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FRBの金融引き締めは次のステージへ

2022/07/28

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金融引き締め姿勢に変化

7月26・27日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め姿勢が変化し、次のステージに入ったことを示した、と考えられる。

今回のFOMCでは、2会合連続で0.75%の異例の大幅な利上げ(政策金利引き上げ)が決定された。FOMCは声明文で、経済指標に弱さが見られ始めていることを認める一方、雇用は強く、歴史的な物価高騰が続いていることから、「追加利上げを実施することが適切になることが予想される」と従来の文言を踏襲し、利上げ局面がなお続くことを示した。

ただし記者会見でパウエル議長は、「利上げペースを減速させることが適切となる可能性が高い」、「今後の利上げ幅については、入手する経済指標次第だ」、との認識を示している。

今年3月から4回連続での急速な利上げは、物価高対策が遅れてしまったとの認識から、FRBがいわば「目をつぶって」急速な利上げを行ってきた結果、と言える。ところが今後については、利上げは続けるものの、経済指標に目を配りながら利上げペースを調整していくことになる。明らかに政策姿勢は変わったと言える。

FRBの金融引き締めは5つのステージ

今回のFRBの利上げをステージ別に整理すると、物価対応の後れを取り戻すため目をつぶって大幅な利上げを進めるステージⅠ、金融政策の正常化は相応に進んだとの認識から、景気と物価の双方をにらみ、経済指標に応じた形で利上げペースを調整するステージⅡ、景気悪化のリスクにも配慮して利上げペースを明確に低下させるステージⅢ、追加利上げを見合わせるステージⅣ、利下げに転じるステージⅤ、となるだろう。

今回のFOMCは、FRBの政策姿勢がステージⅠからステージⅡに移行したことを意味するものとなったと考えられる。その背景にあるのは、FF金利(政策金利)が今回2.25%~2.5%に達したことだ。この水準は2018年の前回の利上げのピークの水準であり、また、FOMC参加者が経済に対して中立的と考える水準だ。この水準まで正常化策が進んだことで、FRBは政策姿勢を変化させたのである。

年内に早くも利上げ局面一巡の可能性

ただし、今後の経済、物価指標次第では、0.75%といった大幅な利上げの可能性がまだ残っている状況だ。それゆえに、短期的には金融政策を巡る不確実性はなお大きい。

早ければ9月の次回FOMCで、FRBの政策姿勢はステージⅢに移行し、年内にステージⅢ、来年前半にステージⅣと、急速に移行していく可能性が考えられる。現状では、金融市場は年末までに3%台前半から半ば程度までの利上げを織り込んでいる。政策金利がこの水準に達すれば、FRBが注目する短期金利と18か月国債利回りとが逆転する逆イールドが生じ、FRBは金融緩和を視野に入れ始めるだろう。

日本銀行の政策修正の可能性が低下か

政策金利が3%台前半から半ばの水準でピークとなり、来年には利下げが実施されるとの認識が崩れないのであれば、2年債~10年債の利回りが、再び3%を大きく超える可能性は低下し、6月にピークを付けた可能性が高まるだろう。その場合、米国長期国債利回りに連動したドル円レートも、円安進行の余地が先行き限られることになり、1ドル140円程度がピークとなるのではないか。

さらに米国長期国債利回りの上昇に連動した日本の長期国債利回りの上昇と円安進行が一巡すれば、日本銀行が長期国債利回りの上昇を一定程度容認する形でイールドカーブ・コントロールの修正を行う可能性も低下する。年内に、日本銀行がそうした修正を行う確率は3割程度にまで下がったとみておきたい。日本銀行が政策修正を行わずに乗り切ることができる、「逃げ切り」の可能性が高まってきたのである。ただし、硬直した金融政策を見直すそうした政策修正は、金融市場と経済の安定の観点からは望ましいものだ。

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