の2倍近くにも達する。感染拡大による働き手不足は、物価高や海外景気の鈍化の影響に加えて、7-9月期の国内経済に強い逆風となる可能性が高まっている。

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